ダルビッシュ投手のNPBとMLBでの成績を比較する

NPB7年間(2005-2011)とMLB7年間(2012-2019)との比較

 NPB7年間(2005-2011)とMLB7年間(2012-2019)で登板数がほぼ同じ(167と170)になっているため,両者を比較してみます.
引用元:ウィキペディア

所属登板先発完投完封無四球勝利敗戦セーブホールド勝率
NPB
7年
16716455189933801.710
MLB
7年
170170211635300.543
所属打者投球回被安打被本塁打与四球敬遠与死球奪三振暴投ボーク失点自責点防御率WHIP
NPB7年4,9821,268.1916583332501,2503633102811.990.98
MLB7年4,3551,051.08501323846441,2996044434173.571.17

 一番の違いは,登板数がほぼ同じ(167と170)であるにもかかわらず,完投(55→2)と完封(18→1)の数が大幅に減少していることです.MLB3年目の2014年に完投2,完封1を記録したのが,そのまま通算の記録になっています.因みにMLBの2019年の最多の完投数は3,完封数は2です.分業制のため少なくなるのは仕方ないのですが,実力のある投手が最後まで投げられることを考えると,一流投手として活躍しているとはいえません.

 また,対戦打者が少なくなっているにもかかわらず,被本塁打(58→132)と奪三振(1,250→1,299)は増えています.体格によるパワーの違いはありますが,MLBの打者は打撃動作自体が飛距離を生み出す動作になっている側面があります.奪三振が多いのは,当てに来ずに振り切るバッターが多いことを示しています.日本人投手が総じて一流といえるまでの成績を残せていないのは,MLBの投手と比較して投球動作自体がパフォーマンスを発揮できるものになっていないことが原因であると考えられます.


大谷選手の屈曲回内筋群損傷の原因

古島弘三医師による見解

 前腕の回内に作用する筋は,円回内筋,方形回内筋,橈側手根屈筋があり,円回内筋と方形回内筋は前腕の回内に作用し,円回内筋と橈側手根屈筋は肘関節をまたぐため,肘関節の屈曲にも補助的に作用します.
引用元:https://www.styleb.co.jp/seminar/note/forearm-pronator-muscle/

引用元:https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2020/08/05/gazo/20200804s00001007460000p.html

 「筋肉はグッと力を入れると縮んで膨らみます。上腕二頭筋の力こぶが分かりやすい例ですね。筋肉は力を入れたときに引っ張られる動作が加わると損傷したりします。投球動作の中でフォロースルーでは自然と腕は回内していきます。この時に屈曲回内筋群も補助として働きます。しかし、スライダーなどのボールを投げる時には、ボールに回転を加えるため、フォロースルーで自然に前腕が回内すべきところに逆の回外動作が入ります。この時、屈曲回内筋群に強い負担がかかる。今回はその繰り返しで負担が強くかかったのだと思います」と述べられています.

引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/c87ebbd97fe49d60bc576e07c6ca3aeafd2a6685

 約700例のトミー・ジョン手術を執刀した慶友整形外科の古島弘三医師によると, スライダーを投げるときは前腕を回外(外側に捻る)しなければならないので,フォロースルー後の前腕の回内(内側に捻る)に負荷がかかるという説明になっています.確かにカーブを投げる場合でも,フォロースルー後に前腕と手が回内することは事実ですが,大谷選手の投球動作にも一因があると考えられます.大谷選手はフォロースルー後にグラブ側の脇の下まで前腕が入ります.この動作を行えば前腕と手は回内されるため,球種にかかわらず常にフォロースルー後の回内が強制的に行われることになります.


2018年もスライダーを多投している

引用元:https://baseballsavant.mlb.com/statcast_search

 2018年の球種の内訳はスライダーが24.6%と多めとなっていましたが,今回のような屈曲回内筋群損傷は起こっていません.球速も80mphを少し上回る程度で過度の負荷がかかるとは考えにくいところもあります.損傷の原因がよくわからないというのが正直な感想です.

引用元:https://baseballsavant.mlb.com/statcast_search


野球選手にボディビルダーの筋力は必要か-その2

ステロイドとは無縁のクリーンな選手

 ケン・グリフィー・ジュニア選手はステロイドとは無縁のクリーンな選手だったことで有名です.ウエイトトレーニングもしないということを何かで読んだか聞いた記憶があります.インターネットで検索したところ,「他の選手のように筋力トレーニングに励まずにもパワーを見せ付けた選手だった」という記載がありました。

 現地15日に行われた第85回オールスター戦のMVPは、1回に先制三塁打を右翼越えに、5回には勝ち越しの左翼線二塁打を放ったエンゼルスのマイク・トラウト外野手。走攻守すべて超一流のスーパースターに育ちつつある22歳342日の若者だ。しかし、MVPの最年少記録にはわずかに及ばなかった。1992年にマリナーズのケン・グリフィー外野手が22歳235日で受賞している。彼の父親グリフィー・シニアも1980年に受賞しており史上初の親子二代受賞。トラウト同様に3度目の出場となったこの年のジュニアは、サンディエゴで開催されたビッグゲームに「7番・中堅」で先発出場。1回に右前タイムリー、3回にグレッグ・マダックスから左翼席にたたき込み、6回には右翼線二塁打の3打数3安打2打点で文句無しの受賞だった。
 グリフィーはその後も、メジャーのスーパースターとして輝き続け、MVP1度、4度の本塁打王に1度の打点王を獲得。歴代6位の通算630本塁打を放った。彼のすばらしさは長打力だけでなく10年連続ゴールドグラブ賞。また、盗塁も通算184個と当時はバリー・ボンズ外野手と並んでメジャーを代表するオールラウンドプレーヤー。また、1990年代に蔓延したとされる薬物にまったく縁がなかったクリーンな選手としても知られている。グリフィーはハイスクール時代から注目され1987年のドラフト全米1位でマリナーズに指名され、マイナーを129試合(打率3割2分、27本塁打、49打盗塁)で卒業して19歳でメジャーに昇格した。彼への印象は少年時代からの生まれついての天才という言葉似合う選手。他の選手のように筋力トレーニングに励まずにもパワーを見せ付けた選手だった。

引用元:https://weblog.hochi.co.jp/hiruma/2014/07/post-9702.html
引用元:YouTube
引用元:YouTube

体格ではなく動作がパフォーマンスを決める

 グリフィー選手は野球選手のなかではスリムな体格といえます.スリムな体でなぜこれ程の飛距離を出せるのかという問われれば,グリフィー選手がスイングスピードを速くできるような動作を行っているからというのが答えになります.まず動作があり,その後に結果が出るので,ボディビルダーのような選手でもスリムな選手でも,体格に関係なく,その選手の打撃動作によって飛距離という結果が出ていることになります.動作が直接的な原因であり,ウエイトトレーニングの側面は重要視されません.もっとも, 野球選手にボディビルダーの筋力は必要か で述べたように,特異性の原則に基づけば,パワーゾーンのウエイトトレーニングを行っても直接的な効果は得られません.

 選手の体格によって運動エネルギーの利用の仕方が異なるため,動作に違いが出てきますが,MLB の一流選手に共通する動作として認められるのが, 「人」の形 (右バッターの場合は,「入」の形)で打つ動作です.他にも 空手打法 で打っているか,インパクト後ボールに力を伝えているかといった調整力の巧拙が問われます. 


大谷選手の打者としての可能性

99mhpの球速に差し込まれてもホームラン

 今季第2号ホームランの打撃動作をみると,大谷選手の非凡さを改めて確認することができます.

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=VQ3W8vEcu48

 この打席での大谷選手は99mhpの球速に差し込まれており,インパクト後,両腕は伸びきっておらず,お世辞にもいい打ち方になっているとはいえません.しかし,ステップ脚の膝を伸ばして上体をそらす動作を利用して体幹を素早く回旋し,スイングスピードを加速しています.いわゆる 「人」の形で打っている ということです.これは投球動作でいうと,肩関節最大外旋位からステップ脚の膝を伸ばすときに,体幹が回旋しやすくなり腕の振りを加速できる動作とよく似ています.

 投球動作に改善すべき点がみられますが,今後修正されることは難しいと考えられるため,現状では打者に専念するほうがMLBで活躍できる可能性があります.このような日本人でこのような打ち方ができるのは非凡さの証明であり,これだけの素質をもった選手はなかなか出てこないと思われます.

「人」の形で打つ大谷選手  引用元:https://www.youtube.com/watch?v=VQ3W8vEcu48