2021年12月18日 投稿
ブリーチャーレポートとワシントンポストの記事
ブリーチャーレポート
ブリーチャーレポート(スポーツとスポーツ文化に焦点を当てたウェブサイト)の記事からケン・グリフィー・ジュニア選手のウエイトトレーニングについて書かれた箇所を引用します.
Ken Griffey Jr. Was the Best of His Generation
引用元:https://bleacherreport.com/articles/400876-ken-griffey-jr-was-the-best-of-his-generation
Sometimes God just makes other people a little more special, and Ken Griffey Jr. was one of those people. I don’t think he ever had to work hard at the game. He didn’t lift weights. As far as I know, he didn’t watch tape of pitchers. He just went out, hit, and fielded.
”He didn’t lift weights.”は,「彼はウエイトトレーニングをしなかった」と訳すことができます.また,”he didn’t watch tape of pitchers.”とあるので,相手投手のビデオテープも見ずに対戦していたようです.
グリフィー選手は,ウエイトトレーニングもせず,ビデオを見ることもなく,簡単に成績を残すことができた神様が少しばかり特別なものを与えた選手だったといえます.
ワシントンポスト
次に,ワシントンポストの記事からケン・グリフィー・ジュニア選手のウエイトトレーニングについて書かれた箇所を引用します.
With a 99.3 percent consensus, Griffey earns a deserved trip to Cooperstown
“I don’t lift weights. Never have,” Griffey said back in 1998, a year after he had hit 56 home runs and was named MVP. “I probably can’t bench press 200 pounds. The barrel of my bat is probably bigger than my biceps. Flexibility is the key. It’s the rubber band effect. Pull them suckers way back.”Then the 6-foot-3, 195-pound Griffey would play golf with Tiger Woods in his prime and against Michael Jordan and, sometimes, outdrive both of them.
引用元:https://www.washingtonpost.com/sports/nationals/with-a-993-percent-consensus-griffey-earns-a-deserved-trip-to-cooperstown/2016/01/06/18baeb72-b4b0-11e5-9388-466021d971de_story.html
“I don’t lift weights. Never have,”は「私はウエイトトレーニングをしなかった.今までも一度もしたことがない」と訳すことができます.
この引用はブリーチャーレポートの引用とは違い,56本塁打を記録し,MVPを受賞した1997年の翌年のグリフィー選手自身のことばを引用したものです.
他にも「おそらくベンチプレスで200ポンド(約90.7㎏)を上げることができない」,「上腕二頭筋よりもバットの直径のほうが大きい」という記載があります.
しかし,6フィート3インチ(約190.5㎝),195ポンド(約88.5㎏)のグリフィー選手は,全盛期のタイガー・ウッズ,マイケル・ジョーダンとラウンドしたときには,ときどき彼らをオーバードライブしていたとのことです.
ラバーバンド効果(Rubber Band Effect)
グリフィー選手の引用の中で,ベンチプレスが上げられず,腕が細いにもかかわらず,なぜ打てるのかということについて,グリフィー選手は引用の中で,「柔軟性(弾力性)が重要で,rubber band effect(ラバーバンド効果)がカギになる.ラバーバンド(ゴムバンド)をずっと後ろに引かなければならない」と発言しています.
野球選手にボディビルダーの筋力は必要か-特異性の原則 で述べたように,打撃動作の中で,ベンチプレスのようにじわーっと力を発揮する位相はないので,ウエイトトレーニングは必要ないともいえますが,筋力トレーニングを一切おこなわなかったグリフィー選手は,そのことを証明してくれています.
動画のような過度の負荷をかけてじわーっと力を発揮する動作は,野球の打撃動作の中に含まれていない
デッドリフト225㎏を上げる大谷翔平
筋力トレーニングをしなければ飛距離が伸びないと思っている選手は,ウエイトトレーニングをする前に一度,動作の改善ができないかどうかを確認することも必要かと思われます.
下にグリフィー選手の全盛期のホームランの動画を載せますので,ウエイトトレーニングなしでなぜここまで飛距離を出せるのかを考え,打撃動作改善に役立てていただければと思います.
引用元:Ken Griffey Jr. Home Run Compilation, 1996-2000
ラバーバンド効果(rubber band effect)とは?-ケン・グリフィー・ジュニア選手の「打撃のカギ」
2021年12月24日 投稿
共通する二つの動画
「ウエイトトレーニングを一切しなかったケン・グリフィー・ジュニア選手」で,ケン・グリフィー・ジュニア選手が、ウエイトトレーニングを一切おこなわない自身の打撃について,ラバーバンドイフェクト(rubber band effect)がカギと発言していることを紹介しました.
”rubber band effect baseball” でYouTube検索すると,いくつか動画を確認できます.
動画①
チャンネル:Johnny Reina Baseball,打撃の仕組み:発射位置に到達するためのハンドストレッチ/ラバーバンド効果
このチャンネルでは,前足とバットにゴムバンド(rubber band)をつないでボールを打つ様子と,ムーキー・ベッツ選手のバッティングが続けて流れます.
動画②
チャンネル:Baseball Doctor,STRETCH-分離ドリルを作成する
このチャンネルでも前足とバットにゴムバンド(rubber band)をつないでボールを打っています.二つの動画に共通するのは,ステップ開始から前足が着地するまでにゴムバンドが伸ばされている点です.
ラバーバンド効果とは
FanGraphs というウェブサイトにマイク・トラウト選手のスイングを分析している”Examining Mike Trout’s Perfect Swing” という記事があります.
FanGraphs とは(参考まで)
FanGraphs.comはFanGraphs社が運営する野球のウェブサイトである。専門家や野球シンクタンクと提携してメジャーリーグの統計データや分析記事を提供している。 2005年にファンタジーベースボール愛好家のDavid Appelmanが開設した。当初は彼の趣味であるファンタジーベースボールに有用な情報を提供するウェブサイトだったが、現在は主にメジャーリーグの分析にシフトしている。
引用元:ウィキペディア
概要
Baseball Reference等と並んで最も有名な野球データサイトの1つである。メジャーリーグの歴史上全ての選手のデータが掲載されている。セイバーメトリクスによる分析記事が多数掲載されており、この分野についても有名である。セイバーメトリクスで選手の貢献度を測る総合指標WARの算出を行っている。
マイク・トラウト選手の打撃動作の分析
FanGraphs でマイク・トラウト選手の打撃動作を解説している記事があり,その中で「ラバーバンド効果」について説明している箇所がありますので,引用します.rubber band(ラバーバンド)は,ゴムバンド,輪ゴムという意味になります.
Phase 3: Launch Position
引用元:https://community.fangraphs.com/examining-mike-trouts-perfect-swing/
The prior balanced movements have carried over into this phase. Trout continues to show a strong balance on his back leg even when his front leg comes forward. As that happens, his hands continue to stay back. These opposite movements create what is known as the rubber band effect, a phrase you’re probably familiar with. Trout is literally stretching his front leg and hands in different directions, creating said effect. This creates the power necessary to begin the path towards bringing the bat to the ball. Josh Donaldson explains this concept perfectly in a fascinating tutorial he did back in 2015.

バットと前足に付けたゴムバンドを伸ばすラバーバンド効果(rubber band effect)をつくり出している
引用元:https://community.fangraphs.com/examining-mike-trouts-perfect-swing/
引用文では,「トラウト選手がステップして,前足を前方に踏み込んでいるときに,手元は後方にとどまり続けている.この前脚と手をそれぞれ反対方向に伸ばしていく動きが,ラバーバンド効果(rubber band effect)をつくり出す」とあります.
ステップするときに,前脚と手を反対方向に伸ばす動きは,バットと前足をつないだゴムバンドを伸ばす動きとなるため,ラバーバンド効果(ゴムバンド効果,輪ゴム効果)ということばになっているようです.
ラバーバンド効果の利点については,「ラバーバンド効果は,打ち返す方向にスイングするのに必要なパワーをつくり出す」と説明されています.


ムーキー・ベッツ選手が,前脚と手を反対方向に伸ばしてラバーバンド効果(rubber band effect)をつくっていることを確認できます.前足が着地したときに,バットと前足をつないだゴムバンドが伸ばされた状態にえります.
ラバーバンドドリル(Rubber Band Drill)
ラバーバンドを使ったドリル(反復練習)の動画も確認することができます.
引用文では,”the rubber band effect, a phrase you’re probably familiar with” 「おそらくあなたがよく知っているフレーズであるラバーバンド効果」とあるので,アメリカの野球界では「ラバーバンド効果」ということばがある程度浸透していることが伺えます.
日本の野球界では,ラバーバンド効果というフレーズはまだあまりなじみがないようですが,今後,新しい練習方法として導入されることで,打撃動作の改善が期待できると考えられます.選手,指導者の方々の参考になればと思います.