野球選手にボディビルダーの筋力は必要か-特異性の原則

肉体改造を巡って賛否両論

 右肘のリハビリを終え、今季から二刀流復活が期待されるエンゼルスの大谷翔平(25)がムキムキの肉体でスプリングトレーニングに登場していることがファンの間で話題になっているが、球界の大御所、張本勲氏がTBS系列の「サンデーモーニング」内で、「あんな体を作っちゃダメ。プロレスじゃないんだから。ケガする」と発言。ウエートトレに批判的立場だったイチローの例も出てきて、その肉体改造を巡ってネット上でも賛否両論が巻き起こっている。

引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/bc9e89e5aec460bde4bb84b6866b2ef45fe1e6ca

特異性の原則

 ウエイトトレーニングについては,ダルビッシュ投手も一家言を持っているようです.野球選手の肉体改造に興味のある方のために,トレーニングの原則の一つである特異性の原則を紹介します.複合トレーニングの効果は無視します.特異性の原則とは「ある種の運動能力を高めるにはそれと同類の運動でトレーニングするとよい」という原則です.

引用元:小田伸午「運動科学 アスリートのサイエンス」丸善 2003 p.26 図Ⅰ-12

 実線は力-速度関係を表し,負荷が大きいほど関節運動の速度は小さくなります.たとえば,腕を曲げる肘関節の屈曲では負荷が小さければ腕を曲げる速度は大きく,負荷が大きければ腕を曲げる速度は小さくなります.点線はパワー(力×速度)を表しています.ラグビーのスクラムや相撲の四つのように大きな力をじわーっとゆっくり出す力ゾーンの競技では力ゾーンのトレーニングがよく,砲丸投げのように負荷のかかった状態でスピードが要求されるパワーゾーンの競技ではパワーゾーンのトレーニングがよいことになります.

 投球動作がどのゾーンにあたるかといえば,ボールの重さは145グラムしかなく,鉛のボールを投げるわけではないので,どう考えても負荷の小さい運動になります.つまり,スピードゾーンのトレーニングをするのがよく,ボールを投げること自体(シャドーピッチングも含む)がウエイトトレーニングとなります.腕を振る動作のなかにベンチプレスのようなじわーっと力を発揮する動作は含まれていないので,ベンチプレスを行っても腕を振るスピードを速くする直接的な効果はないことになります.

 打撃動作がどのゾーンにあたるかといえば,バットの重さは900グラムくらいですから,ある程度負荷がかかった状態でバットを速く振るということになります.鉛のバットを振るわけではありませんが不可は小さいとはいえないので,パワーゾーンにあたると考えられます.つまり,パワーゾーン(力とスピードの両方が要求される)のトレーニングをするのがよく,バットを振ること自体(素振りも含む)がウエイトトレーニングとなっています.バットを振る動作のなかにベンチプレスのようなじわーっと力を発揮する動作は含まれていないので,ベンチプレスを行ってもバットを振るスピードを速くする直接的な効果はないことになります.