大谷選手の打球分布図からわかること-その2-右方向に打球が飛ぶのは,手首を返しているから

右方向に打球が飛ぶのは,手首を返しているから

引用元:ベースボール・サバント

 大谷選手の打球分布図からわかること で,2020年の打球分布図が2018,2019年と比べて右方向に偏っていることを指摘しました.対右投手では内野の打球が右方向に集まり,対左投手では内外野ともに右方向に打球が偏っています.
 右方向に打球が偏る原因としては,インパクト後,手首を返していることが考えられます.手首を返すと インパクト後,手首をすぐに返してはいけない で説明しているように中心衝突させることができなくなります.


手首を返す理由①:グリップの位置が体から離れている

引用元:科学する野球・ドリル篇

  グリップの位置が体から離れると,スイングの軌道が図120の点線のようにアウトサイド・インになります.アウトサイド・インのスイングは円を描くためインパクト後,打ち返す方向に両腕を伸ばすことが難しくなり,手首を返して打ちやすくなります.また,円を描くスイングでは慣性モーメントが大きくなるため,スイングスピードも速くすることができません.


手首を返す理由②:両肩を結ぶ線が打ち返す方向に対して90°になっていない

引用元:科学する野球・打撃篇

 ボールを強く打つためには,インパクト後,両腕を打ち返す方向に伸ばす必要があります.両腕を伸ばすためには打ち返す方向に正対(両肩を結ぶ線が90°になる)していないと,十分な力でバットを押し出すことができません.
 大谷選手はゴルフスイングで肩が回っていないので,当然,両肩を結ぶ線は打ち返す方向に対して90°になりません.この両腕を伸ばしにくい体勢でバットを打ち返す方向に対して90°でインパクトし,90°の角度を保ったまま両腕を伸ばすのは非常に不安定な動作になります.この打ち方では手打ちの要素が大きくなり,ちょっとしたことで手首をこねる打ち方になっても不思議はありません.そもそも打ち返す方向に対して正対していないことが問題です. 


手首を返す理由③:バットが打ち返す方向に対して90°になっていない

 大谷選手の動画をみると,肩は回っていませんが,バットは打球線(弾道)に対してほぼ90°でインパクトしていることを確認できます.2018,2019年はバットを打球線(弾道)に対して90°でインパクトできていたのが,2020年にはできなくなっている可能性があります.
 おそらく,両肩を結ぶ線とバットが並行になるドアスイングに近づいているため,バットも回らないままインパクトしているものと思われます.

引用元:科学する野球・打撃篇

 打ち返す方向に対してバットが肩と平行に近い状態でインパクトすると,バットのヘッド側の角度が90°よりも大きくなり,手首を返して打つことになります.大谷選手は元々ゴルフスイングのため肩が回っていませんが,バットまで回らなくなってきていることが考えられます.


手首を返す理由④:インパクト後,肩を回している

 ボールを強く打ち返すためには,インパクト後,両腕を打ち返す方向に伸ばす必要がありますが,そのためには,両肩を結ぶ線は打球線(弾道)に対して90°に保っておかなければなりません.インパクト後,肩を回すと90°に保てなくなるため,両腕を伸ばせず肩が回るときに手首を返して打つことになります.
 インパクト後は肩とバットを90°に保ったまま打ち返す方向に両腕を伸ばさないといけないので,インパクト後,肩を回すこと自体が間違っています.


対右投手よりも対左投手で右方向の打球が顕著になっているのはなぜか

 MLBでの左対左の攻め方 で述べたように,投手の配球は外角低めのコースの割合が大きくなります.そのため,投球線(球道)が打者に鋭角に入ります.そうすると,大谷選手のように肩を回さない打者は,ますますバットだけを打ち返す方向に90°でインパクトすることが難しくなります.その結果,インパクトでバットのヘッド側の角度が90°よりもかなり大きくなり,手首を返して打っていると考えられます.

投手:クレイトン・カーショー 球種:スライダー コース:外角低め 球速:89.1mph
引用元:ベースボール・サバント
打ち返す方向は不明であるが,肩がまったく回っておらず,手元だけが前に出ている.肩が回っていないため,インパクトの顔の向きがゴルファーと同じになっている.本来ならば打ち返す方向に正対して,インパクト後,両腕を打球線(弾道)の方向に伸ばさないといけないが,ワキが空いてすでに両腕が伸びきっている.
引用元:ベースボール・サバント
インパクトで両腕が伸びきっているため,手首を返して打つしかなくなっている.インパクトでの投球線(球道)とバットとの角度は,バット側が90°より大きくなり(鈍角),グリップ側が90°より小さくなっている(鋭角).左投手の鋭角の投球に対して肩を回さないと,インパクトでバット側の角度が90°より大きくなり,打ち返すのが難しくなる.それを防ごうとしてバットだけを投球線(球道)に合わせようとすると,手打ちになり,手首をこねることになる.
引用元:ベースボール・サバント

 また,対左投手の場合,投球線(球道)が打者に鋭角に入ってくるので,センター方向に打ち返す場合でもインパクトでバットのヘッド側の角度が90°よりも大きくなります.このように打球線(弾道)に対して90°でインパクトしても投球線(球道)に対してバットのヘッド側の角度が大きくなりすぎると打ちにくくなるということが起こります.つまり,左対左(右対右も)では,インパクトでバットのヘッド側の角度が大きくなる傾向にあるので,投球線(球道)の方向に打ち返すほうがよいということになります.この場合,村上氏の中心衝突の理論が適用されます.
 右投手対左打者,左投手対右打者の場合はセンター方向に打ち返す場合でも,インパクトでバットのヘッド側の角度は90°より小さくなるため,引っ張る場合でも打ちにくくなることはありません.中心衝突させずに右方向(右打者),左方向(左打者)の打球線(弾道)②対して肩とバットを90°にしてインパクトしても問題はないことになります.
 右対右,左対左の場合は,村上氏の中心衝突の理論に従って,投球線(球道)に対して肩とバットを90°にするのも対策の一つです.