韓国,台湾に大敗したU-18日本代表-パワー不足の原因は「日本の野球界の体質」

高校生の時点でパワーの差が歴然

 U18野球ワールドカップ2022の日本チームの戦績は次のとおりです.アメリカが優勝,台湾が準優勝,日本は2大会ぶりの銅メダルを獲得しています.

U18野球ワールドカップ2022 日本の日程と結果
月日(日本時間)対戦カード安打本塁打
9月10日 (土)日本○6-0イタリア100
9月11日 (日)日本○4-1メキシコ51
9月12日 (月)日本○5-4パナマ70
9月13日 (火)日本○10-0オーストラリア70
9月14日 (水)日本●2-9チャイニーズタイペイ50
9月16日 (金)日本●0-8韓国40
9月17日 (土)日本○1-0オランダ10
9月18日 (日)日本●3-4アメリカ50
9月19日 (月)日本○6-2韓国110
引用元:https://www.nikkansports.com/baseball/samurai/u18worldcup2022/schedule/
Highlights: 🇯🇵 Japan vs Korea 🇰🇷 – WBSC U-18 Baseball World Cup – Super Round
Highlights: Chinese Taipei vs Japan – WBSC U-18 Baseball World Cup – Opening Round

 日本チームで目立つのは,パワーのなさです.甲子園でパワーを誇った打者が名を連ねていますが,ホームランは浅野翔吾選手がメキシコ戦で放った1本のみです.

 長打があまりなく,ボールが飛ばない印象を受けます.アメリカは7本,韓国は4本ホームランを打っているので,高校生の時点ですでにパワーで負けています

 なぜ,パワーが不足するかというと,パワーを生む打撃動作になっていないからです.

 ホームランが少ないことについては,金属バットの弊害を指摘する人も多いかと思いますが,アメリカは大学まで金属バットを使っています.反発係数が低いといっても金属であることに変わりはありません.

 高校に限らず,バットに慣れたNPBの強打者でもMLBでパワーを発揮できていないので,木製バットに慣れてないから打てないというのは,理由になりません.  

日本の選手は大リーガーと同じレベルか

日本の野球は結構うまい

 「科学する野球」から村上豊氏が日本の野球界の体質について述べている部分があるので,その箇所を引用します.

 日本の野球は結構うまいのだとプレーヤーもファンも思っているのではなかろうか.ことに,シーズンオフに来日してくるアメリカのチームに勝ったりすると,もうアメリカ野球に学ぶところがなくなったと思いあがったりもするようである.しかし,大リーガー同士の本場の生の野球を観戦すると,とてもとても彼らの野球には及びもつかないことを痛感させられるのである.

 昭和61年(一九八六年)5月12日号の週刊ベースボール誌上に掲載されている,長嶋茂雄氏と古葉竹識氏との対談を読むと,メジャーリーグのシーズン中の野球を初めて観戦した古葉氏は,日本の野球のなまっちょろさを認識され,日本はまだまだやるべきことがたくさんあると述べておられるのである.また,長嶋氏は,ボクらが入団した頃から「アメリカ野球に追いつけ」といわれてきて,もう30年近くにもなるのに,いまだに追いつけないが,このままずっと追いつけないのではないかと思っていると,まったく悲観的なことを述べておられるのである.

 事実,助っ人として来日している外人選手と比べて,日本のプロ野球選手の中で,太刀打ちできる選手はどれほどいるだろうかと考えてみただけで,彼我の間に大きな隔たりがあることがわかるのである.この隔たりを日本の野球界は,ただ単に体格の大きささの違いに基づくパワーの差と受けとめ,日本の野球選手も彼らのような体格になれば,彼らに追いつくことは簡単なことであると,安易に考えており,技量の差に基づいているとは思わないようである.これは,日本の野球が,幾多の選手たちにより,長年にわたり培われてきたその中で,生まれ育った野球の基本や技術を絶対に正しいものと信じている日本の野球界は,日本の野球の基準からしか判断しないから,アメリカ野球の技術を異端視し,彼らの合理的な動作を追求しようとはせず,それはアメリカ人にはできても,日本人には不向きだとソッポを向き,彼我の間の差が技量の差に起因していることは考えもされなくなってしまっているからである.

科学する野球・実技篇,pp.1-2

 村上豊氏のいっていることをまとめると,次のようになります.

  • 日本の野球は結構うまいという自負があり,シーズンオフに来日してくるアメリカのチームに勝ったりすると,もうアメリカ野球に学ぶところがなくなったと思いあがったりする
  • メジャーリーガーとの実力差を,単に体格の大きささの違いに基づくパワーの差と受けとめ,技量の差とは思っていない
  • 日本野球の基本や技術を絶対に正しいものと信じているため,アメリカ野球の技術を異端視し,彼らの合理的な動作を追求しようとはしない

 おそらく,体格が違うから日本人にはメジャーリーガーの動作は合わないという理由で,彼らの技術をとり入れることをしてこなかったことが,今回のU18野球ワールドカップ2022での日本チームのパワーのない打撃を生みだす結果になっています

日本の選手は自分たちの実力をはっきり認識していない

 それは,1986年(昭和61年),米国フロリダ州のデルレービーチにスプリングキャンプを張った日本ハム・ファイターズが,そのキャンプ地から約15㎞離れたフォートローダーデールにキャンプを張っていたニューヨーク・ヤンキースを訪れ,そのコーチたちから指導を受けたときのことなのです.

 そのときの模様を伝えてくれたのは報知新聞なのですが,同紙の記事によると,打撃指導を行ったのは,昭和55~57年の3年間,読売巨人軍に在籍したことのあるロイ・ホワイト打撃コーチで,その指導は,まずスタンスのとり方,バットの握り方,自分に合ったバットとは,など “初歩的” なことに始まり,続いて自らバットを持って,

「構えたとき重心は後ろに置くが,インパクトでは重心を思い切り前に移せ」
といって,実演してみせたというのです.そこですかさず,日本ハムの島田誠選手から,「日本では最後まで重心を後ろに残して打てと教えられていたが,それでも打てるか」
との質問があり,この質問をめぐって,両者の間に数次のやりとりがあったけれども,ラチがあかぬと業を煮やしたのか,ヤンキースの指導者に就任したばかりのルー・ピネラ監督が両者の間に割って入り,「この10年ぐらいで,後ろから前へ重心を移動させる打ち方に変わった.テニスのバックハンドと同様にウエートを使う打ち方だ」と述べ,さらにホワイトコーチがその後を継いで,

「確かに高めは打ちにくいかもしれないが,低めは打ちやすい.いい打者は低めに強いものだ.この打ち方で,メジャーで活躍している選手は大勢いる」と説明し,日本ハムの選手たちを納得させたというのです.

 この一連のやりとりから感じたことは,「シーザースよ!お前もか」といいたくなる心情と似たものを覚えるのです.つまり,アメリカの大リーガーも論理的に野球の動作を把握していない,日本の選手と変わりはない,「大リーガーよ!お前もか」といいたいのです.

日本の選手は大リーガーと同じレベルか
 それはそれとして,ここでもう一度,島田誠選手の質問の内容を読んでみてください.気になる言葉があるのですが,気付かれたでしょうか.それは,「日本では」といわれていることです.

 なぜ,これが気になるかを説明する前に,これに似たような話がありますので,それをお目にかけておきましょう.

 それは,江藤慎一氏著の『野球は根性やない』という本に記述されているのですが,あるとき,同氏が経営されている日本野球体育学校で,江夏豊氏が講義した後で,学生たちと質疑応答に入ったとき,いちばん先の質問が,

「ボクは試合になると上がるんです.上がって,自分の実力をちゃんと出せないんです.江夏さんは上がることはありませんでしたか」ということだったのです.この質問に対し,江夏氏は素直に「そりゃ,ワシだって上がったよ」と素直に答えられているのだが,苦労人の江藤氏はこの質問をどう受け止められたかというと,

「学生は自分の実力をはっきりつかまえていない.江夏も自分も同レベルだと思っているからおもしろい」と述べられています

 この一文から,賢明なる読者は,島田誠選手の質問がなぜ気になると述べたのかわかっていただけたことと思うのですが,この質問を,「日本の選手は自分たちの実力をはっきり認識していない.大リーガーも自分たちも同レベルと思っているから,ちゃんちゃらおかしい」と,彼らは受け止めたに違いないと思われるからなのです.

 だから,島田選手と両氏のやりとりから感じとられるのですが,両氏の説明の言外には,「日本では」と切り口上を述べているが,アメリカの野球と同レベルとでも思っているのか,ヘリクツなんかいわないで,メジャーの大勢の選手がこの打ち方で活躍しているのだから,屁理屈抜きに我々の打ち方を見習えばよいのだ,得にもならない技術理論の論争はごめんこうむりたい,といわんばかりの気持ちであることがわかるのです.

 従って,このやりとりには,彼らの打撃技術に対する理論的説明がなされていません.せっかく,アメリカまで行き,彼らの教え受けながら,これでは打撃技術について何も掴むことができません.だから,日本に帰ってきても,あいかわらず,重心を後ろに残して打っているのです.

 ホワイトコーチが,インパクトでは重心を思い切り前に移せといわれたとき,「日本では」と切り出さないで,それにはどうすればそのようにできるのか,その動作,そのコツを教えてもらえないだろうかといえば,彼も得意になって打撃技術を説明してくれたことと思われます.そして,彼の説明に対しては,ひと言も途中で言葉をさしはさまないで,最後まで黙って聞き終えたところで,ときに,あなたは重心の移動,重心の移動といわれているが,それは体重の移動でなければならないと手短かに話してあげて,いや,どうもいろいろお教えありがとうといっておけば,日本の野球もバカにはできないと,彼も感じ入ることだろうと思うのです.

引用元:科学する野球・実技篇

 引用文の島田誠選手の発言からもわかるように,日本の選手は自分たちの野球は結構うまいという自負があるので,MLBで活躍している選手の打法であっても,素直に受け入れることはしないようです.

今後,MLBで一流の活躍をする選手は出てくるのか

 江藤慎一氏(2084試合,2057安打,367本塁打,1189打点,打率.287)の学生の質問に対する受け止め方に倣へば,島田誠選手の「日本では」という質問は,「日本の選手は自分の実力をはっきりつかまえていない.大リーガーも自分も同レベルだと思っているからおもしろい」 と受け止められることになります.

 村上氏が述べている「シーザースよ!お前もか」いいたくなる心情というのは,ホワイトコーチとピネラ監督が重心と体重の区別がついていなかった(日本の選手と同様に大リーガーも論理的に野球の動作を把握していない)ことに対するものです.

 NPBから数多くの選手がMLBに挑戦していますが,「科学する野球」が提唱している「できるだけ速いボールを投げる」,「できるだけ遠くにボールを飛ばす」という動作を実現し,かつ一流の成績を残している選手は出てきていないのが現状です.

 つまり,総じて日本人選手はMLBで通用していないといえるのですが,日本の野球界は,島田誠選手の「日本では」という発言からもわかるように,「 大リーガーも自分も同レベルだ 」と自負しているところがあるようです.

 村上氏の本音は,「アメリカの野球と同レベルとでも思っているのか,ヘリクツなんかいわないで,メジャーの大勢の選手がこの打ち方で活躍しているのだから,屁理屈抜きに『科学する野球』で提唱している打ち方を実践すればよいのだ」であったと思われますが,日本の野球界に「日本では」というような自負がある限り,MLBで一流の活躍をする選手が出てくることは難しいと考えられます. 

“助っ人”外国人選手のアドバイス

引用元:科学する野球・実技篇

日本の選手の構えは,みんな,こんな感じだ.これじゃ,パワフルなバッティングはできっこない.

 さて,図7は,パットナム選手が日本の野球について語った記事の中に掲載された写真をイラスト化したものですが,パットナム選手はこのような格好をして見せて,

「日本の選手の構えは,みんな,こんな感じだ.これじゃ,パワフルなバッティングはできっこない.パワーの素質はあるのに,それをむざむざ殺しているのさ」と述べています.

 この彼の発言には,さすがに元大リーガーだけあって,鋭い観察力で日本の選手の動作をよく見ているなと感心させられるとともに,日本の野球界によいアドバイスをしてくれたものだとありがたく思いましたが,日本の野球界で,どれほどの人がこれをグッド・アドバイスとして受け取ってくれただろうかと思うのです.

 というのは,彼の発言の中で,「これじゃ,パワフルなバッティングはできっこない」と述べていますが,それはなぜかということが述べられていませんので,これだけでは納得できないのではないかと思われるからです.

 とくに,自然体で構えるのがよいのだと信じ込んでいる方は,何をいっているのだ,こちらが教えてやりたいぐらいだ,と思われるでしょうから,そのような考えを持っておられる人には,決してアドバイスとして受け取られるはずがないと思われるからです.

 つまり,日本の野球選手には,理論的な説明がないと受け入れられにくいのですが,もともと,自分で決めた規準内の野球以外は認めようとしない偏狭さがあって,なかなか他人様のいうことを聞きいれようとはしないようです.

 とくに,アメリカ野球の技術に対しては,あれはアメリカ人には向いているけれども,彼らとは体の大きさが違うのだから,日本の選手には不向きで,マネてはいけないといって,同じ人間がすることなのに,本当に不向きであるかどうかも検討しないで,勝手に不向きだと決めつけてしまい,彼らの動作に合理性があることに気付かないで,彼らとの差は技量差ではなく,体格の差に過ぎないと安易に割り切り,けっこう,自分たちの野球だって彼らに劣らないハイレベルだと自惚れているから,彼らのせっかくのよいアドバイスも無視してしまうことになるようです.

 事実,パットナム選手がこのようにせっかくよいアドバイスをしてくれても,チームメートでさえも,彼の言に従い,構え方を改めたという日本選手を見かけない有様です.

 ここはひとつ,彼らとても,決して理論的に追求しているとはいえないけれども,あの打球のスピードと,あの飛距離を見せつけられては,そこに何か理にかなったものがあるのではないかと,一歩下がって,彼らのいうことに耳を傾けるべきではないでしょうか.

引用元:科学する野球・実技篇

 引用文の中で,パットナム選手は図7のような構えではパワフルなバッティングはできないといっています.

 では,どのようにかまえ構えればよいのかというと,パットナム選手は,「後ろ腕の肘を横に張り出して,フライング・エルボー で構えなければ,強い打球は打てない」といいたいわけです.

 しかし,元メジャーリーガーのアドバイスであっても,

  • 日本の野球選手は理論的な説明がないと受け入れない
  • もともと,自分で決めた規準内の野球以外は認めようとしない
  • アメリカ人には向いているけれども,彼らとは体の大きさが違うのだから,日本の選手には不向きで,マネてはいけない
  • 彼らとの差は技量差ではなく,体格の差に過ぎない
  • けっこう,自分たちの野球だって彼らに劣らないハイレベルだと自惚れている

 という理由により,パットナム選手のアドバイスは無視されることになります.

 柳田悠岐選手のように,バリー・ボンズ選手の打法を真似してやってみようと考える選手はなかなか出てきません.

典型的な日本人打法ではパワーは生まれない

鈴木誠也選手のバッティング

 日本の野球界は「自分たちの野球はメジャーリーガーに劣らないハイレベルだという自惚れ」があるため,日本の野球の基準でしかものを考えません.

 結果として,鈴木誠也選手に代表される典型的な日本人打法がNPBの主流となっているのですが,今回の鈴木選手のメジャー挑戦によって,「典型的な日本人打法がMLBでどこまで通用するか」という問いに答えが出ます.

鈴木誠也 憧れの大投手 デグロムと初対戦!世界最強投手に圧倒され3打席連続三振

 デグロム投手と初対戦した鈴木誠也選手ですが,デグロム投手にまったく歯が立たず,三打席連続三振に終わっています.

 鈴木誠也選手のスイングでは,仮にデグロム投手のストレートにタイミングが合ったとしても,おそらくボールは飛ばないと思われます.

 なぜなら,グリップを体から離して構え,体の中心軸を意識して打つ典型的な日本式打法では十分なバットのタメがつくれず,スイングスピードを速くすることができないからです.

典型的な日本人選手の構え

  • グリップを体から離す
  • バックスイングでグリップを捕手側に引く
  • 体の中心に軸を意識する

これではパワー発揮できるわけがないのですが,U-18日本代表の選手も同じような構えをしています.

日本の野球界ではこの鈴木誠也選手の構えが正しいとされています.

画像の引用元:ベースボール・サバント

 鈴木誠也選手のように,グリップを体から離して捕手側に引くと次のようなデメリットが出てきます.

  • 脇が空いてバットを後ろにタメることができない
  • バットのタメがないので,スイングスピードを加速できない
  • バットを体に巻きつけることができないので,慣性モーメントが大きくなる
  • 脇が締まっていないと,インパクト後,ボールを強く押し込むことができない.

 詳しくは,グリップの重要性-グリップの位置でバットのタメとスイングスピードが決まる をご覧ください.

体の中心に仮想軸を描くのは,典型的日本人打者の特徴

  • 体重移動による運動エネルギーを利用できない
  • 運動エネルギーの不足を前足を高く上げてステップすることで補おうとする
  • 「人」の形で打てない

図の引用元:科学する野球・投手篇,p.44

 「科学する野球」では,この体の中心に仮想軸を描いて回転で打つ打ち方は完全否定されています.なぜなら,体重移動による 運動エネルギー(一次エネルギー) と下肢から生み出す 運動エネルギー(二次エネエルギー)を利用できないからです.

 体の中心に軸を意識すると「人」の形で打つことができないので,パワーのある打撃はできません. 

鈴木誠也 本塁打内訳 2022.9.19現在
球種球速
mph
打球
方向
飛距離
feet
1スライダー81.2412
24シーム90.8397
34シーム92.6398
44シーム93.0382
5シンカー95.5左中間399
6シンカー91.8355
7*ストレート80.1427
8チェンジアップ87.2436
9スライダー75.3387
104シーム96.0401
114シーム92.6375
12スライダー88.0376
13シンカー91.5435
*球種は不明
※2021年MLBの本塁打の平均飛距離は401feet
※150kphは約93.2mph
※引用元:ベースボール・サバント

 上表から鈴木誠也選手が本塁打できている球種がわかります.

  • 速球系の4シーム,シンカー(90.8~96mph)
  • スロー系のチェンジアップ(87.2mph)
  • 変化系のスライダー(81.2mph,88mph)
○マイル以上の球速で,何本本塁打を打っているか 鈴木,大谷,ジャッジ選手を比較
2022.9.19現在
鈴木誠也大谷翔平アーロン・
ジャッジ
~89mph52027
90mph~81432
91mph~71328
92mph~51324
93mph~3822
94mph~2615
95mph~2410
96mph~125
97mph~13
98mph~2
99mph~
100mph~
引用元:ベースボール・サバント

 鈴木,大谷,ジャッジ選手を比較すると,次のことがわかります.

  • 鈴木選手の89mphまでの球速を打った本塁打(5本)が,大谷(20本),ジャッジ選手(27本)に比べかなり少ない
  • 鈴木選手の90mph以上の球速を打った本塁打(8本)が,大谷(14本),ジャッジ選手(32本)に比べかなり少ない
  • 本塁打できた最高球速は,鈴木選手(96mph),大谷選手(97mph),ジャッジ選手(98mph)となっている.

 鈴木選手は89mphまでの球速を打った本塁打が5本,90mph以上の球速を打った本塁打が8本と,大谷,ジャッジ選手に比べてかなり少ないのですが,これもパワー不足によるところが大きいと考えられます.

 球速の速い球威のあるボールは,当然,パワーがないとインパクトでボールを押し込むことはできませんが,球速の遅いボールも結局パワーがないとホームランにはできません.

 なぜなら,球速の遅いスロー系,変化系のボールは,中心衝突 の対象外となり,中心衝突のようにボールの反発を利用して打つことができないからです.

 速球系のボールを中心衝突で打つとボールに力が伝わるので,手応えがなくボールが飛んでいきます.もちろん,パワーあっての話ですが.

 逆に速球系のボールを偏心衝突で打つとボールに力が伝わらない分,悪い意味で手応えがあります.打ち返すにはさらにパワーが必要になります.

 速球系のボールを得意にしている大谷選手ですが,ジャッジ選手ほど球速のあるボールを打てていません.大谷選手が98mph以上の本塁打を打ったのは,2020年(98.5mph),2021(98.1mph)の2回のみです.

 大谷選手の変則的なゴルフ打法で98mphの球速に対応するには限界があります.今後加齢とともに身体能力が落ちてくるので,さらに速いボールへの対応が難しくなってくると考えられます.

日本の野球界の体質

 引き続き「科学する野球」から,村上豊氏が日本の野球界の体質について述べている部分を引用します.

 このことは,日本の野球界に一石を投じた『科学する野球』に対しても,同じような態度がとられるのではないかと懸念されるのだが,日本の野球界は,どうしてこうも閉鎖的な考えを持ち続けるのだろうか,まったく不思議だと思うのである.『科学する野球』の実践篇では,打撃におけるヘッピリ腰の構えと,低重心投法を日本の野球界から追放しなければならないと強調したのであるが,懸念していた通りの反応が現れたのである.

 それは,某ノンプロ・チームのあるコーチから,ベースボール・マガジン社あてに寄こされたのであるが,その内容は,低重心投法が正しいのに,それを否定するような本は悪書であり, ベースボール・マガジン社ともあろう出版社が,このような悪書を出版し,日本の野球界に毒を流すとは怪しからんというお叱りであったのである.このコーチのように,日本式野球に凝り固まっている方は,既成概念からしか判断できないとみえて,低重心投法と捻り投法とはどちらが合理的であるかを考えようともされないで,従来の日本式野球に反するものは,すべて頭から間違っている野球と決め込んでしまうようである.そのような偏狭な心で,『科学する野球』を読んでいただいたのでは,そこに何が説かれているかを理解されることはできないと思うのである.従って,このコーチは,捻り投法の合理性が理解されない限り,ご自分の暴言には気付かれることはないであろうと思われるのである.

 このコーチの話はほんの一例だが,日本の野球界,特にその指導者にはこういった抵抗がまだまだ見受けられるのであるが,ここはひとつ我執を早く捨てて,野球で必要とする力を求めるには,どういう動作が合理的であるかという観点に立って,野球技術を見直してほしいと思うのである.元来,日本の野球界は理屈好きなのに,意外に単純なのである.たとえば,千本ノックである.指導者はこの猛練習が野球上達の常道と思い,これに耐える精神力を重視するが,その捕球法が合理的であるかどうかはまったく無頓着で,”ただ腰を落とせ,体の真ン中で止めろ”と怒鳴るだけなのである.この捕り方が基本だと思いこんでいるから,この練習の非合理性に気付かないのである.このような日本の野球界の指導者層がその非を悟り,合理的な野球に取り組んでくれるようになるには,なかなかのことだとおもわれるのであるが,せめて『科学する野球』の読者だけでも,合理的な野球でプレーしてもらえるならば,いずれは日本の野球も進歩してくれるであろうことを念じながら,『科学する野球』の執筆に励んでいるのである.

科学する野球・実技篇,pp.2-3

 村上豊氏の主張は次のとおりです.

  • 日本の野球界は,閉鎖的な考えを持ち続けている
  • 日本の野球界の指導者層は,従来の日本式野球に反するものは,すべて頭から間違っている野球と決め込んでしまう
  • 日本の野球界,特にその指導者は,野球で必要とする力を求めるには,どういう動作が合理的であるかという観点に立って,野球技術を見直してほしい
  • せめて『科学する野球』の読者だけでも,合理的な野球でプレーしてもらえるならば,いずれは日本の野球も進歩してくれるであろう

 村上豊氏が日本の野球界に一石を投じたにもかかわらず,U-18侍ジャパンの中で「科学する野球」の合理的動作を実践している選手は1人もいません.

 なぜ,日本の野球界は合理的な動作をとり入れないのか,本当に不思議ですが,悲しいかなこれが現実です.せめてこのブログの読者の方々だけでも,合理的な野球でプレーしてもらえるならば,いずれは日本の野球も進歩してくれるであろうと思います.

パワーがなくても技術は世界に通用

 馬淵監督、山田陽翔投手のコメントを引用します.

日本は今大会、オープニング(予選)ラウンドで台湾に、スーパー(決勝)ラウンドで、韓国と米国に敗れ、4位で3位決定戦に進出した。18日(日本時間19日)の3位決定戦では、韓国に6-2で勝利し、2017年以来、2大会ぶりのメダルを獲得した。

 今大会では、松尾汐恩捕手(大阪桐蔭)の打席に入る前の礼儀がWBSCの公式ツイッターに取り上げるなど、日本選手の行動も光った。馬淵監督は「20人の選手が日本の高校球児の代表として粘り強く戦ってくれたおかげで、なんとか銅メダルを獲得することができた。日本野球のマナーと技術は世界に通用していたと思う」と10日間の戦いを終えた選手たちをねぎらった。

 主将を務めた山田陽翔投手(近江)も「自分たちは力不足であると感じた大会だったが、逆に世界でも通用したのは日本の基礎力の高い野球」と振り返り「来年、後輩たちにはそういったところを武器にして、頑張ってほしい」と叶わなかった世界一を後輩に託した。

 馬淵監督、山田のコメント全文は以下の通り。

〇馬淵史郎監督
「20人の選手が日本の高校球児の代表として粘り強く戦ってくれたおかげで、なんとか銅メダルを獲得することができた。日本野球のマナーと技術は世界に通用していたと思う。だが、目標はあくまでも金メダル。7イニング制での戦い方や投手の起用法など、今大会の課題をしっかりと洗い出し、次の大会に向けて前進していきたい。選手たちは日の丸を背負った経験を今後の野球人生につなげていってほしい」

〇山田陽翔主将
「なんとかメダルを取れたのはよかったが、優勝できなかった悔しさはある。海外の選手は体も大きく、パワーもある。自分たちは力不足であると感じた大会だったが、逆に世界でも通用したのは日本の基礎力の高い野球。来年、後輩たちにはそういったところを武器にして、頑張ってほしい。(収穫は)調子が悪い時にどう対応するべきかがわかった。今大会も悪い時はあったが、すぐに本調子まで戻せなくても自分なりに打者を抑えられるレベルには戻せた。短い期間だったが結束力のあるチームだった。今後も切磋琢磨していきたい」

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

引用元:https://full-count.jp/2022/09/20/post1283875/

 引用文からわかることは,馬淵監督も山田選手も日本の野球は結構うまいと思っていることです.

世界に通用したこととして,次のことを挙げています.

  • 日本野球のマナーと技術(馬淵監督)
  • 日本の基礎力の高い野球(山田陽翔投手)

 MLBとのパワーの差については,「パワーでは負けるが,技術は日本のほうが上」という常套句が使われてきましたが,何十年経っても日本の野球界の認識は変わっていません.

 パワーがなくても銅メダルが獲れるのだから,外国人選手のパワーのある打法を真似る必要はなく,体格で劣る日本人選手は技術を武器にしたスモールベースボールに徹するべきという考え方がまかり通っています.

 このように,日本の野球界は,従来の日本式野球に反するものは一切受け入れないので,いつまで経ってもパワー不足は改善されません.

勝ち負けではなく,合理的な動作を行っている選手がいるかが重要

 U-18ワールドカップで日本は銅メダルを獲得しました.銅メダルを獲得したことで,個々の選手が合理的な動作をしているのか,なぜ本塁打を1本しか打てなかったのかということは問題視されなくなります.

 日本の野球は結構うまいという自負から,今後も従来の日本式野球を続けていくことになります.そして,次の大会でパワーのなさを露呈しますが,打ち方が変わることはないので,同じことが繰り返されていきます.

 プロ野球でも典型的日本人打法の強打者が,第二,第三の鈴木誠也選手としてMLBに挑戦することになります.高校と打ち方は変わらないので,パワーを発揮することはできません.

 優勝したアメリカの選手が合理的な動作でプレーしていたとしても,彼らとは体格が違うから日本人には合わないという理由で,合理的動作をとり入れることはしません.

大会を振り返り「後半勝負なんか言ってたら野球にならない」

 高校日本代表「侍ジャパン」は18日(日本時間19日)、米フロリダ州サラソタで行われた「第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」の3位決定戦で韓国を6-2で破り、銅メダルを獲得した。試合後、馬淵史郎監督は「最低、これで日本に帰れますので。メダルがなかったら、もう帰れんと思ってやっていた」と語り、安堵の表情を見せた。

 日本は初回に1死一、三塁の好機で4番・内海優太内野手(広陵)が中前適時打を放ち先制に成功。2回は3番・松尾汐恩捕手(大阪桐蔭)の2点適時打などで一挙5点を奪いリードを広げた。

 スーパーラウンド初戦で0-8の大敗を喫していた宿敵・韓国にリベンジし、2大会ぶりのメダルを獲得。試合後、馬淵監督は「ケガ人とかも出て、思うような選手起用ができないところもあったが。最低限、3位ということは子どもたちもよく頑張ったと思う」とナインを称えた。

 米国の地で挑んだ大会を振り返り「7イニング制の戦い方。絶対に3回までが勝負とだいたい分かってきたんですがね。後半勝負なんか言ってたら野球にならないというか。そういったことも今後、考えていかないといけない。何とか銅メダルは取れた。今後、日本代表が来た時に参考になったんじゃないかな、という戦いだった。でも最低、これで日本に帰れますので。メダルがなかったら、もう帰れんと思ってやっていたので」と語っていた。

(Full-Count編集部)

引用元:https://full-count.jp/2022/09/19/post1283034/?utm_source=yahoonews&utm_medium=rss&utm_campaign=1283032_1

 U-18侍ジャパンの馬淵監督のコメントから,日本の野球が勝利至上主義であることがわかります.

 日本の野球は高校に限らず,勝利至上主義のスモールベースボールです.投球,打撃動作が合理的であるかは重要視されず,戦術を練り,機動力を駆使してとにかく勝てばいいという野球です.

 オランダ戦では1安打で勝っていますが,勝てば打てないことなど問題視されません.なので,打撃動作の合理性について考えることはしません.

 試合に勝ってある程度の成績は残せたけれど,個々の選手をみるとパワーのない選手ばかりで,将来MLBで活躍できるような選手がいない.これだと,いつまで経ってもMLBで通用する選手が出てきません.

 大味な野球でメダルは取れないが,個々の選手をみると合理的な動作を身につけたパワーのある選手が何人かいる.将来を見据えれば,こちらのほうが日本野球にとって何倍もよいわけです.

 スモールベースボールで勝つよりも,個々の選手のパフォーマンスを向上するほうが重要です.高校で試合の勝ち負けにこだわるよりも,将来MLBで活躍できる選手を育成することのほうが優先されるべきです.

侍U-18代表・馬淵史郎監督【写真:川村虎大】
引用元:https://full-count.jp/2022/09/19/post1283034/?utm_source=yahoonews&utm_medium=rss&utm_campaign=1283032_1

36年経っても変わらないパワーに欠けるバッティング

 「科学する野球」に今から36年前に行われた日米野球のことが書かれているので,引用します.

日米野球はやらないほうがよかった

パワーだけの差に過ぎないのか
 昭和61年(一九八六年)11月1日から9日にかけて,デーブ・ジョンソン・ニューヨーク・メッツ監督ひきいる米大リーグ選抜チームと,日本のセ・パ混成オールスター軍による日米野球が7戦行われ,その結果は米チームの六勝一敗という成績で終わったが,彼らから痛烈なパンチを浴びて,日本の野球界は自分たちの野球がいかにレベルの低い野球であるかを十分に思い知らされたはずだと思います.

 この日本の野球のみじめさについて,日米野球の最終戦が行われた翌日,東京中日スポーツ新聞紙上で,プロテニス・プレーヤーの佐藤直子さんが,”井の中の野球”と題して,いみじくも述べておられるので,その記事をお眼にかけておきましょう.

 「日米野球はやらないほうがよかった.私は日本におけるプロ野球の成功は,日本国内だけでやっているところにあると思う.日本人にとって,外人とやって負けるのを見るのは,あまり愉快なことではない.だから,そういうぶざまなところをみせるくらいなら,日本人同士でやっていたほうが,国内ではずっと盛り上がること請け合いだ.

 テニスがよい例だ.いったんファンがベッカーやレンドルを見慣れてしまうと,レベルの低い日本人選手のプレーを見ると,まるで迫力を感じない.日本人のプレーに魅力を感じなくなってしまう.ましてやレンドルやナブラチロワに日本人のトップ選手がコロコロ負けるところをみてしまえば,日本人テニスプロをバカにするほど,ファンの目はきびしい.(中略)」

 いままで日本第一のメジャースポーツとしてアグラをかいていたプロ野球だ.日本シリーズに優勝すればこの世に自分たちより強いものはいないぐらいの勢いだったが,これからたかがレベルの低い日本選手の一人じゃないか,ということになってしまうかもしれない.

 テニスプロの悲哀をグチにして書いてしまった」

科学する野球・実技篇,pp.210-211

 当時よりもプロ野球選手の体格は向上していますが,野球の動作自体は変わっていないので,個々の選手のパフォーマンスが大幅に改善されているとはいえません.

 選手の能力が上がっているのなら,もっとMLBで成績を残せる選手が出てくるはずです.日本の野球界は,鈴木誠也選手のような典型的日本人打法が正しいという基準を変えていないので,MLBで通用する打者はなかなか出てこないと思われます.

 続いて日米野球の引用の後半部分です.

 これを読まれて,どなたも共感を覚えられるのではないでしょうか.

 実際のところ,彼らのプレーの残像が目から消えやらぬうちに行われた,同年11月15日のセントラルリーグ選抜の東西対抗戦は,迫力がなく,まったく魅力を感じなかったのは,私ばかりではなかったことと思いますが,どうして日本の野球はかくもお粗末なのでしょうか.

 このアメリカ野球との違いはどこに原因があるのか,日米野球の差はパワーの差に過ぎないとしか眼に映らない日本の野球界の指導者たちではその原因を解明するのは無理だと思います.

 昭和61年11月24日発行の週刊ベースボール誌上に,デーブ・ジョンソン監督と王監督との対談記事が掲載されていますが,その中で王さんが,
「大リーグのバッターも,だいぶスイングが変わってきたようだね.体も前に突っ込まなくなって,引きつけて打つようになったもの.でも,テクニックということに関しては,日本のほうがね……」と述べているのですが,あの王さんでさえも,アメリカ野球をこんな見方しかできないのだから,いつまで経ってもアメリカ野球に追いつくことができないのです.

 また,この日米野球に出場した日本チームの四番打者・落合博満選手が,完全にバットの芯でとらえても差し込まれることが多かったと述べていたが,写真123の落合選手のフィニッシュを見ると,明治の大砲のように打った後あとずさりしているから,ボールの力に押し戻されていることがよくわかるが,落合選手の打ち方をお手本のように思っている日本の野球界の指導者たちは,大リーガーが体重を前足に移し,腰のラテラル・モーションで求めたラテラル・モーメンタムをバットにとりこんで打っているのに,後ろ足に体重を残して打っていると見え,相変わらず,体重を軸足(後ろ足)に残して腰の回転で打っていると解説しているのだから,このような方たちからの指導を受ける限り,日本のバッティングは向上するはずがありません.

科学する野球・実技篇,pp.211-212

 私もMLBを観るようになって,日本野球に魅力がなくなり,まったく観ないようになりました.日本式の投球,打撃動作は迫力がなく,スモールベースボールは面白みに欠けます.

 「科学する野球」には,ゴルフ用語が多く使われています.引用文の「明治の大砲」の意味がわからない方もいるかと思います.

明治の大砲とは
明治の大砲とは、ゴルフにおける悪いスイングを比喩した言葉です。明治時代に使用されていた大砲に由来しています。その当時使われていた大砲には車輪がついており、砲弾を発射した時に、反動で後ろに下がってしまうことがありました。スイング時、右足へ重心が乗ったままとなり、打ち終えたあと後方によろけてしまうさまを言い表しています。

引用元:https://golf-jalan.net/contents/beginner/glossary/2111/#:~:text=%E6%98%8E%E6%B2%BB%E3%81%AE%E5%A4%A7%E7%A0%B2%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

 落合選手が明治の大砲のように打った後あとずさりしているのは,体の中心に軸を意識して打っているからです.

 「人」の形(右打者は「入」の形)で打てば,上体が後ろに倒れて前脚が残るので,落合選手のように打った後,前足がすぐに地面から離れることはありません

 日本の野球界の基準では,鈴木誠也選手のように,体の中心に軸を意識して打つことが正しいとされているので,「人」の形で打つことができません

 グリップを体から離して,体の中心を軸にする打ち方が正しい打ち方とされる限り,現状は変わりません.

投手はSFFを投げれば,ある程度MLBで通用する

 投手はフォークボール,スプリットを使えば、ある程度MLBで通用することがわかっています.SFF(スプリットフィンガー・ファストボール)は,ストレートと同じ腕の振りであるため,あらかじめヤマを張っておかない限り打てない球種です.

日本人投手がMLBで通用するための条件

  • SFFを投げる
  • 球速が速い
  • 短いイニングの登板

 という3つの条件を満たせば,日本人投手でもMLBで通用します.SFFは全投球のわずか1.6%しか投げられておらず,打者も打つことに慣れていません

MLBでのフォークボールの投球割合

  • 野茂英雄 フォークボールを多投
  • 佐々木主浩 フォークボールを多投
  • 黒田博樹 SFF:16.1%
  • ダルビッシュ有 SFF:4.0%
  • 田中将大 SFF:27.4%
  • 前田健太 SFF:13.7%
  • 大谷翔平 SFF:16.6%
  • 岩隈久志 SFF:20.8%
  • 松坂大輔 SFF:6.2%
  • 菊池雄星 SFF:0%
  • 岡島秀樹 SFF:23.0%
  • 上原浩治 SFF:41.2%
  • 平野佳寿 SFF:49.0%
  • 澤村拓一 SFF:38.5%

※引用元:ベースボール・サバント 投球割合:シーズンを2008~2022年(2007年以前は検索できない)に設定してデータを検索.(2022.9.23現在)

 SFFは打てない球種なので,SFFを投げるだけで,その投手は打者よりも優位に立てます.もし,MLBでSFFが投球禁止になったら,日本人投手が最も影響を受けることになります.

 因みに,MLBを代表するジャスティン・バーランダーやマックス・シャーザーのSFFの投球割合は0%です. 

 菊池雄星投手はSFFの投球割合が0%で,MLBの一流投手投手と同じ土俵で戦っていることが評価できます.

菊池雄星投手の投球割合

引用元:ベースボール・サバント 菊池投手はMLBでSFF(スプリットフィンガー・ファストボール)を1球も投げていない

ジャスティン・バーランダー投手の投球割合

引用元:ベースボール・サバント ジャスティン・バーランダーの投球割合 2008-2022.9.23 SFFは1球も投げていない

マックス・シャーザー投手の投球割合

引用元:ベースボール・サバント マックス・シャーザーのSFFの投球割合 2008-2022.9.23 SFFは1球も投げていない

 菊池投手は,バーランダー,シャーザー投手に比べて4シームの投球割合が小さくなっています

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