大谷選手が6号ホームランを打った試合

ソロホームランを含むヒット2本を打った3打席の内容

 7試合ぶりの先発出場で およそ1か月ぶりとなる今シーズン6号のソロホームランを含むヒット2本を打った大谷選手ですが,復調の兆しがみられるのか確認してみます.

引用元:ベースボール・サバント

 3打席の内容は,ホームラン右方向(4シーム),センター前ヒット(シンカー),一塁ゴロ(カッター)となっています.ランス・リン投手は,大谷選手が苦手にしているスロー系,変化系のボールは投げず,得意としているストレート系のボールで攻めていますから,大谷選手にとっては打率を上げられる格好の相手になっています.

第1打席ホームラン(右方向)のインパクト 引用元:ベースボール・サバント
第2打席センター前ヒットのインパクト 引用元:ベースボール・サバント
第3打席一塁ゴロのインパクト 引用元:ベースボール・サバント

肩とバットが回らず,手打ちになる

 三打席ともいえることは,バットのタメができていないということです.成績を残す打者は肩を回してバットを後ろに残すので,ボールを強打できるのですが,大谷選手はまず,肩が回っていません.正しい打ち方ではインパクトのときに両肩を結ぶ線とバットはボールを打つ方向に対して直角になります.肩がまだ直角になるまで回っていない段階でバットが後ろに残っていれば,スイングのタメができていることを確認することができます.

 三打席とも打球はセンターから右方向に飛んでいるので,本来ならボールを打つ方向に対して直角になるまで肩が回っていなければなりませんが,全く肩が回っていません.そしてバットと体が一緒に回る ドアスイング になっています.いわゆるアウトサイド・インのスイングです.これではバットのタメができていないので強打できるはずがなく,1,2打席は腰が引けて手打ちのスイングになっています.手打ちでもホームランにできるパワーをもっているのは大谷選手の強みですが,スイング自体はとても褒められたものではありません.

大谷選手の打撃動作にみられる重大な欠点 で述べたように,グリップの位置が体から離れすぎているために,このようなアウトサイド・インのスイングが起こります.真ん中あたりのボールは,まだインサイド・アウトのスイングに近づけることができるかもしれませんが,内角,外角のボールはインサイド・アウトに打つことが難しくなるため,まずよい結果は望めません.グリップの位置を修正しない限り,MLBで活躍することは難しいでしょう.


アデル選手と大谷選手を比較する

ジョー・アデル選手の打撃動作を確認する

 2017年のMLBドラフト1巡目(全体10位) のジョー・アデル選手と大谷選手の打撃動作を比較してみます. ウィキペディア によると,体格はアデル選手 が190.5 cm,94.3 kg ,大谷選手が 193 cm,95.3 kgとほぼ変わりません.

グリップを体に密着して構えるアデル選手.
バックスイングで後ろ肘を背面後方に突き出し,グリップをさらに体に密着させるアデル選手.

 アデル選手は,構えでグリップを体に密着させ,バックスイングでケン・グリフィー・ジュニア選手のように後ろ肘を背面後方に突き出して,グリップが前に出ないようにしています.高さも打ち出しの位置にあり,肘を先行させてバットを後ろにタメてスイングすることが可能です.

フライング・エルボー から,いったんグリップの位置を下げ,胸の前を空けるアデル選手.この後,グリップを上げた反動を利用して,肘を先行させてスイングする.
空手打法 を行うアデル選手.
インパクト後,両腕が伸び, 「入」の になっているアデル選手.

5つの指標を用いた打撃動作の比較

 アデル選手と大谷選手を比較する際の指標として,以下の①から⑤を用います.①グリップの位置が体に密着しているか,②グリップの高さが打ち出しの位置になっているか,③ フライング・エルボー からグリップを上げた反動を利用して,肘を先行させてスイングしているか,④ 空手打法 を行っているか,⑤インパクト後,両手が伸び, 「入」の形 (左打者は「人」の形)になっているか.

 大谷選手が④と⑤しかクリアしていないのに対して,アデル選手は①から⑤のすべてをクリアしています.さすがにドラフト1巡目に指名される選手だけあって,素材が 違うようです. MiLB.com によると,今季のMLBの成績は,9/13現在で打率 0.165,ホームラン3本 となっています.成績は大谷選手よりも下回っていますが,打撃動作は大谷選手をはるかに上回っています.今後,MLBを代表する打者に成長するのではないでしょうか.総合力,将来性ではアデル選手がはるかに上ですが、大谷選手のほうが出場機会を与えられています.

 一点気になるのは,足を上げてタイミングをとっていることです.速球に対応するには,すり足のほうがよく,足を上げると重心が上下動するため,目線がブレてボールを捉えにくくなることが考えられます.

画像の引用元:YouTube


ダルビッシュ投手の好調の原因を探る-その2

好成績の要因は対左バッターとの成

ダルビッシュ有、好成績の要因は対左バッターとの成績
シカゴ・カブスのダルビッシュ有は、今季メジャー前半戦で最も大きなインパクトを残した選手の1人であると断定しても、恐らくそんなに多くの反対意見は出ないだろう。

昨季後半に見せた圧倒的なパフォーマンスを今季前半もそっくりそのまま再現させた右腕は、目下6連勝とマウンドに上がるごとに、支配的な投球でチームを勝利に導いている。

そんな中、地元紙『シカゴ・トレビューン』は現地31日付で電子版に掲載した、レッズとのシリーズを振り返る記事の中で、同シリーズの重要な論点の1つとして、ダルビッシュの左打者に対する成績をピックアップした。

記事では「ユウ・ダルビッシュは左打者のパワーを封じている」と見出しをつけ、その中で「今季ダルビッシュは左打者に対し、96打席で打率.208と、そのダメージを限定しており、左打者に許した長打は4本のみであり、長打率も.281に抑えている」。

その上で、「昨季、左打者が彼を相手に打率.243、長打率.465としたことを考えると、これはドラマチックな改善である」とした。

さらに記事では、「昨季ダルビッシュが左打者に許した25本の長打のうち、19本が本塁打だった」と前置きした上で、「今季、彼が左打者に許した本塁打は、8月13日にミルウォーキー・ブルワーズのジャスティン・スモークが打った1本のみである」と、左打者に対する被本塁打も劇的に減少したことについて触れた。

引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/63fb135acffa9fb42ed8b5fc6ae1b4667e72b8a1

対左打者 球種別被打率-2019年と2020年との比較

 記事によると, 左打者のパワーを封じていることが今季の好調の原因であるとしています.2019年と2020年で左打者に対する球種と被打率がどのように変化しているのかみてみます.2020年のデータは9/5までのものです.

球種2019 
割合% 
対左打者
2019
被打率
対左打者
2020
割合%
対左打者
2020
被打率
対左打者
カッター42.00.24846.00.245
4シーム19.20.3508.40.308
スライダー13.30.29616.10.154
2シーム10.00.250——- ——-
カーブ7.00.1364.70.000
SFF4.90.1055.20.111
ナックルカーブ2.70.0959.50.182
チェンジアップ0.70.000——- 0.000
スローボール0.10.000——- 0.000
シンカー——-0.00010.10.000
全投球の被打率
対左打者
——- 0.243——- 0.193

 2019年と2020年を比較すると,対右打者の被打率は,0.181から0.211に上がり,対左打者の被打率は,0.243から0.193に下がっています. 被打率を下げている球種は,①4シーム(0.350 → 0.308),② スライダー (0.296 → 0.154)に特定されます.カッターの被打率(0.248 → 0.245)は,ほぼ変わっていません.①については,今季は4シームの平均球速が上がっており,球威が増していることが考えられます.②については,スライダーにキレがでていると考えるよりも,4シームの球威が増したため,スライダーが活きていると考えるのが適当です.ストレートあっての変化球ということになります.

ダルビッシュ投手 2020年の対左打者の球種の内訳 
引用元:https://baseballsavant.mlb.com/statcast_search

フライング・エルボーからバックスイングするボーア選手

 ウィキペディアによると,ボーア選手は「MLB通算92本塁打で3度のシーズン20本塁打を記録、マイナーでも5年連続シーズン2桁本塁打を記録している」とのことです.

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=uWlArFykST0

 MLBで3度のシーズン20本塁打を記録 しているパワーの一因となっているのは,フライング・エルボーからのバックスイングです.このバックスイングでは,後ろ肘を上げた反動を利用して,肘を先行させてバットのタメをつくります. 後ろ肘を上げる前にいったんグリップを下げ,そのグリップを下げた反動を利用します.この最初にグリップを下げる動作のときにバットが立ち気味になり,胸の前が空きます.

 構えからスイングに入るまでの動作は,フライング・エルボーからのバックスイング とスイングの 二段階の動作に分けられます.①グリップをいったん下げ,下げた反動を利用して後ろ肘(グリップ)を上げる.② ①で後ろ肘 (グリップ) を上げた反動を利用して,肘を先行させてスイングする.

フライング・エルボー からのバックスイングとフォワードスイングを行うバリー・ボンズ選手.二段階の動作になっていることを確認 できます.

ダルビッシュ投手の好調の原因を探る

 ハーラートップタイの6勝目を挙げたダルビッシュ投手の好調の原因について,考えてみます。

ダルビッシュ ハーラートップタイ6勝目!「投げている球がシャープ、真っ直ぐがいい感じ
 カブスのダルビッシュ有投手(34)が29日(日本時間30日)、敵地・シンシナティでのレッズとのダブルヘッダー1試合目(7回制)に今季7度目の先発登板。走者を出しながらも要所を締めて6回104球を投げ7安打無失点で、ハーラートップタイの6勝目を挙げた。初登板での黒星後、6戦6勝とし、防御率は1・47となった。チームは3―0で勝ち、連敗を3で止めた。

 試合後、ダルビッシュは、走者を背負いながらも無失点に抑えたことに「何も変えていない。スカウティングレポートを頭に覚えていて、次の打者はどうすれば良いのか、何を次に投げるか、それについて考えている」と言い、「今年は自分の投げている球がシャープ、真っ直ぐがいい感じできている」と話した。

引用元:https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2020/08/30/kiji/20200830s
00001007219000c.html
引用元:https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2020/08/30/kiji/20200830s
00001007219000c.html

 以下の表は,2019年と2020年の球種の割合と被打率を比較したものです.2020年の数字は ダルビッシュ有投手が6勝目を挙げた8/30までのデータになります.2019年の成績は,6勝8敗,防御率3.98.2020年8/30までの成績は,6勝1敗,防御率1.47です.
引用元:https://baseballsavant.mlb.com/statcast_search

球種2019
割合%
2019
被打率
2020
割合%
2020 
被打率
4シーム 26.80.27218.80.227
2シーム 11.70.255——-——-
カッター36.50.19849.40.240
スライダー13.80.2329.00.087
カーブ4.80.2004.20.000
ナックルカーブ2.10.0836.70.267
シンカー ——- ——- 9.30.267
SFF 3.80.1112.50.286
チェンジアップ0.4 0.000 ——- ——-
スローボール0.10.000 ——- ——-

 まず,ダルビッシュ投手はカッターとスライダーの投手であることがわかります.全投球の半分以上 (2019年は50.3%,2020年は58.4%) を占めています.2019年と比較して,①4シーム の被打率が下がっている.②2シームを投げていない.③スライダーの被打率がかなり下がっている.④シンカー,ナックルカーブの割合が高い.ということが挙げられます.①については,平均球速が94.1 mphから95.9 mphにアップしていることが関係していると思われます.②は2シームを投げる代わりに2019年に被打率の低かったカッターを投げて,被打率を下げようとする意図が感じられます.③でスライダーの被打率が激減している理由,④でシンカーの割合が増えている理由についてはわかりません.

 おそらく,ダルビッシュ投手は,2019年の被打率からもわかるように,カッターとスライダーは打たれないという自信をもっています.被打率の低いカッター中心の投球スタイルにシフトするために,2シームを投げず,4シームとスライダーの球数を減らして,カッターの球数を増やしていると考えられます.今までのところは,球数を減らしたスライダーのほうがカッターよりも被打率が低いという皮肉な結果になっていますが,カッターとスライダーで一つの系として考えれば,被打率を下げることに成功しているといえます.4シームの球威が増したことで4シームの被打率が下がり,同時にカッターとスライダーが活きるように なったことが,今季の好調の原因と考えられます.

  球種の判断はベースボール・サバントのデータに基づきます.カッターとスライダーの違いについては,下の動画を確認ください.曲がりが小さいのがカッター, 曲がりが大きいのがスライダーという見方もできるかもしれません.

球種:カッター 引用元:ベースボール・サバント
球種:スライダー 引用元:ベースボール・サバント