内側側副靱帯を損傷する可能性が大きい投手-2020

内側側副靱帯を損傷する可能性が大きい投手

2020年5月に作成したリスト

 これから書く記事は,2020年5月に作成した「内側側副靱帯を損傷する可能性が大きい投手」のリストの内容を基にした内容となります.

 当時,作成したリストは次の表です.

内側側副靱帯を損傷する可能性が大きいタイプA-1の腕の振りを行うオーバースローの投手 2020年5月作成
※タイプA-1:MER(肩関節最大外旋位)から体幹を倒さず,回旋せず腕を振る投手群
タイプA-1 の投手投法 ※1肩関
節最
大外
旋角度
※2  
MER
の上腕
とリリ
ース時
の上腕との角度
※3
リリー
ス時の
胴体と
上腕との角度
※4
リリー
ス時の
肘関節
の屈曲角度 ※5
ボール
の切り方タイプ
※6
最高
球速※7
投球
回数
※8  2019
まで
西野勇士132407.1
斎藤佑樹132364.2
山崎康晃132296.0
中村勝*142289.1
安樂智大142181.2
井口和朋142129.1
榊原翼13297.1
※内側側副靭帯損傷歴の有無にかかわらず,TJS歴のない投手を対象とする.
※YouTubeの動画でボールの握りからストレートと推定できる投球動作について※1~6を確認.動
画の撮影時期や数にかかわらず肘の突き出しが認められるものが一つでも確認できれば,該当する動
画の投球動作の分析をもとに掲載.確認できる動作が複数あるときは総合的に判断する場合がある.
投球フォームの変更は考慮しない.投球動作の分析は筆者個人の主観による.
※リリース後,体幹を倒す場合でもMERからリリースするまでに肩が固定されていれば,タイプA
1とみなす.体幹が倒される程度がどのくらいであれば肩が固定されているとみなされるかについて
は,筆者の判断による.
※側面からの動画で肘の突き出しを確認.動画を撮影する角度により肘の突き出しを判断することが
困難になる側面がある.肘の突き出しが行われても角度が前方寄りであると上腕がそれほど前方に倒
れていないようにみえ,肘の突き出しが行われていなくても角度が後方寄り,または上方寄りである
と上腕が前方に倒れているようにみえる.筆者個人の主観により肘の突き出しが推定される投手を掲
載.

※1 1:オーバースロー,2:スリークウォーター,3:サイドスロー
1,2:オーバースローに近いスリークウォーター,3,2:サイドスローに近いスリークウォーター
一人の投手で複数の動画がある場合は,総合的に判断する.投球フォームが変更されていることが確
認できた場合は変更後のフォームで判断する. 
※2 前腕が地面と平行に近い(肩関節最大外旋角度が大きい)ほど肘の突き出しの際に肩関節の外
旋が大きくなり,外反ストレスが大きくなると考えられる.
 MERの静止画像が確認できない場合は,前後の静止画像から肩関節最大外旋角度を推定する.
   ○=前腕が地面と平行に近い,△=前腕が地面に対して45°前後になる,×=前腕が地面と垂直
に近い(筆者の目測による).
※3 前腕がMERからどのくらい前方に倒されているか=実際の肘の突き出しの大きさを推定す
る.MERの静止画像が確認できない場合は,上腕は地面に垂直であるとする.リリース時の静止画
が確認できない場合は,前後の静止画像から上腕の前傾を推定する.
○=90°に近い,△=45°前後,×=0°に近い(筆者の目測による).
MER:肩関節最大外旋位
肘の突き出しによって前腕を後方に回転させる(肩関節を外旋させる)モーメントが生じた場合,前
が地面に対して平行に近い(肩関節最大外旋角度が大きい)ほうが外反ストレスがより大きく作用す
と考えられる.
※4 リリース時の体幹の前傾の大きさによって角度が異なるため,実際の肘の突き出しの大きさ
※3と相関があるとはいえない.
○=90°に近い,△=135°前後,×=180°に近い(筆者の目測による).
※4 タイプA-2との区別が困難であるため,リリース時の胴体と上腕との角度が180°近くになる投手は掲載しない.
※5 MERの上腕とリリース時の上腕との角度が大きければ(肘の突き出しが大きければ),肘関
節の屈曲角度は小さくなると考えられる.
○=90°に近い,△=135°前後,×=180°に近い(筆者の目測による).
※2~5 投法にかかわらずMERの上腕が外側に傾く角度をスリークウォーターと同じ45°に設定したうえで側面から目測する.
※4,5 リリース時の静止画像が確認できない場合は,前後の静止画像から肩関節最大外旋角度を推する.
※6 一人の投手で複数の動画がある場合は,総合的に判断する.投法によって判断が困難になる側
面がある.オーバースローが最もタイプ4になりやすく,上腕が外側に傾く角度が大きくなるにつれ
て腕が体幹,腰まで入りにくくなる.タイプ3,4については,オーバースロー,スリークウォータ
ーは確認しやすいが,サイドスロー,アンダースローでは判断が困難になる.
1:垂直,2:垂直・水平中間型,3:垂直<水平,4:水平
※7 ウィキペディアhttps://ja(en).wikipedia.org/から引用.確認できない場合は,インターネッ
ト検索の情報をもとに記載.
   1:140kph~,2:150kph~,3:160kph~
※8 ウィキペディアhttps://ja(en).wikipedia.org/から引用.
* 過去に内側側副靱帯損傷歴のある投手

 非常にわかりづらい内容となっているため,内側側副靱帯を損傷する投手の条件を基に,新たにリストを作成します.

内側側副靱帯を損傷する投手の条件

  • 肩を固定して投げる
  • 肘を突き出して投げる
  • 投法がスリークウォーターであること(スリークウォーターに近いオーバースローを含む)
  • タイプ4(水平),タイプ3(垂直<水平)の腕の振りであること
  • 球速が速いこと

※投球回数は間接的な指標のため,条件の中に入れていません.

オーバースローの投手(NPB)

表1 内側側副靱帯を損傷する可能性が大きいタイプA-1の腕の振りを行うオーバースローの投手 ※2020年5月作成したものを修正
※タイプA-1:MER(肩関節最大外旋位)から体幹を倒さず,回旋せず腕を振る
タイプ
A-1
の投手
投法
※1
加速期で
肩が固定
される
※2  
加速期で
の肘の突
き出し
※3
ボール
の切り

タイプ
※4
最高
球速
※5
内側側
副靱帯
の損傷
※6
西野勇士1タイプ3
垂直<水平
2
2020.6
斎藤佑樹1タイプ3
垂直<水平
2
2020.10
山崎康晃1タイプ3
垂直<水平
2
中村勝*1タイプ4
水平
2引退
安樂智大1タイプ4
水平
2
井口和朋1タイプ4
水平
2
榊原翼1タイプ3
垂直<水平
2
※内側側副靭帯損傷歴の有無にかかわらず,TJS歴のない投手を対象とする.
※YouTubeの動画でボールの握りからストレートと推定できる投球動作について※1~6を確認.動
画の撮影時期や数にかかわらず肘の突き出しが認められるものが一つでも確認できれば,該当する動
画の投球動作の分析をもとに掲載.確認できる動作が複数あるときは総合的に判断する場合がある.
投球フォームの変更は考慮しない.投球動作の分析は筆者個人の主観による.
※リリース後,体幹を倒す場合でもMERからリリースするまでに肩が固定されていれば,タイプA
1とみなす.体幹が倒される程度がどのくらいであれば肩が固定されているとみなされるかについて
は,筆者の判断による.
※側面からの動画で肘の突き出しを確認.動画を撮影する角度により肘の突き出しを判断することが
困難になる側面がある.肘の突き出しが行われても角度が前方寄りであると上腕がそれほど前方に倒
れていないようにみえ,肘の突き出しが行われていなくても角度が後方寄り,または上方寄りである
と上腕が前方に倒れているようにみえる.筆者個人の主観により肘の突き出しが推定される投手を掲
載.

※1 1:オーバースロー,2:スリークウォーター,3:サイドスロー
   1,2:オーバースローに近いスリークウォーター,3,2:サイドスローに近いスリークウォ
ーター
※2 タイプA-1 の投手投手は,肩が固定される
※3 肘の突き出しの程度:○=90°に近い,△=45°前後,×=0°に近い(筆者の目測による)
   MERの上腕とリリース時の上腕との角度(前腕がMERからどのくらい前方に倒されている
か)から、肘の突き出しの大きさを推定する.MERの静止画像が確認できない場合は,上腕
   は地面に垂直であるとする.リリース時の静止画像が確認できない場合は,前後の静止画像か
   ら上腕の前傾を推定する
※4 タイプ3(垂直<水平),タイプ4(水平)が対象となる
※5 平均球速のデータがないため,最高球速で代用
   ウィキペディアから引用.確認できない場合は,インターネット検索の情報をもとに記載.
   1:140kph~,2:150kph~,3:160kph~
※6 ○=内側側副靱帯の損傷あり,損傷の時期を記載
   ウィキペディアから引用
※内側側副靭帯損傷歴の有無にかかわらず,TJS歴のない投手を対象とする
※YouTubeの動画でボールの握りからストレートと推定できる投球動作について※1~4を確認
 動画の撮影時期や数にかかわらず肘の突き出しが認められるものが一つでも確認できれば,該当す
 る動画の投球動作の分析をもとに掲載
 確認できる動作が複数あるときは総合的に判断する
 投球フォームの変更は考慮しない
 投球動作の分析は筆者個人の主観による
※MER:Maximal shoulder external rotation 肩関節最大外旋位
*:過去に内側側副靱帯損傷歴のある投手

※1 投法

 外反ストレスの大きさは,MERから肘を突き出すときの上腕の角度によって決まります.

最大外旋位の上腕の角度(右投手を捕手側から見る)と外反ストレスとの関係

 下図の①のように,上腕が地面に対して垂直(オーバースロー)の場合,肘を思い切り突き出したとしても,外反ストレスは生じません.

 なぜなら,肩関節が外旋して,前腕が後方に引っ張られても,本来の肘関節の屈曲動作を行うことになるだけで,横方向の動き(外反,内反)は生じないからです.

 しかし,上腕が外側に傾くほど,肘を突き出して前腕が後方に回転するときに,肘関節が本来対応していない横方向の動き(外反)が入っていきます.

 最も上腕が傾いたサイドスローで外反ストレスが最大になると考えがちですが,予想とは裏腹に上腕が外側に傾くほど肘を突き出すことが困難になるため,サイドスローでは外反ストレスは小さくなります.

 オーバースローでは肘の突き出しが容易になりますが,外反ストレスはかかりにくく,サイドスローでは,肘を突き出すことができれば外反ストレスは最大になりますが,実際は肘を突き出せないので外はストレスは小さくなります.

 スリークウォーターでは,肘の突き出しが可能で,前腕が後方に引っ張られるときに肘関節に横方向の動き(外反)も入るため,外反ストレスが大きくなります.

 つまり,トミー・ジョン手術を受けるリスクが大きい投法はスリークウォーターということになります.スリークウォーターには,オーバースローに近いスリークウォーター,サイドスローに近いスリークウォーターが含まれます.

※2 加速期で肩が固定される

 肩関節最大外旋位(以後MER)からリリースにかけて肩が固定すると,肩を中心とする上腕(半径)の回転運動により,前腕を後方に回転させる(肩関節を外旋させる)モーメントが生じます

 スリークウォーターのように上腕が外側に傾いた状態でこのモーメントが生じると,外反ストレスが働いて内側側副靱帯に負荷がかかります.

 詳しくは トミー・ジョン手術-内側側副靱帯損傷のメカニズムを解明-その をご覧ください.

肩関節最大外旋位(MER)から肩を固定して肘を突き出すと,前腕を後方に回転させるモーメントが生じる(上から見た場合)
※阿江通良・藤井範久(2002):スポーツバイオメカニクス20講,朝倉書店,p.129 図16.11を参考に作成        

 MER(捕手正対時)からリリースにかけて肩が移動する投手の場合,回転運動の中心が動いてしまうので,前腕を後方に回転させる(肩関節を外旋させる)モーメントが生じにくくなります.

 グレッグ・マダックス投手のように上体を倒して投げる投手では,回転運動の中心が移動するため,このモーメントが生じにくく,外反ストレスがかかりにくくなります.

 実際の投球では肩がまったく動かないということはなく,ダルビッシュ投手でさえもリリースでは少し前傾がみられます.

 肩を固定して投げる投手は,リリースで少し前傾があっても,リリース後に上体が起きて元のMER(捕手正対時)の肩の位置に戻るという特徴がみられます. 

※3 加速期での肘の突き出し

ダルビッシュ有投手 肩関節最大外旋位
引用元:清川栄治・水野雄仁・香田勲男・小宮山悟・野村弘樹 解説(2013):連続写真で徹底解析 プロ野球究極のテクニック【投球編】,ベースボールマガジン社,p.53
リリース直前

 肘の突き出しは,MER(捕手正対時)からリリース時まで上腕がどれだけ前方に倒れているかで判断します.

 肩が固定されると設定した場合,MERの上腕とリリース時の上腕との角度が90°に近ければ,肘の突き出しはかなり大きいといえます.

 ダルビッシュ投手の上腕の角度は,45°と90°の中間あたりになっているので,肘の突き出しは大きい方だといえます.

※4 ボールの切り方のタイプ

 肘の突き出しが行われると,下図のように前腕を後方に回転させる(肩関節を外旋させる)モーメントが生じます.

 加速期で外反ストレスが働くには,このモーメントが生じることが前提となります.

最大外旋位から肘を突き出すときに,前腕を後方に回転させる(肩関節を外旋させる)モーメントが生じる(横から)

 このモーメントは,肘を突き出す方向が水平に近いと大きくなり,肘を突き出す方向が下向きになるほど小さくなります

 つまり,前腕を後方に回転させる(肩関節を外旋させる)モーメントは,ボールを水平に切るタイプ4(水平)の腕の振りで最大になり,垂直にボールを切る要素が大きくなるほど小さくなります.

 トミー・ジョン手術を受けるリスクが大きい腕の振りのタイプを,タイプ4(水平),タイプ3(垂直<水平)と設定することができます.

※5 最高球速

 腕の振りが速いほど外反ストレスは大きくなるので,球速は内側側副靱帯を損傷するリスクを推測する上で重要な指標となりえます.

 平均球速でみる方が正確ですが,最高球速で代用しています.

※2021年まで
※ジェイミー・モイヤー投手は負傷による手術の可能性があるため除く
※メジャーリーグでの投球実績がない投手は除く
※ダグ・ブロケイルデータデータを確認できなかったため除く
※引用元:ウィキペディア
※2021年まで
※MLBでトミー・ジョン手術をうけた日本人投手は除く
※桑田真澄投手は負傷による手術のため除く
※引用元:ウィキペディア

 MLB,NPBともに,最高球速が速い投手がトミー・ジョン手術を受けている割合が大きいことがわかります.

※2021年まで
※引用元:ウィキペディア

 トミー・ジョン手術を受けた投手の最高球速は,MLBが169kph(マイケル・コペック),NPBが163kph(ロベルト・スアレス)で,最低球速は,MLBが145kph(ショーン・マーカム),NPBが137kph(三浦翔太),となっています.

 トミー・ジョン手術に関するデータについては,トミー・ジョン手術を受ける投手が急増-その原因とは? をご覧ください.

半信半疑でリストに載せた斎藤佑樹投手

 内側側副靱帯を損傷する可能性のある投手のリストを作成したのが2020年5月で,翌月の6月に西野勇士投手の内側側副靱帯損傷のニュースが流れました.

 斎藤佑樹投手は半信半疑でリストに載せましたが,2020年10月に内側側副靱帯を損傷しています.

西野勇士,斎藤佑樹投手の分析

  • 投法がオーバースローで,上腕が外側に傾く角度が小さいため,肘の突き出しが行われたとしても外反ストレスは大きく作用しない
  • 肘の突き出しがそこまで大きくない
  • 腕の振りがタイプ3(垂直<水平)なので,タイプ4(水平)ほど外反ストレスは大きくならない
  • 球速がものすごく速いわけではない

 両投手とも肩を固定する投げ方で,肘の突き出しが見られるため,外反ストレスがかかりやすい投げ方になっていることはわかります.

 次に,投法,腕の振りのタイプ,球速,投球回数(間接的な指標)という指標を用いて,外反ストレスの大きさを推測します.

 オーバースローではスリークウォーターのように上腕が外側に傾かないので,外反ストレスはかかりにくくなります.

 しかし,オーバースローといっても,上腕が完全に地面に対して垂直になるわけではないので,腕の振りのタイプ,球速,投球回数(間接的な指標)という指標によっては,内側側副靱帯を損傷する可能性も否定できません.

 腕の振りのタイプは,両投手ともタイプ3(垂直<水平)で,タイプ4(水平)ほど前腕を後方に回転させる(肩関節を外旋させる)モーメントは大きくなりません.

 両投手とも最速が150kph以上ですが,平均球速はそれほど速いとはいえません.

 以上の理由から西野勇士,斎藤佑樹投手は,可能性はあっても実際に内側側副靱帯を損傷することはないであろうというのが当時の見解でした.

山崎康晃投手の分析

 山崎康晃投手には肘の突き出しがみられますが,肩関節最大外旋角度が小さいことやオーバースローの上腕が垂直に近く外側に傾く角度が小さいことを考慮すると、外反ストレスはあまり大きくならないと考えられます.

 投球回数は間接的な指標ですが、リリーフは先発に比べ投球回数も少ないこともあり,内側側副靱帯損傷まで至らない可能性も否定できません.

スリークウォーターの投手(NPB)

表2 内側側副靱帯を損傷する可能性が大きいタイプA-1の腕の振りを行うスリークウォーターの投手 ※2020年5月作成したものを修正
※タイプA-1:MER(肩関節最大外旋位)から体幹を倒さず,回旋せず腕を振る
タイプ
A-1
の投手
投法
※1
加速期で
肩が固定
される
※2  
加速期で
の肘の突
き出し
※3
ボール
の切り

タイプ
※4
最高
球速
※5
内側側
副靱帯
の損傷
※6
成瀬善久2タイプ3
垂直<水平
1
菅野智之*2タイプ3
垂直<水平
2
山口俊2タイプ4
水平
2
野村祐輔2タイプ3
垂直<水平
1
野上亮磨2タイプ4
水平
1引退
美馬学2タイプ4
水平
2
辛島航2タイプ4
水平
1
青山浩二2タイプ3
垂直<水平
2引退
大瀬良大地*2タイプ4
水平
2
千賀滉大2タイプ4
水平
3
有原航平2タイプ4
水平
2
石川歩1,2タイプ3
垂直<水平
2
近藤一樹2タイプ4
水平
2
岩嵜翔2タイプ4
水平
2TJS
2022.9
佐藤由規 2タイプ4
水平
3
九里亜蓮2タイプ4
水平
2
大谷智久2タイプ4
水平
1引退
榎田大樹3,2タイプ4
水平
2引退
藤岡貴裕*1,2タイプ3
垂直<水平
2引退
益田直也3,2タイプ4
水平
2
三嶋一輝2タイプ3
垂直<水平
2
松井裕樹1,2タイプ4
水平
2
中崎翔太2タイプ4
水平
2
加藤貴之2タイプ3
垂直<水平
2
増田達至2タイプ3
垂直<水平
2
原樹里2タイプ4
水平
2
小笠原慎之介タイプ3
垂直<水平
2
吉田一将2タイプ3
垂直<水平
2
鍵谷陽平*1,2タイプ3
垂直<水平
2
砂田毅樹2タイプ3
垂直<水平
1
杉浦稔大*2タイプ4
水平
2
有吉優樹2タイプ3
垂直<水平
1
公文克彦2タイプ3
垂直<水平
2
上茶谷大河2タイプ4
水平
2
藤平尚真2タイプ4
水平
2
松本祐樹2タイプ4
水平
2
森原康平2タイプ4
水平
2
佐々木千隼3,2タイプ4
水平
2
野田昇吾3,2タイプ3
垂直<水平
1引退
東條大樹3,2タイプ3
垂直<水平
1
大下佑馬2タイプ3
垂直<水平
2
石崎剛3,2タイプ4
水平
2
赤間謙2タイプ3
垂直<水平
1引退
小島和哉2タイプ3
垂直<水平
1
相内誠*2タイプ3
垂直<水平
1引退
松本直晃2タイプ3
垂直<水平
2
田村伊知郎1,2タイプ3
垂直<水平
2
笠井崇正2タイプ4
水平
2引退
齋藤俊介2タイプ4
水平
2引退
東妻勇輔2タイプ4
水平
2
※内側側副靭帯損傷歴の有無にかかわらず,TJS歴のない投手を対象とする.
※YouTubeの動画でボールの握りからストレートと推定できる投球動作について※1~6を確認.動
画の撮影時期や数にかかわらず肘の突き出しが認められるものが一つでも確認できれば,該当する動
画の投球動作の分析をもとに掲載.確認できる動作が複数あるときは総合的に判断する場合がある.
投球フォームの変更は考慮しない.投球動作の分析は筆者個人の主観による.
※リリース後,体幹を倒す場合でもMERからリリースするまでに肩が固定されていれば,タイプA
1とみなす.体幹が倒される程度がどのくらいであれば肩が固定されているとみなされるかについて
は,筆者の判断による.
※側面からの動画で肘の突き出しを確認.動画を撮影する角度により肘の突き出しを判断することが
困難になる側面がある.肘の突き出しが行われても角度が前方寄りであると上腕がそれほど前方に倒
れていないようにみえ,肘の突き出しが行われていなくても角度が後方寄り,または上方寄りである
と上腕が前方に倒れているようにみえる.筆者個人の主観により肘の突き出しが推定される投手を掲
載.

※1 1:オーバースロー,2:スリークウォーター,3:サイドスロー
   1,2:オーバースローに近いスリークウォーター,3,2:サイドスローに近いスリークウォ
ーター
※2 タイプA-1 の投手投手は,肩が固定される
※3 肘の突き出しの程度:○=90°に近い,△=45°前後,×=0°に近い(筆者の目測による)
   MERの上腕とリリース時の上腕との角度(前腕がMERからどのくらい前方に倒されている
か)から、肘の突き出しの大きさを推定する.MERの静止画像が確認できない場合は,上腕
   は地面に垂直であるとする.リリース時の静止画像が確認できない場合は,前後の静止画像か
   ら上腕の前傾を推定する
※4 タイプ3(垂直<水平),タイプ4(水平)が対象となる
※5 平均球速のデータがないため,最高球速で代用
   ウィキペディアから引用.確認できない場合は,インターネット検索の情報をもとに記載.
   1:140kph~,2:150kph~,3:160kph~
※6 ○=内側側副靱帯の損傷あり,損傷の時期を記載
   ウィキペディアから引用
※内側側副靭帯損傷歴の有無にかかわらず,TJS歴のない投手を対象とする
※YouTubeの動画でボールの握りからストレートと推定できる投球動作について※1~4を確認
 動画の撮影時期や数にかかわらず肘の突き出しが認められるものが一つでも確認できれば,該当す
 る動画の投球動作の分析をもとに掲載
 確認できる動作が複数あるときは総合的に判断する
 投球フォームの変更は考慮しない
 投球動作の分析は筆者個人の主観による
※MER:Maximal shoulder external rotation 肩関節最大外旋位
*:過去に内側側副靱帯損傷歴のある投手
※TJS:トミー・ジョン手術(Tommy John Surgery)
※岩嵜翔投手は2022.9にTJSを受けていますが,内側側副靱帯を損傷したのかは不明

成瀬善久の分析

東京ヤクルトスワローズ 成瀬善久 投球フォーム(スローモーション)

 ボールの握りを見ると,一投目はSFF(スプリットフィンガー・ファストボール)のようですが,SFFは4シームと同じ腕の振りとなるので,分析は可能です.

リリース時
MER(捕手正対時)

 成瀬投手はMERからリリースにかけて肘の突き出しがみられます.突き出しの程度はそこまで大きくありません.また,リリース時は少し前傾していますが,リリース後は体が起きているので,肩を固定して投げていることがわかります.

 ここまで成瀬投手が肩を固定して肘を突き出していることが確認できます.

  • 投法はスリークウォーターで,外反ストレスがかかりやすい
  • タイプ3(垂直<水平)の腕の振りである
  • 球速が遅い

 成瀬投手はNPBの通算投球回数が1567.2と多い方ですが,

  • 肘の突き出しがそこまで大きくない
  • タイプ3(垂直<水平)の腕の振りで,水平にボールを切る要素がタイプ4(水平)ほど大きくない
  • 球速が遅い

といった理由から内側側副靱帯を損傷するまで至っていないという見方もできます.

リリース後,前腕がグラブ側の大腿部に達しているので,腕の振りはタイプ3(垂直<水平)に分類されるが,上体が起きて
いるため,水平にボールを切る要素が大きくなっているようにはみえない.

上茶谷大河投手の分析

 上茶谷大河投手については,トミー・ジョン手術-内側側副靱帯損傷のメカニズムを解明-その1 ですでに解説済みですが,1点気になるところがあります.

 それは,上茶谷大河投手のリリースの肘の位置が下がり気味になっているところです.

捕手正対時からリリース時にかけて,上腕がかなり倒され,肘が突き出されていることがわかる.

 リリースの時点でこれだけ肘が下がるということは,肘を突き出す方向が下向きになっているということなので,前腕を後方に回転させる(肩関節を外旋させる)モーメントは小さくなると考えられます.

水平にボールを切る要素が大きいタイプ4(水平)の腕の振りを行う上茶谷大河投手
リリース後に前腕がベルトあたりまで入っている

 しかし,上茶谷投手はリリース後に前腕がベルトあたりまで入るので,水平にボールを切る要素が大きいタイプ4(水平)の腕の振りをしていることがわかります.

 ですから,リリース時に肘が下がり気味になっているのは,それだけ肘の突き出しが大きいという解釈になります.リストの中で最も内側側副靱帯を損傷する可能性が大きい投手といえます.

ドラフト会議で指名された投手

表3 内側側副靱帯を損傷する可能性が大きい2019年プロ野球ドラフト会議で指名されたタイプA-1の腕の振りを行う投手 
※2020年5月作成したものを修正
※タイプA-1:MER(肩関節最大外旋位)から体幹を倒さず,回旋せず腕を振る
タイプ
A-1
の投手
投法
※1
加速期で
肩が固定
される
※2  
加速期で
の肘の突
き出し
※3
ボール
の切り

タイプ
※4
最高
球速
※5
内側側
副靱帯
の損傷
※6
伊勢大夢3,2タイプ3
垂直<水平
2
岡野祐一郎2タイプ3
垂直<水平
1
奥川恭伸2タイプ4
水平
2
2022.10
浜屋将太2タイプ3
垂直<水平
1
吉田大喜2タイプ4
水平
2
※内側側副靭帯損傷歴の有無にかかわらず,TJS歴のない投手を対象とする.
※YouTubeの動画でボールの握りからストレートと推定できる投球動作について※1~6を確認.動
画の撮影時期や数にかかわらず肘の突き出しが認められるものが一つでも確認できれば,該当する動
画の投球動作の分析をもとに掲載.確認できる動作が複数あるときは総合的に判断する場合がある.
投球フォームの変更は考慮しない.投球動作の分析は筆者個人の主観による.
※リリース後,体幹を倒す場合でもMERからリリースするまでに肩が固定されていれば,タイプA
1とみなす.体幹が倒される程度がどのくらいであれば肩が固定されているとみなされるかについて
は,筆者の判断による.
※側面からの動画で肘の突き出しを確認.動画を撮影する角度により肘の突き出しを判断することが
困難になる側面がある.肘の突き出しが行われても角度が前方寄りであると上腕がそれほど前方に倒
れていないようにみえ,肘の突き出しが行われていなくても角度が後方寄り,または上方寄りである
と上腕が前方に倒れているようにみえる.筆者個人の主観により肘の突き出しが推定される投手を掲
載.

※1 1:オーバースロー,2:スリークウォーター,3:サイドスロー
   1,2:オーバースローに近いスリークウォーター,3,2:サイドスローに近いスリークウォ
ーター
※2 タイプA-1 の投手投手は,肩が固定される
※3 肘の突き出しの程度:○=90°に近い,△=45°前後,×=0°に近い(筆者の目測による)
   MERの上腕とリリース時の上腕との角度(前腕がMERからどのくらい前方に倒されている
か)から、肘の突き出しの大きさを推定する.MERの静止画像が確認できない場合は,上腕
   は地面に垂直であるとする.リリース時の静止画像が確認できない場合は,前後の静止画像か
   ら上腕の前傾を推定する
※4 タイプ3(垂直<水平),タイプ4(水平)が対象となる
※5 平均球速のデータがないため,最高球速で代用
   ウィキペディアから引用.確認できない場合は,インターネット検索の情報をもとに記載.
   1:140kph~,2:150kph~,3:160kph~
※6 ○=内側側副靱帯の損傷あり,損傷の時期を記載
   ウィキペディアから引用
※内側側副靭帯損傷歴の有無にかかわらず,TJS歴のない投手を対象とする
※YouTubeの動画でボールの握りからストレートと推定できる投球動作について※1~4を確認
 動画の撮影時期や数にかかわらず肘の突き出しが認められるものが一つでも確認できれば,該当す
 る動画の投球動作の分析をもとに掲載
 確認できる動作が複数あるときは総合的に判断する
 投球フォームの変更は考慮しない
 投球動作の分析は筆者個人の主観による
※MER:Maximal shoulder external rotation 肩関節最大外旋位
*:過去に内側側副靱帯損傷歴のある投手

奥川恭伸投手の分析

【ドラフト2019 ヤクルト1位】奥川恭伸の球質分析&投球シーン&投球フォーム

 動画を観ると,奥川投手はリリース後もあまり上体が前傾せず,肩を固定して投げていることがわかります.肘の突き出しがあった場合,肩が固定されるほど,外反ストレスは大きくなります.

MER(捕手正対時)
リリース時

 奥川投手には肘の突き出しが明らかに見られます.MER(捕手正対時)とリリース時との上腕の角度が45°を超えているので,肘の突き出しは大きい方といえます.

  • 投法はスリークウォーターである
  • タイプ4(水平)の腕の振りである
  • 球速が速い

 奥川投手は肩を固定して肘の突き出しを行っており,上記の条件も満たしているため,内側側副靱帯を損傷する可能性が大きいといえます.

タイプ4(水平)の腕の振りを行う奥川投手 リリース後の前腕が腰のあたりまで入っている
【ヤクルト・奥川恭伸】自己最多103球7回1失点の熱投で7勝目!!

 奥川投手のリリース後,前腕がどこまで達しているかを確認してください.タイプ4(水平)の腕の振りをする投手は,前腕がベルトあたりまで入ります.トミー・ジョン手術を受ける投手の大半が,このタイプ4(水平)の投手です.

松井秀喜vs石川雅規 (2002年)

 石川投手のリリース後,前腕がどこまで達しているかを確認してください.タイプ1(垂直)の腕の振りをする投手は,前腕が体の前で止まります.タイプ1(垂直)の投手がトミー・ジョン手術を受けることは,まずありません.

佐々木朗希投手の分析

 ドラフト1位の佐々木朗希投手については,動画を何十回観ても判断できず,リストには載せていません.動作の解釈が非常に難しく,内側側副靱帯を損傷する可能性があるともないともとれます.今後,別に記事を書きたいと思います.

奥川恭伸投手の報道について

 佐々木朗希投手の記事まで書いて,公開したのが10月31日の0時39分.その4時間21分後に奥側恭伸投手のニュースが配信されました.

【ヤクルト】奥川恭伸が右ひじ手術を検討…トミージョンなら来季中の復帰絶望的か
10/31(月) 5:00配信

ヤクルトの奥川恭伸投手(21)が今オフにも、右肘内側側副靱帯(じんたい)再建術(通称トミー・ジョン手術)を検討していることが30日、分かった。

 昨季、チームトップタイの9勝を挙げた奥川は、本拠・神宮の開幕戦となる3月29日の巨人戦で今季初登板。先発で最速149キロをマークしたが、4回1失点、53球で降板し、翌30日に出場選手登録を抹消されていた。

 球団は「上半身のコンディション不良」と発表したが、実際は右肘の状態が思わしくなかったとみられる。以降、1軍昇格はなく、ファーム調整。ノースロー期間を経てキャッチボールを再開、一時はブルペン投球を行うまで回復傾向にあったが、実戦で投げるメドは立っていなかった。7月下旬には新型コロナに感染して療養するなど、コンディションを整えられなかった。

 20年の新人合同自主トレでも軽い炎症を起こすなど、入団当初から右肘の状態には気を使ってきた。トミー・ジョン手術からの復帰には、一般的に1年~1年半の期間を要する。ここまでは回復を待って保存療法を続けてきたが、手術に踏み切れば、4年目を迎える来季中の復帰は絶望的となる。次期エース候補として期待を寄せる球団も、本人も、極めて慎重に話し合いを重ねてきており、最終的には本人の判断にゆだねられる見込みだ。

報知新聞社

引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/e3e1a4a2db6392c20f123aab251ad2e1aea79e15

 帰宅して奥川投手のニュースを知ったのですが,このブログを読んだ方は奥川投手のニュースの後に,後出しで記事を載せたように思われているかもしれません.

 このブログ記事では,2020年5月に作成した「内側側副靱帯を損傷する可能性が大きい投手」のリスト(表)から,ランダムに投手をピックアップして,内側側副靱帯を損傷するメカニズムについて解説しています.

 奥川投手はMER(捕手正対時)からリリース,リリース後にかけて上体があまり前傾しません.奥川投手のように肩を固定する投手は,肘を突き出したときに外反ストレスが大きくなるので,内側側副靱帯を損傷するリスクが大きくなります.

 奥川投手は予測しやすい投手の部類に入りますが,投球動作は千差万別で一筋縄ではいかない場合もあります.迷いに迷って内側側副靱帯の損傷はないと判断した投手がトミー・ジョン手術を受けたというケースもあります.今後,色々なケースについて,解説したいと思います.

4シーム平均球速95mph以上の投手(MLB)

内側側副靱帯を損傷する可能性が大きい2019年MLBで平均球速95mph以上(4シーム)を記録したタイプA-1の腕の振りを行う投手
※2020年5月作成したものを修正
※タイプA-1:MER(肩関節最大外旋位)から体幹を倒さず,回旋せず腕を振る
タイプ
A-1
の投手
投法
※1
加速期で
肩が固定
される
※2  
加速期で
の肘の突
き出し
※3
ボール
の切り

タイプ
※4
平均
球速
4シーム
※5
内側側
副靱帯
の損傷
※6
アロルディス・
チャップマン
2タイプ3
垂直<水平
98.0
ライン・
スタネック
2タイプ4
水平
97.6
ジョー・
ケリー
2タイプ4
水平
97.5
ルー・
トリビーノ
2タイプ4
水平
97.4
エドウィン・
ディアス
3,2タイプ4
水平
97.4
ハンセル・
ロブレス
2タイプ4
水平
97.2
マイケル・
ローレンゼン
2タイプ4
水平
97.2
ジョシュ・
ジェームズ
2タイプ4
水平
97.1
ゲリット・
コール
2タイプ4
水平
97.1
ホセ・
ルクラーク
2タイプ4
水平
96.8
2021
ダン・
アルタビラ
3,2タイプ4
水平
96.6
ジェフ・
ブリガム
2タイプ4
水平
96.6
リアム・
ヘンドリックス
1,2タイプ4
水平
96.5
クレイグ・
キンブレル
3,2タイプ3
垂直<水平
96.2
グレゴリー・
ソト
2タイプ4
水平
96.0
ジョン・
グレイ
2タイプ4
水平
96.0
ジョシュ・
ストゥ-モント
2タイプ4
水平
95.9
クリス・
マーティン
2タイプ3
垂直<水平
95.9
ジェウリス・
ファミリア
2タイプ4
水平
95.9
アミール・
ギャレット
3,2タイプ4
水平
95.8
ペドロ・
バエズ
1タイプ4
水平
95.8
リード・
ギャレット
2タイプ3
垂直<水平
95.7
ジョー・
ヒメネス
3,2タイプ4
水平
95.1
※内側側副靭帯損傷歴の有無にかかわらず,TJS歴のない投手を対象とする.
※YouTubeの動画でボールの握りからストレートと推定できる投球動作について※1~6を確認.動
画の撮影時期や数にかかわらず肘の突き出しが認められるものが一つでも確認できれば,該当する動
画の投球動作の分析をもとに掲載.確認できる動作が複数あるときは総合的に判断する場合がある.
投球フォームの変更は考慮しない.投球動作の分析は筆者個人の主観による.
※リリース後,体幹を倒す場合でもMERからリリースするまでに肩が固定されていれば,タイプA
1とみなす.体幹が倒される程度がどのくらいであれば肩が固定されているとみなされるかについて
は,筆者の判断による.
※側面からの動画で肘の突き出しを確認.動画を撮影する角度により肘の突き出しを判断することが
困難になる側面がある.肘の突き出しが行われても角度が前方寄りであると上腕がそれほど前方に倒
れていないようにみえ,肘の突き出しが行われていなくても角度が後方寄り,または上方寄りである
と上腕が前方に倒れているようにみえる.筆者個人の主観により肘の突き出しが推定される投手を掲
載.

※1 1:オーバースロー,2:スリークウォーター,3:サイドスロー
   1,2:オーバースローに近いスリークウォーター,3,2:サイドスローに近いスリークウォ
ーター
※2 タイプA-1 の投手投手は,肩が固定される
※3 肘の突き出しの程度:○=90°に近い,△=45°前後,×=0°に近い(筆者の目測による)
   MERの上腕とリリース時の上腕との角度(前腕がMERからどのくらい前方に倒されている
か)から、肘の突き出しの大きさを推定する.MERの静止画像が確認できない場合は,上腕
   は地面に垂直であるとする.リリース時の静止画像が確認できない場合は,前後の静止画像か
   ら上腕の前傾を推定する
※4 タイプ3(垂直<水平),タイプ4(水平)が対象となる
※5 平均球速のデータがないため,最高球速で代用
   ウィキペディアから引用.確認できない場合は,インターネット検索の情報をもとに記載.
   1:140kph~,2:150kph~,3:160kph~
※6 ○=内側側副靱帯の損傷あり,損傷の時期を記載
   ウィキペディアから引用
※内側側副靭帯損傷歴の有無にかかわらず,TJS歴のない投手を対象とする
※YouTubeの動画でボールの握りからストレートと推定できる投球動作について※1~4を確認
 動画の撮影時期や数にかかわらず肘の突き出しが認められるものが一つでも確認できれば,該当す
 る動画の投球動作の分析をもとに掲載
 確認できる動作が複数あるときは総合的に判断する
 投球フォームの変更は考慮しない
 投球動作の分析は筆者個人の主観による
※MER:Maximal shoulder external rotation 肩関節最大外旋位
*:過去に内側側副靱帯損傷歴のある投手

 肘の突き出しは側面からの動画を観て確認しますが,まずMLBの投手の動画が見つかりません.NPBに比べて圧倒的に側面からの動画が少なく,一部の投手しか投球動作の確認がとれていません.

 MLBの投手の側面からの投球動画はほぼ見つからないため,マイナーリーグなどの古い動画で分析を行いました.画質が悪くコマ数が少ないことからスロー再生でも判断が難しい作業となったことをあらかじめお断りしておきます.

 また,リリース時に胴体と上腕が一直線になる投手も多くみられましたが,タイプA-2(MERから体幹を倒さず,回旋する)との見極めが困難であるため,すべて対象外として掲載していません.

アロルディス・チャップマン投手の分析

肩を固定して,肘を突き出しているか?

Aroldis Chapman 105 mph Fastball Slow Motion Pitching Mechanics – Baseball Analysis Reds Cuba

 まず,上体を倒さずに投げているかをチェックします.

 動画を観ると,MERからリリースにかけて上体はそれほど倒れていません.リリース後も上体の角度は余り変わっていないので,上体を倒さずに投げていると判断できます.

リリース時
MER(捕手正対時)

 次に,MERからリリースにかけて体幹が回旋していないかをチェックします.

 画像を見ると,肘の突き出しの際に体幹は回旋していない(肩は回っていない)ので,捕手に正対したまま肘を突き出していると判断できます.

 上体を倒さず,体幹を回旋していないので,肩を固定して投げていることが確認できます.

 次に,肘の突き出しが行われているかをチェックします.

 画像を見ると,MERからリリースにかけて上腕がかなり倒されていることがわかります.肘の突き出しはかなり大きいといえます.

 ここまでで,

  • 肩を固定して投げる
  • 肘を突き出して投げる

 という内側側副靱帯を損傷する投手の条件の2つを満たしていることが確認できます.

肘を水平に突き出しているか?

 次に,肘を突き出す方向が水平になっているかをチェックします.

 この動画では,チャップマン投手はリリース後,前腕が腰のあたりまで入っているように見えますが,他の動画も含めて判断すると,タイプ3(垂直<水平)の腕の振りに該当します

 タイプ4(水平)に比べると,水平にボールを切る要素が小さいので,外反ストレスが軽減される点を考慮する必要があります.

 リリース後,背番号が見えるくらい体幹を回旋する(肩を回す)ので,腕が体から離れるのが特徴です.

 チャップマン投手は,スリークウォーターで球速も速いので,残りの3つの条件も満たしていることになります.

  • 投法がスリークウォーターであること(スリークウォーターに近いオーバースローを含む)
  • タイプ4(水平),タイプ3(垂直<水平)の腕の振りであること
  • 球速が速いこと

内側側副靱帯損傷を発症する可能性

 チャップマン投手は内側側副靱帯を損傷する5つの条件を満たしていますが,条件を満たしているからといって必ず発症に至るとは限りません

 チャップマン投手の場合,腕の振りがタイプ3(垂直<水平)で水平にボールを切る要素が少し小さくなることが判断を難しくさせています.

 1回の投球動作でどのくらいの外反ストレスがかかるのかを推測しますが,

  • 腕の振りがタイプ3(垂直<水平)だと,球速が速くても外反ストレスは小さくなる
  • 腕の振りがタイプ3(垂直<水平)でも,球速が速いから外反ストレスは大きくなる

 という考え方があります.

 内側側副靱帯の損傷は,靱帯の小さな断裂の繰り返しにより発症するので,

  • 1回の投球動作での靱帯の断裂の程度が小さい場合は,投球回数が多くないと発症まで至らない
  • 1回の投球動作での靱帯の断裂の程度が大きい場合は,投球回数が少なくても発症に至る

 のどちらかのケースが考えられます.

 チャップマン投手はリリーフで短いイニングしか投げないので,2022年度シーズンまでの投球回数は640と先発投手に比べると少ないといえますが,この投球回数もどこまでが短くて,どこからが長いのかを判断することは困難です.

投球回数の判断の仕方によっては,

  • 1回の投球動作での靱帯の断裂の程度が大きいから,少ない投球回でも発症する
  • 1回の投球動作での靱帯の断裂の程度が大きくても,投球回が少なければ発症しない
  • 1回の投球動作での靱帯の断裂の程度が小さいから,少ない投球回では発症しない
  • 1回の投球動作での靱帯の断裂の程度が小さくても,投球回が多ければ発症する

 ということが考えられます.

 チャップマン投手には明らかな肘の突き出しが認められ,肘を突き出して100mphの速球を投げれば,程度の差こそあれ当然,内側側副靱帯は損傷すると考えられます.

 しかし,実際に発症するかどうかは,1回の投球動作での内側側副靱帯の断裂の程度✕投球回数によって決まるので,断言できません.

 内側側副靱帯を損傷する投球回数まで達しない場合は,トミー・ジョン手術を受けることなく引退まで投げ続けることができますし,損傷する投球回数が短い投手の場合は,現役中に発症するということも考えられます.

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