対右投手のデータ では,筒香選手が速球系のボールに弱く,スロー系,変化系の遅いボールに強いことがみてとれましたが,引き続き対左投手のデータをみてみます.
速球系(Fastballs:4シーム,2シーム,カッター,シンカー)
筒香嘉智 球種別打率 2020 対左投手 速球系 | |||||
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対左投手 | 球種 | 投球割合 % | 打席 | 安打 | 打率 |
速球系 | 4シーム | 37.7 | 11 | 3 | .273 |
カッター | 7.7 | 3 | 0 | .000 | |
シンカー | 12.6 | 7 | 1 | .143 | |
全球種 | 58.0 | 21 | 4 | .190 | |
引用元:ベースボール・サバント |
4シームは.273と2割台ですが,速球系全体では1割台となっており,対右投手と同じく速球系のボールを打てていないことがわかります.
スロー系(Offspeed:SFF,チェンジアップ,フォークボール,スクリューボール)
筒香嘉智 球種別打率 2020 対左投手 スロー系 | |||||
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対左投手 | 球種 | 投球割合 % | 打席 | 安打 | 打率 |
スロー系 | SFF | 2.4 | 0 | 0 | .000 |
チェンジアップ | 7.2 | 3 | 0 | .000 | |
全球種 | 9.6 | 3 | 0 | .000 | |
引用元:ベースボール・サバント SFF=スプリットフィンガー・ファストボール |
対右投手では打率の高かったチェンジアップがまったく打てていません.ただし,打席数が少ないためはっきりしたことはいえません.たまたま打てなかったということも考えられます.
変化系(Breaking:スライダー,カーブ,ナックルカーブ,スローカーブ,ナックル,スローボール )
筒香嘉智 球種別打率 2020 対左投手 変化系 | |||||
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対左投手 | 球種 | 投球割合 % | 打席 | 安打 | 打率 |
変化系 | スライダー | 20.8 | 9 | 3 | .333 |
カーブ | 11.6 | 4 | 2 | .500 | |
全球種 | 32.4 | 13 | 5 | .385 | |
引用元:ベースボール・サバント |
対右投手ではスライダーに苦戦していましたが,対左投手ではスライダー,カーブともに高打率となっています.
速いボールに対応できない
筒香選手は,ステップ足を一気に踏み込んでいくことで,前方移動の運動エネルギーを生み出す方法をとっています.勢いよくステップするために,足を上げた後,踏み込みのタイミングをはかって少しタメをつくる傾向がみられます.このタメが速球に差し込まれる原因になっています.逆に遅いボールには対応しやすくなると考えられます.
MLBでも足を上げるバッターはいますが,さっと足を上げてすぐに下ろすステップが一般的です.速球に対応するためにこのようなステップをおこなっていると思われますが,筒香選手はゆっくりと足を上げ,足を上げてからも静止はしませんが,踏み込むタイミングをはかるためにステップ待ちの状態になっている動作が見受けられます.
筒香選手はステップ足着地後,ステップ脚を突っ張らせて前方移動に急激なブレーキをかけ,運動エネルギーを転移してスイング動作に利用しています.下肢のエネルギーを体幹,上肢に取り込む第二動作はおこなっていないため,「人」の形で打つことはできていません.勢いよくステップして運動エネルギーを大きくしたいので,足を上げた後にステップのタイミングをはかっていると考えられます.
筒香選手はこの打撃スタイルを変えることはおそらくできないと思われるので,今後も速いボールに差し込まれることが続いていくことになります.遅いボールへの対応は比較的得意にしているようですが(データが少ないため,はっきりしたことはいえませんが),速球系のボール主体の攻め方をされると,MLBで活躍することは難しいと考えられます.