NPBより劣るMLB7年間の成績
2020年8月8日 投稿
NPB7年間(2005-2011)とMLB7年間(2012-2019)との比較
NPB7年間(2005-2011)とMLB7年間(2012-2019)で登板数がほぼ同じ(167と170)になっているため,両者を比較してみます.
ダルビッシュ有 投手成績 NPB7年間(2005-2011),MLB7年間(2012-2019) | ||||||||||
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所属 | 登板 | 先発 | 完投 | 完封 | 無四球 | 勝利 | 敗戦 | セーブ | ホールド | 勝率 |
NPB 7年 | 167 | 164 | 55 | 18 | 9 | 93 | 38 | 0 | 1 | .710 |
MLB 7年 | 170 | 170 | 2 | 1 | 1 | 63 | 53 | 0 | 0 | .543 |
引用元:ウィキペディア |
ダルビッシュ有 投手成績 NPB7年間(2005-2011),MLB7年間(2012-2019) | |||||||||
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所属 | 打者 | 投球回 | 被安打 | 被本塁打 | 与四球 | 与死球 | 奪三振 | 防御率 | WHIP |
NPB 7年 | 4,982 | 1,268.1 | 916 | 58 | 333 | 50 | 1,250 | 1.99 | 0.98 |
MLB 7年 | 4,355 | 1,051.0 | 850 | 132 | 384 | 44 | 1,299 | 3.57 | 1.17 |
WHIP=Walks plus Hits per Inning Pitched 投球回あたり与四球・被安打数合計 WHIP = (与四球 + 被安打) ÷ 投球回 |
一番の違いは,登板数がほぼ同じ(167と170)であるにもかかわらず,完投(55→2)と完封(18→1)の数が大幅に減少していることです.MLB3年目の2014年に完投2,完封1を記録したのが,そのまま通算の記録になっています.因みにMLBの2019年の最多の完投数は3,完封数は2です.分業制のため少なくなるのは仕方ないのですが,実力のある投手が最後まで投げられることを考えると,一流投手として活躍しているとはいえません.
また,対戦打者が少なくなっているにもかかわらず,被本塁打(58→132)と奪三振(1,250→1,299)は増えています.体格によるパワーの違いはありますが,MLBの打者は打撃動作自体が飛距離を生み出す動作になっている側面があります.奪三振が多いのは,当てに来ずに振り切るバッターが多いことを示しています.日本人投手が総じて一流といえるまでの成績を残せていないのは,MLBの投手と比較して投球動作自体がパフォーマンスを発揮できるものになっていないことが原因であると考えられます.
球種割合と被打率(2019・2020)
2020年9月1日
2020年はダルビッシュ投手がMLBに移籍してから8年目のシーズンとなります.これまでの7年間は特に目立った活躍はできていませんが,今シーズンは好調を持続しています.ハーラートップタイの6勝目を挙げたダルビッシュ投手の好調の原因について,考えてみます。
ダルビッシュ ハーラートップタイ6勝目!「投げている球がシャープ、真っ直ぐがいい感じ」
カブスのダルビッシュ有投手(34)が29日(日本時間30日)、敵地・シンシナティでのレッズとのダブルヘッダー1試合目(7回制)に今季7度目の先発登板。走者を出しながらも要所を締めて6回104球を投げ7安打無失点で、ハーラートップタイの6勝目を挙げた。初登板での黒星後、6戦6勝とし、防御率は1・47となった。チームは3―0で勝ち、連敗を3で止めた。試合後、ダルビッシュは、走者を背負いながらも無失点に抑えたことに「何も変えていない。スカウティングレポートを頭に覚えていて、次の打者はどうすれば良いのか、何を次に投げるか、それについて考えている」と言い、「今年は自分の投げている球がシャープ、真っ直ぐがいい感じできている」と話した。
引用元:https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2020/08/30/kiji/20200830s
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以下の表は,2019年と2020年の球種の割合と被打率を比較したものです.2020年の数字は ダルビッシュ有投手が6勝目を挙げた8/30までのデータになります.2019年の成績は,6勝8敗,防御率3.98.2020年8/30までの成績は,6勝1敗,防御率1.47です.
ダルビッシュ有投手 球種割合と被打率 2019-2020 | ||||
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球種 | 2019 | 2020 | ||
割合 % | 被打率 | 割合 % | 被打率 | |
4シーム | 26.8 | .272 | 18.8 | .227 |
2シーム | 11.7 | .255 | * | * |
カッター | 36.5 | .198 | 49.4 | .240 |
スライダー | 13.8 | .232 | 9.0 | .087 |
カーブ | 4.8 | .200 | 4.2 | .000 |
ナックルカーブ | 2.1 | .083 | 6.7 | .267 |
シンカー | * | * | 9.3 | .267 |
SFF | 3.8 | .111 | 2.5 | .286 |
チェンジアップ | 0.4 | .000 | * | * |
スローボール | 0.1 | .000 | * | * |
※2020年の数字は ダルビッシュ有投手が6勝目を挙げた 8/30までのデータ *は投球なし 引用元:https://baseballsavant.mlb.com/statcast_search |
まず,ダルビッシュ投手はカッターとスライダーの投手であることがわかります.全投球の半分以上 (2019年は50.3%,2020年は58.4%) を占めています.
2020年は2019年と比較して,①4シーム の被打率が下がっている.②2シームを投げていない.③スライダーの被打率がかなり下がっている.④シンカー,ナックルカーブの割合が高い.ということが挙げられます.
①については,平均球速が94.1 mphから95.9 mphにアップしていることが関係していると思われます.②は2シームを投げる代わりに2019年に被打率の低かったカッターを投げて,被打率を下げようとする意図が感じられます.③でスライダーの被打率が激減している理由,④でシンカーの割合が増えている理由についてはわかりません.
おそらく,ダルビッシュ投手は,2019年の被打率からもわかるように,カッターとスライダーは打たれないという自信をもっています.被打率の低いカッター中心の投球スタイルにシフトするために,2シームを投げず,4シームとスライダーの球数を減らして,カッターの球数を増やしていると考えられます.
今までのところは,球数を減らしたスライダーのほうがカッターよりも被打率が低いという皮肉な結果になっていますが,カッターとスライダーで一つの系として考えれば,被打率を下げることに成功しているといえます.
4シームの球威が増したことで4シームの被打率が下がり,同時にカッターとスライダーが活きるように なったことが,今季の好調の原因と考えられます.
球種の判断はベースボール・サバントのデータに基づきます.カッターとスライダーの違いについては,下の動画を確認ください.曲がりが小さいのがカッター, 曲がりが大きいのがスライダーという見方もできるかもしれません.
好成績の要因は対左バッターを抑えていること
2020年9月9日 投稿
好成績の要因は対左バッターを抑えていること
ダルビッシュ有、好成績の要因は対左バッターとの成績
シカゴ・カブスのダルビッシュ有は、今季メジャー前半戦で最も大きなインパクトを残した選手の1人であると断定しても、恐らくそんなに多くの反対意見は出ないだろう。昨季後半に見せた圧倒的なパフォーマンスを今季前半もそっくりそのまま再現させた右腕は、目下6連勝とマウンドに上がるごとに、支配的な投球でチームを勝利に導いている。
そんな中、地元紙『シカゴ・トレビューン』は現地31日付で電子版に掲載した、レッズとのシリーズを振り返る記事の中で、同シリーズの重要な論点の1つとして、ダルビッシュの左打者に対する成績をピックアップした。
記事では「ユウ・ダルビッシュは左打者のパワーを封じている」と見出しをつけ、その中で「今季ダルビッシュは左打者に対し、96打席で打率.208と、そのダメージを限定しており、左打者に許した長打は4本のみであり、長打率も.281に抑えている」。
その上で、「昨季、左打者が彼を相手に打率.243、長打率.465としたことを考えると、これはドラマチックな改善である」とした。
さらに記事では、「昨季ダルビッシュが左打者に許した25本の長打のうち、19本が本塁打だった」と前置きした上で、「今季、彼が左打者に許した本塁打は、8月13日にミルウォーキー・ブルワーズのジャスティン・スモークが打った1本のみである」と、左打者に対する被本塁打も劇的に減少したことについて触れた。
引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/63fb135acffa9fb42ed8b5fc6ae1b4667e72b8a1
対左打者 球種別被打率-2019年と2020年との比較
記事によると, 左打者のパワーを封じていることが今季の好調の原因であるとしています.2019年と2020年で左打者に対する球種と被打率がどのように変化しているのかみてみます.2020年のデータは9/5までのものです.
ダルビッシュ有投手 球種割合と被打率 2019-2020 対左打者 | ||||
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球種 | 2019 | 2020 | ||
割合 % | 被打率 | 割合 % | 被打率 | |
4シーム | 42.0 | .248 | 46.0 | .245 |
2シーム | 19.2 | .350 | 8.4 | .308 |
カッター | 13.3 | .296 | 16.1 | .154 |
スライダー | 10.0 | .250 | * | * |
カーブ | 7.0 | .136 | 4.7 | .000 |
ナックルカーブ | 4.9 | .105 | 5.2 | .111 |
シンカー | 2.7 | .095 | 9.5 | .182 |
SFF | 0.7 | .000 | * | * |
チェンジアップ | 0.1 | .000 | * | * |
スローボール | * | * | 10.1 | .000 |
全球種 | .243 | .193 | ||
※2020年の数字は ダルビッシュ有投手が6勝目を挙げた 8/30までのデータ *は投球なし 引用元:https://baseballsavant.mlb.com/statcast_search |
2019年と2020年を比較すると,対右打者の被打率は,0.181から0.211に上がり,対左打者の被打率は,0.243から0.193に下がっています.
被打率を下げている球種は,①4シーム(0.350 → 0.308),② スライダー (0.296 → 0.154)に特定されます.カッターの被打率(0.248 → 0.245)は,ほぼ変わっていません.
①については,今季は4シームの平均球速が上がっており,球威が増していることが考えられます.②については,スライダーにキレがでていると考えるよりも,4シームの球威が増したため,スライダーが活きていると考えるのが適当です.ストレートあっての変化球ということになります.

引用元:https://baseballsavant.mlb.com/statcast_search