特異性の原則
2020年8月2日 投稿
肉体改造を巡って賛否両論
大谷翔平の”キン肉マン化”は本当に間違っているのか?
2020/2/24(月) 7:12配信
右肘のリハビリを終え、今季から二刀流復活が期待されるエンゼルスの大谷翔平(25)がムキムキの肉体でスプリングトレーニングに登場していることがファンの間で話題になっているが、球界の大御所、張本勲氏がTBS系列の「サンデーモーニング」内で、「あんな体を作っちゃダメ。プロレスじゃないんだから。ケガする」と発言。ウエートトレに批判的立場だったイチローの例も出てきて、その肉体改造を巡ってネット上でも賛否両論が巻き起こっている。張本勲氏の問題の発言は、大谷がノースリーブのシャツを着て、まるでポパイのようにムキムキになった肩、腕の筋肉を披露した映像を見たところで生まれた。「あんな体を作ってはダメ。プロレスじゃないんだから。野球に必要な体だけでいいんですよ」
さらに張本氏は、「ケガしますよ。体の大きい人は膝に負担がかかるから。まして人工芝。ケガが非常に多くなる。やってもそれ以上に走ればいいですよ。逆だもん。上半身ばっかり鍛えてもダメ」と、マッチョ化を断罪した理由を説明していた。
ファンからの“ヤフコメ”での意見を見ていると、「すべて本人次第」「選手それぞれによって違う」「勝手な思い込みで決め付けてしまわない様に」「張さんの主張は大谷選手も十分分かってるだろう。今年は、この体づくりでチャレンジするって決めたのだから、その大谷選手を応援してあげましょう」といった批判的な声だけでなく「これだけは張本の言うことが正しいと思う」「ピッチャーでこの体では無理」という賛同の意見もあった。
引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/bc9e89e5aec460bde4bb84b6866b2ef45fe1e6ca

引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/bc9e89e5aec460bde4bb84b6866b2ef45fe1e6ca
プロ野球選手がボディービルダーのような体を作るたびに,是か非かの議論が巻き起こるのが常となっています.そのような議論を交わす前に,トレーニングの原則の一つである特異性の原則について解説します.
特異性の原則
ウエイトトレーニングについては,ダルビッシュ投手も一家言を持っているようです.野球選手の肉体改造に興味がある方のために,トレーニングの原則の一つである特異性の原則について説明します.複合トレーニングの効果は無視します.
特異性の原則とは「ある種の運動能力を高めるにはそれと同類の運動でトレーニングするとよい」という原則です.

実線は力-速度関係を表し,負荷が大きいほど関節運動の速度は小さくなります.たとえば,腕を曲げる肘関節の屈曲では負荷(力/最大筋力 %)が小さければ腕を曲げる速度(速度 m/秒)は大きくなり,負荷が大きければ腕を曲げる速度は小さくなります.
点線はパワー(力×速度)を表しています.ラグビーのスクラムや相撲の四つのように大きな力をじわーっとゆっくり出す力ゾーンの競技では力ゾーンのトレーニングがよく,砲丸投げのように負荷のかかった状態でスピードが要求されるパワーゾーンの競技ではパワーゾーンのトレーニングがよいことになります.
投球動作がどのゾーンにあたるかといえば,ボールの重さは145グラムしかなく,鉛のボールを投げるわけではないので,どう考えても負荷の小さい運動になります.
つまり,スピードゾーンのトレーニングをするのがよく,ボールを投げること自体(シャドーピッチングも含む)がウエイトトレーニングとなります.
腕を振る動作のなかにベンチプレスのようなじわーっと力を発揮する動作は含まれていないので,ベンチプレスを行っても腕を振るスピードを速くする直接的な効果はないことになります.
打撃動作がどのゾーンにあたるかといえば,バットの重さは900グラムくらいですから,ある程度負荷がかかった状態でバットを速く振るということになります.
鉛のバットを振るわけではありませんが不可は小さいとはいえないので,パワーゾーンにあたると考えられます.つまり,パワーゾーン(力とスピードの両方が要求される)のトレーニングをするのがよく,バットを振ること自体(素振りも含む)がウエイトトレーニングとなります.
バットを振る動作のなかにベンチプレスのようなじわーっと力を発揮する動作は含まれていないので,ベンチプレスを行ってもバットを振るスピードを速くする直接的な効果はないことになります.
ステロイドとは無縁のクリーンな選手
2020年8月6日 投稿
ステロイドとは無縁のクリーンな選手
ケン・グリフィー・ジュニア選手はステロイドとは無縁のクリーンな選手だったことで有名です.ウエイトトレーニングもしない ということを何かで読んだか聞いた記憶があります.
インターネットで検索したところ,「他の選手のように筋力トレーニングに励まずにもパワーを見せ付けた選手だった」という記載がありました。
現地15日に行われた第85回オールスター戦のMVPは、1回に先制三塁打を右翼越えに、5回には勝ち越しの左翼線二塁打を放ったエンゼルスのマイク・トラウト外野手。走攻守すべて超一流のスーパースターに育ちつつある22歳342日の若者だ。しかし、MVPの最年少記録にはわずかに及ばなかった。1992年にマリナーズのケン・グリフィー外野手が22歳235日で受賞している。彼の父親グリフィー・シニアも1980年に受賞しており史上初の親子二代受賞。トラウト同様に3度目の出場となったこの年のジュニアは、サンディエゴで開催されたビッグゲームに「7番・中堅」で先発出場。1回に右前タイムリー、3回にグレッグ・マダックスから左翼席にたたき込み、6回には右翼線二塁打の3打数3安打2打点で文句無しの受賞だった。
グリフィーはその後も、メジャーのスーパースターとして輝き続け、MVP1度、4度の本塁打王に1度の打点王を獲得。歴代6位の通算630本塁打を放った。彼のすばらしさは長打力だけでなく10年連続ゴールドグラブ賞。また、盗塁も通算184個と当時はバリー・ボンズ外野手と並んでメジャーを代表するオールラウンドプレーヤー。また、1990年代に蔓延したとされる薬物にまったく縁がなかったクリーンな選手としても知られている。グリフィーはハイスクール時代から注目され1987年のドラフト全米1位でマリナーズに指名され、マイナーを129試合(打率3割2分、27本塁打、49打盗塁)で卒業して19歳でメジャーに昇格した。彼への印象は少年時代からの生まれついての天才という言葉似合う選手。他の選手のように筋力トレーニングに励まずにもパワーを見せ付けた選手だった。
引用元:https://weblog.hochi.co.jp/hiruma/2014/07/post-9702.html
体格ではなく動作がパフォーマンスを決める
グリフィー選手は野球選手のなかではスリムな体格といえます.スリムな体でなぜこれ程の飛距離を出せるのかと問われれば,グリフィー選手がスイングスピードを速くできるような動作を行っているからというのが答えになります.
まず動作があり,その動作の後にパフォーマンスという結果が出るので,ボディビルダーのような選手であってもスリムな選手であっても,体格に関係なく,その選手の打撃動作によって飛距離という結果が出ていることになります.
体重が重い選手は運動エネルギーを大きくできる という利点はありますが,動作がパフォーマンスの直接的な原因となるので,ウエイトトレーニングの側面はそれほど重要視されないことになります.
野球の動作にはパワーゾーンの動作は含まれていないので,特異性の原則により,パワーゾーンのウエイトトレーニングを行っても直接的な効果は得られないことになっています.
選手の体格によって運動エネルギーの利用の仕方が異なるため,動作に違いが出てきますが,MLB の一流選手に共通する動作として認められるのが,「人」の形(右バッターの場合は,「入」の形)で打つ動作です.
他にも 空手打法 で打っているか,インパクト後,後ろ腕でボールを押し込み,両腕を伸ばしてボールを強打しているかといった調整力の巧拙が問われます.
負荷の異なる4種トレーニングの効果
2021年2月24日 投稿
成功体験でしか人は語れない
ダルビッシュ トレーニング方法への苦言「無視で大丈夫」と語る理由…「人は成功体験でしか語れない」
カブスからパドレスに移籍したダルビッシュ有投手(34)が1月31日放送のTBS「林先生の初耳学」(後10・15)にリモート出演。予備校講師でタレントの林修氏(55)から「偉大なOBがいろいろ言いますよね、日本野球について?」と尋ねられ、持論を語った。
林氏のインタビューに答える形で番組は進行した。ダルビッシュは20歳のころにボディビル雑誌を読んでいたエピソードを披露。「最初の方はなんでそんなの読んでいるの?ってみんなに思われていたけれど、それが今じゃ普通になってきているというか」と、トレーニング方法も変化していると説明した。
「ボディビルについても僕ちらっと聞いただけなんですけど『野球の筋肉と違うから無駄だ』っていう、いわゆる昔偉かった偉大なOBがいろいろいいますよね、日本野球について」と林氏。これにダルビッシュは、「その人達(新しい)トレーニングをやって、プレーを経験した経験がないので、その発言全く説得力がないので無視で大丈夫だと思います」とバッサリ。「だって、やっていないのに分かるわけがないじゃないですか」と続けた。
ダルビッシュはバニラアイスを引き合いに出し、「食べたことない人が味なんて分からないし、それがどういうことかって説明すらできなじゃない」と指摘し、「でもそういう人たちがやっているのって、そういうことなので全く説得力がない」とした。
「成功体験でしか人は語れないし、その人達の成功体験は走り込みだけなので。いろいろなことをやっていないので」とコメントしたダルビッシュ。「投げ込み、走り込み、うさぎ跳びとかそういうことしかやっていないから、そこしか多分語れないんですよ。そこを多分、自分たちが否定することができない。否定してしまうと、過去の自分の人生とかも無駄なことをやっていたってなっちゃので」と私見を述べた。
スタジオには「結構ズバッと言いますね」と驚きの声が響いた。ダルビッシュはOBらの声に関して「悪気はないと思う」と付け加え、「OBの人たちが勉強をしてくれればいいんですけど、それはしないので。自分がちゃんと勉強して、自分が信じるものをやればそれでいいと思います」と語り、話題を締めくくった。
引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/7241e804daf3c0493ff663692f330724093a6bc6
負荷の異なる4種トレーニングの効果
金子公宥著のパワーアップの科学(1988) から,パワーを高めるためのトレーニングについて記載されている部分pp.153-157を引用します.
実験方法
- ”最大パワーをより効果的に高めるには” に焦点を当てる.
- 肘屈筋を対象に,最大努力の筋収縮を1日10回,週3日,12週間行った.
トレーニング群の構成
- 最大筋力(=100%) そのものを発揮する100%群
- 最大筋力の60%の負荷を用いる60%群
- 最大筋力の30%の負荷を用いる30%群
- 無負荷で空振りする0%群
※いずれも全力発揮のトレーニング
実験結果を力,速度,パワー関係の変化で示したものが図151になります.

実験結果・力-速度関係(凹曲線)
- 100%群(最大筋力群)では,最大速度(縦軸との交点)がほとんど変化せず,最大筋力(横軸との交点)が増えている.
- 空振りを繰り返した0%群で,最大筋力は伸びずに最大速度が増えている.
- 力を速度を兼ね合わせたトレーニング群が60%群と30%群であるが,いずれも全般的な伸びを示し,曲線が右上方へ平行して移動している.
実験結果・力-パワー関係(凸曲線)
- どの群のパワーも多かれ少なかれ増加しているが,30%群の増加が最も著しい.
- 図151をわかりやすくするために,その模式化を図るとともに,最大筋力,最大速度,最大パワーにみられた増加量(+⊿)を図152に取り出して示した.

図152からいえること
- 最大筋力が最も増加した群は100%群で,以下60%群,30%群,0%群の順である.
- 最大速度が最も増加した群は0%群で,以下30%群,60%群,100%群の順である.
- 最大パワーが最も増加した群は30%群で,以下100%群,60%群,0%群の順である.
- どの群でも多かれ少なかれ,最大筋力,最大速度,最大パワーが増加している.
ターゲットの最大パワーを最も効果的に高める負荷は,“最大筋力の30%負荷”という答えが出た.最大筋力の30%負荷とは,最大パワーの出現する負荷でもある.すなわち,最大パワーを高めるためには最大パワーを発揮するトレーニングが最も効果的であり,同様に最大筋力を高めるためには最大筋力の発揮によって,最大速度は最大速度の発揮によって効果を高めうる,ということである.答えを知ってしまえばそれまでの “コロンブスの卵” 的結果であるが,パワートレーニングの基礎がここにあるといっても過言ではない.
引用元:金子公宥:パワーアップの科学(1988),朝倉書店,pp.155-156
4種の負荷トレーニングのすべてで体力要素が向上する
図152をまとめたものが下図になります.
図152の増加幅に順位をつけたもの | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
最大筋力 | 最大速度 | 最大パワー | ||||
負荷強度 | 増減 | 順位 | 増減 | 順位 | 増減 | 順位 |
100%群 | + | 1 | + | 4 | + | 2 |
60%群 | + | 2 | + | 3 | + | 3 |
30%群 | + | 3 | + | 2 | + | 1 |
0%群 | + | 4 | + | 1 | + | 4 |
※どの負荷強度でも効果がマイナスになることはない. ※最大筋力を高めるためには最大筋力を発揮する100%群の トレーニングが最も効果的である. ※最大速度を高めるためには最大速度を発揮する0%群のト レーニングが最も効果的である. ※最大パワーを高めるためには最大パワーを発揮する30%群 のトレーニングが最も効果的である. ※ ”ある種の運動能力を高めるためにはそれと同類の運動でト レーニングするとよい” という”特異性の原則” と一致する. |
図152から負荷強度が異なる場合でも,最大筋力,最大速度,最大パワーが増加していることがわかります.つまり,負荷を最大にしても,負荷をなくして空振りしても,多かれ少なかれ体力要素は向上します.
ダルビッシュ投手のトレーニングの詳細はわかりませんが,最大筋力を高める目的でボディビルの負荷の大きなトレーニングをおこなった場合でも,最大速度は増加するので,スピードの向上ができないとはいえません.
ただし,腕の振りの最大速度を高めたいのなら,負荷を小さくしたほうが増加幅が大きくなるので,わざわざ増加幅が最小となる100%群(最大筋力群)でトレーニングするのは効率的ではありません.筋が肥大化することで,関節の可動域が狭まり,結果としてスピードが落ちる場合も考えられます.
100%群(最大筋力群)で最大筋力の増加幅が最大になり,0%群で最大速度の増加幅が最大になり,30%群で最大パワーの増加幅が最大になることは,”特異性の原則” と一致します.
野球の投球動作,打撃動作のなかには,重量挙げのように大きな力をじわーっと発揮する力ゾーンの動作は含まれていないので,ボディビルのトレーニングは必要ないと思われますが,ダルビッシュ投手にはボディビルのトレーニングでパフォーマンスが向上しているとの認識があるようです.
ウエイトトレーニングをする場合は,競技のゾーンに合わせた負荷を設定して行うことになりますが,野球の練習自体がウエイトトレーニングになっていることも事実です.
投球練習でボールという小さな負荷で腕を振ることはスピードゾーンのウエイトトレーニングになりますし,素振りをすることも負荷0%群のウエイトトレーニングになります.
打撃練習でバットという重さの負荷で打つことはパワーゾーンのウエイトトレーニングになりますし,素振りをすることもバットの負荷でウエイトトレーニングしているのと同じになります.
ウエイトトレーニングを一切行わなかったケン・グリフィー・ジュニア選手が,なぜ特大ホームランを打てたのかというと,特大ホームランを打てるような体の使い方をしていたからです.
ですから,動作を改善することで打球の飛距離を伸ばすことは可能です.
無負荷で空振りする0%群で,最大速度が最も増加したのはなぜか?
2020年8月2日 投稿
なぜ0%群で最大速度の増加幅が最大になるのか
「負荷の異なる4種トレーニングの効果」によると,負荷強度を「100%群,60%群,30%群,0%群(最大筋力に対する負荷の割合)」に設定して,肘屈筋を対象に,最大努力の筋収縮を1日10回,週3日,12週間行った結果,トレーニング前とトレーニング後での増加幅を大きい順に並べると,
- 最大筋力(100%群,60%群,30%群,0%)
- 最大速度(0%群,30%群,60%群,100%群)
- 最大パワー(30%群,100%群,60%群,0%群)
の順となっていることがわかります.()内は増加幅の大きな順番.
これは,最大パワーを高めるためには最大パワーを発揮するトレーニング(最大筋力の30%負荷)が最も効果的であり,同様に最大筋力を高めるためには最大筋力(100%群)の発揮によって,最大速度は最大速度(0%群)の発揮によって効果を高めうる,という特異性の原則を示唆しています.
「ある種の運動能力を高めるにはそれと同類の運動でトレーニングするとよい」という特異性の原則に従えば,145グラムのボールを投げることは負荷強度の低い運動にあたります.負荷強度を低く設定したトレーニングが腕の振りを速くするのに効果的であることは想像がつきますが,なぜ,無負荷で空振りする0%群で最大速度の増加幅が最大になるのか不思議に思う方も多いはずです.
筋は骨をまたいで付着している


図4-2のように,上腕二頭筋が関節をまたいで橈骨に付着しているので,上腕二頭筋が収縮すると,前腕が引っ張られて肘が曲がります.図4-3のように,関節をまたがず上腕骨に付着しても前腕を引っ張ることはできないため,肘は曲がりません.


空振りは無負荷ではない
引用した図からわかるように,無負荷で肘屈曲を行ったとしても,上腕二頭筋は前腕を引っ張っているので,前腕の重さを負荷として肘を曲げていることになります.
つまり,無負荷ではありません.ですから,無負荷で空振りする0%群のトレーニングは,負荷強度の低い(無負荷ではない)トレーニングに該当し,特異性の原則どおり最大速度の増加幅が最大になっても不思議はありません.
昔は背が高い選手は動作が遅く大成しないと言われていたようですが,体重のある大柄な選手は動くさいに,関節をまたいで自身の重い部位を筋が収縮して引っ張ることになるので,過度の負荷がかかり動作が鈍くなります.
筋力に個人差はありますが,背が高い選手でも痩せている場合は,それほど動作は遅くならないと考えられます.
体重のある選手の動作が鈍くなるということから,減量すれば体にキレが出ることが考えられます.パフォーマンスにどのように影響するのかは選手個人の動作によります.
新庄監督が清宮選手に減量指令-痩せれば打てるようになるのか?
2021年11月29日 投稿
【日本ハム】新庄剛志監督「デブじゃね?やせない?」大食漢・清宮幸太郎の脇腹つまみダイエット指令
11/10(水) 6:00配信
日本ハムのビッグボス・新庄剛志監督(49)が9日、清宮幸太郎内野手(22)にダイエット指令を下した。沖縄・国頭(くにがみ)秋季キャンプ視察2日目。この日は積極的に選手に言葉をかける場面が多かったが、中でも期待の若き大砲候補には「ちょっとデブじゃね? ちょっとやせない? やせた方がモテるよ」と直接減量指令。スター集団の形成に向けて、まずは甲子園を沸かせたスラッガーにメッセージを送った。
ド直球な言葉で、変化を求めた。メイン球場での練習を視察中。ビッグボスは守備に向かう清宮に声をかけると、脇腹をつまみながらこう口にした。
「ちょっとデブじゃね? ちょっとやせない? やせた方がモテるよ。かっこいいよ」 柔らかい言葉を織り交ぜてのダイエット指令。若き大砲候補からは「やせてしまったら打球が飛ばなくなるのが怖いです」と言われたというが、そんなことはお構いなし。
「変えないと。今もそんなに打球飛んでないよ。昔の方がもっと飛んでた。昔の方がスリムじゃなかった? それはキレがあったから。今はちょっとキレがない気がするから、やせてみよう」
高校時代から公称では1キロ増だが、早実で高校通算最多の111発をマークし、7球団競合で日本ハムに加入してからプロ4年間で通算21本塁打。さらに今季は初めて1軍出場ゼロに終わる悔しさを味わった直後だからこそ、ストレートな言葉で自分から変わることを求めた。
仙台~大宮間(1時間8分)の新幹線内で牛タン弁当7個を平らげるほど大食漢の清宮にとっては高いハードル。だが、その厳しさを乗り越えることも成長につながると説く。
「ダイエットはものすごく精神的に鍛えられる。スタイルを保っている人は自分に負けずしっかりした気持ちがあるんじゃないかな」
報道陣にも清宮を随時チェックすることを求めながら、最後は「清宮くんも弁当をできたら3個くらいに…。それでも、調整しているんだから。素晴らしいと思いますよ」と笑顔。これには清宮も「やってみなきゃ分からないところもありますし、答えは春のキャンプでというところかな」と意欲を示した。
ダイエットに加えて、会話の中では股関節を柔らかくすることも求めた。「春までにグニャグニャになっていたらびっくりするよね。テーマはいっぱいありますよ、彼は。やせてきたらみんな褒めてね」。説得力のある言葉の数々で選手たちの心を引きつけるビッグボス。「今、ここにいるのは2軍のメンバー。思い切って、勇気を持って変えていかないと、スター、タレントにはなれないと思っていい」。この言葉に全てのメッセージが詰まっている。(後藤 亮太)
報知新聞社
引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/c015737a4211a9fe51b998fec5aac2cee75c69a5

引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/c015737a4211a9fe51b998fec5aac2cee75c69a5/images/000
やせてしまったら打球が飛ばなくなるのが怖い
新庄監督の減量指令に対して「やせてしまったら打球が飛ばなくなるのが怖いです」と言った清宮選手.
大谷は長さ、俺らは重さで飛ばす-山川穂高選手の本塁打力学 で述べたように,運動エネルギーは1/2×m(質量)×v(速度) の二乗で表されるので, ステップの速度が一定ならば,体重が重いほうが,m(質量) が大きくなり,値が大きくなります.
減量すれば運動エネルギーが小さくなるため,体重の重さに頼った打ち方をしている場合は,打球が飛ばなくなる可能性があります.
清宮選手の発言は,体重の重さに頼った打ち方をしていることを自覚していることの現れかもしれませんが,もしそうであるならば,痩せることによってスイングのタメをつくるなどの動作の改善が期待できる側面があります.
山川穂高選手のような体重のある打者は,改善すべき動作があったとしても,ステップに伴う前方移動にブレーキをかけることで生み出される 一次運動エネルギー を利用してボールを飛ばすことが可能です.
新庄監督の「変えないと。今もそんなに打球飛んでないよ。昔の方がもっと飛んでた。昔の方がスリムじゃなかった? それはキレがあったから。今はちょっとキレがない気がするから、やせてみよう」という発言は,「体重が重いとキレがない,スリムなほうがキレがある」ということを言っています.
「無負荷で空振りする0%群で,最大速度が最も増加したのはなぜか?」 で述べたように,筋は関節をまたいで関節をまたいで付着しており,筋が収縮することで付着している部位を引っ張ることになります.
例えば上腕二頭筋が収縮すると,前腕という部位を引っ張ります.体重のある選手は関節をまたいで筋が引っ張る部位が重くなるため,過度の負荷がかかり動作が鈍くなります.動作が鈍くなればキレもなくなります.

体重のある選手は,肘関節の運動に限らず,関節をまたぐ部位が重いので,筋が収縮して部位を引っ張る際に過度の負荷がかかり,動作が鈍くなる(キレがなくなる).
引用元:小田伸午(2003):運動科学 アスリートのサイエンス,丸善,p.71,図4-1
引用元:小田伸午(2003):運動科学 アスリートのサイエンス,丸善,p.72,図4-2
体重が重くなると体のキレがなくなることは,慣性モーメントからも説明が可能です.
「科学する野球」慣性モーメントを小さくする で述べたように,「回しにくさ」の指標である(慣性能率)Iは,m(質量)✕r(回転半径)の二乗で表されるので,体重が重くなれば,m(質量)が大きくなり,慣性モーメントは大きくなります.
慣性モーメントが大きくなると,打撃,投球の際に,脊柱を軸に体幹を回旋する動作等の回転運動の速度が遅くなり,体のキレが悪くなります.
清宮選手が痩せることによって,体重の重さに頼った打ち方から脱却し,スイングスピードを高めるような動作の改善を達成することができれば,パフォーマンスの向上が期待できます.
減量しても,体重の重さに頼った打ち方を続ければ,打球は飛ばずパフォーマンスは低下すると考えられます.
佐藤輝明選手の肉体改造-「マッチ棒」から97キロ
2021年5月1日 投稿
「マッチ棒」から97キロ
肉体改造「マッチ棒」から97キロ/佐藤輝明連載7
[2020年12月16日7時0分]
<佐藤輝ける成長の軌跡(7)>
4球団競合の末に、ドラフト1位で近大・佐藤輝明内野手(21)が阪神に入団した。日刊スポーツでは誕生から、プロ入りまでの歩みを「佐藤輝ける成長の軌跡」と題し、10回連載でお届けします。【取材・構成=奥田隼人】
◇ ◇ ◇
阪神ドラフト1位の近大・佐藤輝明内野手(21)は、仁川学院2年時にターニングポイントを迎えた。
高校入学時は170センチ、65キロ。細身の体形で、周囲から「マッチ棒」と呼ばれることもあった。1年時から大飛球を飛ばしていたが、ひと伸び足りない打球も多かった。2年の春。肉体改造に着手した。まずは部屋の「リフォーム」から始めた。父博信(53)が、息子と一緒に使おうとベンチプレスマシンを購入。置き場所は輝明の部屋だったが、予想以上にスペースを取った。
父博信 どうせ勉強せんやろ?
輝明 せんわ
母晶子 勉強どうすんの!?
ミニ家族会議を経て、置いてあった勉強机はクローゼットに押し込まれた。そしてベッドと並列して、部屋のど真ん中にマシンが置かれた。勉強場所はリビングで落ち着いた。ただ、ベンチプレスを上げるには正しいやり方など知識が必要だった。素人同然の輝明では、効果的なトレーニングの成果は得られなかった。
マシン購入から半年後の10月。声が掛かった。佐藤家の近所でうどん店「はづき」を営む高取君己(なおき、49)と息子真祥(まさき)が、輝明をジムに誘った。真祥と輝明は同じ野球部の同級生で、近所同士ということもあり仲が良かった。高取親子が通っていた兵庫・西宮市武庫川町にある小さなジムを体験で訪れた輝明は、トレーニングに励むマッチョたちに刺激を受けた。「オレ、やります」。当時182センチ、80キロまで成長しており、さらに体重100キロを目標にジム通いがスタートした。
ペースは月、水、金曜の週3日。高校は午後8時完全下校で、部活動の練習から帰宅すると軽食をとってジムに向かった。行き来は主にうどん店の営業を終えた君己が、息子と輝明を車に乗せて片道約20分の道のりを運んだ。トレーニングは午後9時ごろから約2時間。君己がジムの関係者と知り合いだったこともあり、熱が入った時は日をまたぐまで汗を流したこともあった。ジム終わりにはラーメンを3人で食べに行った。ジムに行かない日は、学んだトレーニング法を自室で取り組んだ。重さ最大145キロに設定できるマシンなどを上げて体を鍛えた。
努力は実を結ぶ。高校2年の終わりには体重が97キロまで到達。3月の対外試合解禁後は豪快なホームランを連発した。本人も「打球が変わった」と成果を実感。目に見えて効果が出たことで自信がつき、プロ入りという目標を明確に持つようになった。(敬称略、つづく)
引用元:https://www.nikkansports.com/baseball/news/202012150000006.html
7

ベンチプレスで期待できる効果
ベンチプレスでは,バーベルを挙げるときに上腕三頭筋を収縮して腕を伸ばします.インパクト後,打ち返す方向へ両腕を伸ばしてボールを押し込まなければならないので,ベンチプレスで上腕三頭筋の最大パワーを増大することができれば,ボールをより強く打つことができます.佐藤選手のベンチプレスの最高は130㎏くらいとのことです.
しかし,インパクト後,両腕を伸ばしてバットを押し込む動作はパワーを発揮する動作にあたり,ベンチプレス130㎏を挙げるときのじわーっと力を発揮する筋力を発揮する動作とは異なるので,最大筋力を高めても直接的な効果はありません( 参照:「負荷の異なる4種トレーニングの効果」 ).
佐藤選手がどのような筋力トレーニングを行っていたのかはわかりませんが,動画を見ると,負荷の小さいベンチプレスのトレーニングも行っていたようです.
負荷を最大筋力の30%に設定して最大パワーを高めるトレーニングを行っていたとすれば,ボールを遠くに飛ばすという点で効果があったと思われます.
ただ,佐藤選手のバーベルを握る位置が両側に少し離れているので,上腕三頭筋よりも大胸筋,三角筋に負荷がかかるトレーニングになっています.
これでは上腕三頭筋の最大パワーを100%高めているとはいえないので,飛距離を伸ばすのにどのくらい効果があったかについては微妙なところです.
打球が飛ぶようになった原因は?
引用文を読んだ人の中には,「佐藤選手は筋力トレーニングをしたおかげで飛距離が伸びたのだから,自分も高校生のうちからベンチプレスをしなければならない」と思われた方がいるかもしれません.しかし,単純に筋力トレーニングのおかげと考えるのは早計です.
高校入学時(肉体改造前)と高校2年の終わりとで体格を比較すると,身長が170センチから182センチ(高校2年の10月)に伸び,体重が65キロから97キロへと32キロ増加しています.
①身長 170㎝ → 182㎝(高校2年の終わりの身長は確認できず)
- 身長が伸びると腕も長くなるので,他の選手と同じ移動角,角速度で投げた場合でも,他の選手よりも末端の速度を大きくすることができる.
- スイングに伴う回転運動の速度を大きくできるため,スイングスピードを加速することが可能.
- 腕が長くなれば筋も長くなるため,収縮の最大速度は増加する.
※詳しくは 大谷は長さ、俺らは重さで飛ばす-山川穂高選手の本塁打力学 をご覧ください.
②体重 65㎏ → 97㎏ 32㎏増加
- 運動連鎖を利用するためには,最初に大きな運動エネルギーを発生させることが重要で,大元の運動エネルギー(一次エネルギー)はステップに伴う前方移動により生み出される.
- 運動エネルギーは1/2×m(質量)×v(速度) の二乗で表されるので, m(質量) が大きいほうが値が大きくなる.
※詳しくは 大谷は長さ、俺らは重さで飛ばす-山川穂高選手の本塁打力学 をご覧ください.
飛距離が伸びた最大の要因は体格の向上
飛距離が伸びた原因として考えられること
- ベンチプレスによる最大筋力を高めるトレーニング(最大筋力100%発揮)
- ベンチプレスによる最大パワーを高めるトレーニング(最大筋力の30%に負荷を設定)
- 身長が伸びたことによる回転運動の末端速度の増大
- 発育による上腕三頭筋の最大速度の増大(パワー=力×速度)
- 体重が増加したことによる運動エネルギーの増大
1は直接的な効果がなく,2は詳しいトレーニング内容がわからないため,何ともいえません( 参照:「負荷の異なる4種トレーニングの効果」 ).
最大の要因として考えられるのは,3,4,5の発育による体格の向上です(参照:大谷は長さ、俺らは重さで飛ばす-山川穂高選手の本塁打力学)
佐藤選手は高校入学時は170センチ、65キロの細身の体形で、周囲から「マッチ棒」と呼ばれることもあったそうですが,1年時から大飛球を飛ばしていたとのこと.
筋力トレーニングによる筋量の増大も体重増加の一因となっているかもしれませんが,体格が大きく向上したことでさらに飛距離が伸びたと考えるのが適当です.
高校から筋力トレーニングを始めた場合でも,皆が佐藤選手のように大きく体格が向上するわけではないので,短絡的に筋力トレーニングすればパフォーマンスが向上すると考えるのは注意が必要です.
個人的には,筋力トレーニングを行う前に合理的な動作を身につけるための動作の改善に取り組むことも重要であると考えます.