ハーラートップタイの6勝目を挙げたダルビッシュ投手の好調の原因について,考えてみます。
ダルビッシュ ハーラートップタイ6勝目!「投げている球がシャープ、真っ直ぐがいい感じ」
カブスのダルビッシュ有投手(34)が29日(日本時間30日)、敵地・シンシナティでのレッズとのダブルヘッダー1試合目(7回制)に今季7度目の先発登板。走者を出しながらも要所を締めて6回104球を投げ7安打無失点で、ハーラートップタイの6勝目を挙げた。初登板での黒星後、6戦6勝とし、防御率は1・47となった。チームは3―0で勝ち、連敗を3で止めた。試合後、ダルビッシュは、走者を背負いながらも無失点に抑えたことに「何も変えていない。スカウティングレポートを頭に覚えていて、次の打者はどうすれば良いのか、何を次に投げるか、それについて考えている」と言い、「今年は自分の投げている球がシャープ、真っ直ぐがいい感じできている」と話した。
引用元:https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2020/08/30/kiji/20200830s
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以下の表は,2019年と2020年の球種の割合と被打率を比較したものです.2020年の数字は ダルビッシュ有投手が6勝目を挙げた8/30までのデータになります.2019年の成績は,6勝8敗,防御率3.98.2020年8/30までの成績は,6勝1敗,防御率1.47です.
球種 | 2019 割合% | 2019 被打率 | 2020 割合% | 2020 被打率 |
4シーム | 26.8 | .272 | 18.8 | .227 |
2シーム | 11.7 | .255 | ——- | ——- |
カッター | 36.5 | .198 | 49.4 | .240 |
スライダー | 13.8 | .232 | 9.0 | .087 |
カーブ | 4.8 | .200 | 4.2 | .000 |
ナックルカーブ | 2.1 | .083 | 6.7 | .267 |
シンカー | ——- | ——- | 9.3 | .267 |
SFF | 3.8 | .111 | 2.5 | .286 |
チェンジアップ | 0.4 | .000 | ——- | ——- |
スローボール | 0.1 | .000 | ——- | ——- |
引用元:https://baseballsavant.mlb.com/statcast_search
まず,ダルビッシュ投手はカッターとスライダーの投手であることがわかります.全投球の半分以上 (2019年は50.3%,2020年は58.4%) を占めています.2019年と比較して,①4シーム の被打率が下がっている.②2シームを投げていない.③スライダーの被打率がかなり下がっている.④シンカー,ナックルカーブの割合が高い.ということが挙げられます.①については,平均球速が94.1 mphから95.9 mphにアップしていることが関係していると思われます.②は2シームを投げる代わりに2019年に被打率の低かったカッターを投げて,被打率を下げようとする意図が感じられます.③でスライダーの被打率が激減している理由,④でシンカーの割合が増えている理由についてはわかりません.
おそらく,ダルビッシュ投手は,2019年の被打率からもわかるように,カッターとスライダーは打たれないという自信をもっています.被打率の低いカッター中心の投球スタイルにシフトするために,2シームを投げず,4シームとスライダーの球数を減らして,カッターの球数を増やしていると考えられます.今までのところは,球数を減らしたスライダーのほうがカッターよりも被打率が低いという皮肉な結果になっていますが,カッターとスライダーで一つの系として考えれば,被打率を下げることに成功しているといえます.4シームの球威が増したことで4シームの被打率が下がり,同時にカッターとスライダーが活きるように なったことが,今季の好調の原因と考えられます.
球種の判断はベースボール・サバントのデータに基づきます.カッターとスライダーの違いについては,下の動画を確認ください.曲がりが小さいのがカッター, 曲がりが大きいのがスライダーという見方もできるかもしれません.