スタットキャストの定義
2021年7月31日 投稿
スタットキャストの用語の定義
mlb.com → glossary → statcast に進むと,バレルは次のように定義されています.
• Barrels: A batted ball with the perfect combination of exit velocity and launch angle, or the most high-value batted balls. (A barrel has a minimum Expected Batting Average of .500 and Expected Slugging Percentage of 1.500.)
• バレル:出口速度と発射角度の完璧な組み合わせを備えた打球、または最も価値の高い打球。
(バレルの最小予想打率は.500、予想長打率は1.500です。)
引用元:https://www.mlb.com/glossary/statcast
※参考のため,google翻訳アプリの訳を載せています.
バレルとはバッティングの新しい指標で,打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせを表します.長打,特にホームランを打てる打撃動作になっているかを判断するための指標と考えてよいかと思われます.ホームランを打つためには,当然,打球初速度が大きいことが必要となりますが,いくら打球初速度が大きくても,多少弾道が低いか,または高い打球ではフェンスまで届かない可能性があります.つまり,打球初速度に見合った打球角度の組み合わせがあるということです.
ここで予想できることは,打球初速度が小さい場合は飛距離は期待できないため,打球角度が一定の範囲に限定されるということ,打球速度が大きい場合は飛距離が期待できるため,打球角度に幅が出てくることです.
バレルの定義
statcast → barrel に進むと定義は次のようになります.
Definition
The Barrel classification is assigned to batted-ball events whose comparable hit types (in terms of exit velocity and launch angle) have led to a minimum .500 batting average and 1.500 slugging percentage since Statcast was implemented Major League wide in 2015.But similar to how Quality Starts have generally yielded a mean ERA much lower than the baseline of 4.50, the average Barrel has produced a batting mark and a slugging percentage significantly higher than .500 and 1.500, respectively. During the 2016 regular season, balls assigned the Barreled classification had a batting average of .822 and a 2.386 slugging percentage.
To be Barreled, a batted ball requires an exit velocity of at least 98 mph. At that speed, balls struck with a launch angle between 26-30 degrees always garner Barreled classification. For every mph over 98, the range of launch angles expands.
For example: A ball traveling 99 mph always earns ‘Barreled’ status when struck between 25-31 degrees. Add one more mph — to reach 100 — and the range grows another three degrees, to 24-33.
Every additional mph over 100 increases the range another two to three degrees until an exit velocity of 116 mph is reached. At that threshold, the Barreled designation is assigned to any ball with a launch angle between eight and 50 degrees.
引用元:https://www.mlb.com/glossary/statcast/barrel
打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせを備えた打球がバレルに分類されますが,打球初速度と打球角度の点からバレルと同等とみなされるヒットのタイプは,2015年にスタットキャストが導入されて以来,最低でも.500の打率と1.500の長打率を記録しているということです.
実際の平均バレルの数値は,打率.500,長打率1.500を大きく超えており,2016年のレギュラーシーズンでは,バレルに分類される打球の平均打率,平均長打率は,それぞれ,.822,2.386となっています.
打球初速度が大きくなれば,打球角度に幅が出てくる

引用元:https://www.mlb.com/glossary/statcast/barrel
バレルの定義の引用文によると,バレルに分類されるためには,最低でも98mphの打球初速度が要求され,この98mphの打球初速度では,打球角度が26°-30°の間にあれば,常にバレルに分類されるとのことです.打球初速度が98mphを超えると,1mph速度が上がるごとに打球角度が大きくなります.
引用文のFor exampleでは,初速度99mphの打球は,打球角度25°-31°でバレル分類を獲得すること,打球初速度が100mphに達すると打球角度が3°拡大し,24°-33°となること,100mphを超えると116mphに達するまでは,1mph速度が上がるごとに,さらに打球角度が2°-3°大きくなり,この打球初速度116mphの閾値では,打球角度が8°-50°まで拡大することが述べられています.
バレルに分類される打球初速度と打球角度の組み合わせ | |||||
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打球初速度 | 打球角度 | 打球角度の拡大幅 | |||
合計 | 下向き | 上向き | |||
98mph | 26°-30° | —— | —— | —— | |
99mph | 25°-31° | 2° | -1° | +1° | |
100mph | 24°-33° | 3° | -1° | +2° | |
116mph | 8°-50° | 33° | -16° | +17° | |
引用元:https://www.mlb.com/glossary/statcast/barrel ※打球角度の拡大幅の合計は下向き,上向きの拡大幅に関係なく,プラスで表します. |
- 98mphから99mphへ打球初速度が1mph上がると,飛距離がアップするため,打球角度が少し下向き,上向きになっても,長打,ホームランになる.下向きの角度は26°から25°に1°マイナス,上向きの角度は30°から31°へ1°プラスとなり,打球角度は2°拡大する.
- 99mphから100mphへ打球初速度が1mph上がると,飛距離がアップするため,打球角度が少し下向き,上向きになっても,長打,ホームランになる.下向きの角度は25°から24°に1°マイナス,上向きの角度は31°から33°へ2°プラスとなり,打球角度は3°拡大する.
- 100mphを超えると116mphに達するまでは,1mph速度が上がるごとに,さらに打球角度が2°-3°大きくなる.
- 100mphから116mphへ打球初速度が上がると,下向きの角度は24°から8°に16°マイナスとなり,16で割ると1mphあたり1°のマイナス,上向きの角度は33°から50°へ17°プラスとなり,16で割ると1mphあたり1°-2°のプラスとなっている.上向き,下向き両方の角度を合わせると,打球角度は33°プラスとなっており,16で割ると1mphあたり2°-3°のプラスとなっている.
スタットキャストのイラストの 赤で覆われた部分は ,上表の打球初速度(98mph-116mph)と打球角度(8°-50°)の組み合わせで示されるバレルゾーン( Barrel Zone ・バレルに分類されるゾーン)を表しています.
バレル率は重要な指標か?-「三振かホームラン」タイプの打者を確認する指標にすぎない
2021年9月3日 投稿
新しい打者の指標として一躍脚光を浴びているバレル率ですが,本当に優秀な打者をみるための指標となっているのか考えてみます.「MLBの新しい打撃指標「バレル」とは?-スタットキャストの定義」で述べたように,長打(特に本塁打)を打つためには,打球初速度と打球角度の両方が必要になります.打球初速度が大きくても打球角度が小さ過ぎるか,または,大き過ぎれば本塁打にはならないし,打球角度がよくても打球初速度が小さければフェンスは越えません.
タットキャストのデータから,長打(特に本塁打)を打つための打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせであるバレルゾーンというものが設定されており,このゾーンで打った打球の割合がバレル率と定義されています.このバレル率を計算するときの分母に注目していただければと思います.
確実性のない打者ほどバレル率が高くなる
MLB バレル率 Brls/BBE % ランキング 2021.8.28現在 | ||||||||
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順位 | 選手 | Brls/BBE % | 打率 | 本塁打 | 打点 | 三振 | 四球 | 死球 |
1 | 大谷翔平 | 24.3 | .269 | 41 | 89 | 154 | 64 | 4 |
2 | F.タティス・ジュニア | 21.7 | .281 | 35 | 78 | 116 | 47 | 2 |
3 | J.ギャロ | 18.6 | .223 | 25 | 55 | 170 | 94 | 4 |
4 | J.ボット | 18.4 | .275 | 28 | 82 | 102 | 53 | 3 |
5 | R.ホスキンズ | 17.0 | .247 | 27 | 71 | 108 | 47 | 5 |
6 | A.ジャッジ | 16.9 | .287 | 27 | 66 | 123 | 61 | 3 |
7 | B.ハーパー | 16.5 | .295 | 24 | 56 | 97 | 70 | 5 |
8 | M.マンシー | 16.3 | .260 | 28 | 76 | 87 | 70 | 10 |
9 | R.デバース | 15.9 | .276 | 30 | 94 | 111 | 51 | 5 |
10 | B.ロウ | 15.5 | .235 | 30 | 76 | 140 | 59 | 9 |
※引用元:ベースボール・サバント |
MLBの新しい指標としてマスコミにもてはやされているバレル率ですが,ランキングを見ると,同じようなタイプの打者が並んでいます.打率が低い(3割いかない),本塁打が25本以上(ハーパーのみ24本)で打点も多い(7人が70点を超えている),三振(8名が100三振を超えている),四球が多いという特徴があります.1つの型にはめるならば,「三振かホームラン」というタイプの打者といえます.
Brls/BBE %(BBE=batted ball event=打球の結果)では,分母はヒットにせよアウトにせよ打席が終わったときの打球の数となり,四死球は含まれません.極端にいうと,ホームラン以外全部三振か四死球なら,バレル率(Brls/BBE %)は100%(ホームランの打球がバレルゾーンの打球であると仮定した場合)になります.ホームラン以外の打球が増えると分母が大きくなり,Brls/BBE %が下がってしまうので,下手にバレルゾーン以外の打球を打つよりは,三振するか四球を選ぶほうがバレル率を上げるには都合がよいことになります.
MLB バレル率 Brls/PA % ランキング 2021.8.28現在 | ||||||||
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順位 | 選手 | Brls/PA % | 打率 | 本塁打 | 打点 | 三振 | 四球 | 死球 |
1 | 大谷翔平 | 13.5 | .269 | 41 | 89 | 154 | 64 | 4 |
2 | F.タティス・ジュニア | 13.0 | .281 | 35 | 78 | 116 | 47 | 2 |
3 | J.ボット | 10.8 | .275 | 28 | 82 | 102 | 53 | 3 |
4 | R.ホスキンズ | 10.8 | .247 | 27 | 71 | 108 | 47 | 5 |
5 | R.デバース | 10.3 | .276 | 30 | 94 | 111 | 51 | 5 |
6 | M.マンシー | 10.3 | .260 | 28 | 76 | 87 | 70 | 10 |
7 | V.ゲレロ・ジュニア | 10.4 | .310 | 36 | 90 | 92 | 71 | 5 |
8 | A.ジャッジ | 10.4 | .287 | 27 | 66 | 123 | 61 | 3 |
9 | P.アロンソ | 10.3 | .262 | 29 | 75 | 97 | 44 | 10 |
10 | S.ペレス | 10.1 | .272 | 35 | 86 | 135 | 18 | 9 |
※引用元:ベースボール・サバント |
バレル率(Brls/PA %)では,ゲレロ・ジュニア選手が3割打者としてただ一人ランクインしています.バレル率(Brls/BBE %)でランクインしている10名のうち7名がこちらの指標にも名を連ねており,ゲレロ・ジュニア,アロンソ,ペレス選手の3名が新たにランクインしています.
バレル率(Brls/BBE %)では,分母に四死球は含まれませんでしたが,こちらのバレル率(Brls/PA %)では,分母に四死球が含まれるため,その分,分母が大きくなり,率は小さくなります.しかし,分母には打球の結果も含まれるので,ホームラン(正確には長打であるが,ホームランとする)以外の打球が多い打者は分母が大きくなり,率が下がるという点は,バレル率(Brls/BBE %)と同じになります.分母が四死球の分だけ増えたとしても,結局,三振するか四球を選んでホームラン以外の打球を打たないようにしたほうが,分母が小さく抑えられ,バレル率を上げることができます.
このようにバレル率とは,確実性のない「三振かホームラン」という打者をピックアップするための指標で,優秀な打者(三振の多い打者はよい打者とはいえない)を判断するための指標ではないことがわかります.ゲレロ・ジュニア選手のように,ホームラン以外の打球を打って打率3割を超えても,バレル率では上位にランクインされることはありません.
ホームラン以外の打球が増えると,バレル率は低くなる
3割打者のバレル率 Brls/BBE % Brls/PA % 2021.8.28現在 | ||||||||
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打率 | 選手 | 本塁打 | 打点 | 三振 | 四球 | 死球 | Brls/BBE % | Brls/PA % |
.320 | T.ターナー | 19 | 55 | 86 | 30 | 5 | 6.6(104) | 5.0(92) |
.320 | N.カステヤノス | 24 | 72 | 98 | 31 | 7 | 9.9(53) | 6.9(51) |
.316 | Y.グリエル | 13 | 69 | 52 | 48 | 4 | 3.5(120) | 2.8(119) |
.316 | M.ブラントリー | 8 | 43 | 46 | 32 | 5 | 5.8(110) | 4.7(96) |
.310 | V.ゲレロ・ジュニア | 36 | 90 | 90 | 92 | 71 | 15.1(11) | 10.4(7) |
.307 | j.ウィンカー | 24 | 71 | 75 | 53 | 8 | 11.3(45) | 8.1(34) |
.307 | C.ムリンス | 22 | 45 | 99 | 43 | 6 | 8.1(81) | 5.8(73) |
.304 | A.フレイジャー | 4 | 34 | 61 | 40 | 7 | 0.9(133) | 0.8(132) |
.303 | T.アンダーソン | 14 | 53 | 102 | 18 | 1 | 7.6(88) | 5.7(79) |
.303 | T.ヘルナンデス | 22 | 84 | 111 | 25 | 2 | 14.5(16) | 9.9(12) |
.302 | X.ボガーツ | 20 | 69 | 87 | 48 | 5 | 9.7(58) | 7.0(50) |
.301 | A.ライリー | 27 | 77 | 126 | 48 | 11 | 13.0(28) | 8.3(30) |
.300 | J.ソト | 21 | 69 | 76 | 98 | 1 | 13.2(21) | 8.4(29) |
.300 | B.レイノルズ | 21 | 77 | 99 | 54 | 7 | 9.8(55) | 6.8(54) |
※引用元:ベースボール・サバント ※Brls/BBE %,Brls/PA %:()はリーグ順位. ※赤字は本塁打25本前後以上,打点70以上の打者 バレル率(Brls/BBE %)10位以内の打者に相当. |
バレル率(Brls/BBE %)にランクインしている打者と本塁打,打点が遜色ない選手として,カステヤノス,ゲレロ・ジュニア,ウィンカー,ライリーの4選手が挙げられます.
カステヤノス選手は24本塁打,72打点でバレル率にランクインされてもおかしくありませんが,.320の高打率が仇となり,Brls/BBE %が53位,Brls/PA %が51位になっています.
ウィンカー選手も.307の打率のお陰で,Brls/BBE %が45位,Brls/PA %が34位となり,打率.301,27本塁打,77打点のライリー選手も,Brls/BBE %が28位,Brls/PA %が30位にしかランクインされません.
ゲレロ・ジュニア選手は打率.310,36本塁打,90打点と三冠王を狙える成績であるにもかかわらず,Brls/BBE %11位,Brls/PA %7位で,大谷選手よりもかなり格下に位置づけされています.
本来ならば,打率3割をキープしているこれら4人の選手は,バレル率1位の大谷選手よりも高く評価されてもおかしくありませんが,高打率ゆえにバレル率では上位にランクインされません.なぜなら,3割を打つ打者は本塁打以外のヒットも多く打っているので,どうしても分母が大きくなってしまうからです.分子はバレルゾーンの打球に限られるため,バレル率は下がることになります.
このように,バレル率は単に「三振かホームラン」という打者を確認するための指標にすぎないのですが,マスコミがさも有用な指標であるかのように報道しているという現状があります.そして,報道を鵜呑みにした人たちがバレル率1位の大谷選手を賞賛するというおかしなことになっています.
大谷選手は本塁打王のタイトルを獲得できるか?-問題はバレル率が本物かどうか
2021年8月7日
インパクトのときに後ろ腕でボールを押し込むことができないため,手首を返して打つ大谷選手
右投げ左打ちから見えてくる大谷選手のバッティングの真実 で述べたように,大谷選手は,「インパクトのときに後ろ腕(利き腕)でボールを押し込むことができない」という右投げ左打ちの欠点を持っており,その欠点をカバーするために,故意に肩を回さないで手元にバットのタメをつくり,バットを遅らせて手首を返してインパクトする打ち方を行っています.
インパクトのときに,肩(両肩を結ぶ線)とバットが打球線(弾道)と90°で交わらないこと自体が,ミートを不正確にしており,さらにインパクト後,手首を返してボールに力を伝えるとなれば,率を残せないことは明らかです.このような特殊な打ち方では,ホームランにできるボールが限られることになるので,攻略されれば途端に打てなくなることが予想されます.
バレル率の2つの指標(Brls/BBE %,Brls/PA %)でMLB1位の大谷選手
MLBの新しい打撃指標であるバレルとは,打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせを備えた打球のことで,この指標により,長打,特にホームランを打てる打撃動作になっているかを判断することが可能になります.
スタットキャストのリーダーボードには,バレルの指標であるBrls/BBE %,Brls/PA %のランキングが載っており,この2つの指標で大谷選手は1位(Brls/BBE %=25.3,Brls/PA %=14.5)となっています.(2020.8.2現在)

2020.8.2現在
引用元:ベースボール・サバント

2020.8.2現在
引用元:ベースボール・サバント
Brls/BBE %(BBE=batted ball event=打球の結果)は,打席が終わったときの打球のうちバレルゾーンで打った打球の割合を示し,四死球は除かれますが,ファウルフライは含まれます.
Brls/PA %(PA=Plate Appearance=打席)は,打席数のうちバレルゾーンで打った打球の割合を示し,四死球を含みます.
Brls/BBE %,Brls/PA %ともに,分母にはファウルフライが含まれるので,分母はフェアゾーンに飛んだ打球ではありません.
Brls/BBE %の分母には四死球は含まれませんが,Brls/PA %の分母には四死球が含まれます.分母に四死球が含まれない分,Brls/BBE %のほうが,Brls/PA %よりも割合の数値は大きくなります.
バレル率が本物なら本塁打王を獲れるが,本物でなければ研究されると打てなくなる
大谷選手のバレル率が本物である場合
大谷選手の特殊な打ち方で,打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせを備えた打球を打てるということであれば,今シーズンだけでなく,毎シーズン本塁打王争いに顔を出すことになるでしょう.
特に今シーズンはオールスター前までに前半戦だけで33本塁打の貯金があるので,後半戦で不調に陥った場合でも,本塁打王のタイトルを獲得できる可能性があります.今後,長距離砲としてMLBで本塁打を量産し続けていくことができると考えられます.
大谷選手のバレル率が本物でない場合
大谷選手の特殊な打ち方で,打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせを備えた打球を打てているのは,一時的な現象で,相手チームに研究され攻略されると打てなくなります.特殊な打ち方には欠点があり,大谷選手が打てないボールが存在するはずですが,投手の攻略が不十分なこともあり,打てるボールだけを拾っているということが考えられます.
71試合で22発,シーズン50発ペースでホームランを量産する大谷選手 で,インターリーグから通常のリーグに戻っても好調を維持できるのかということに触れましたが,相手投手の打者に対する攻略法は,対戦回数が多いほど効果を発揮します.同一リーグ・同地区のチームに比べ,インターリーグでは対戦数が極めて少ないため,大谷選手を抑えるには時間を要すると考えられます.インターリーグも含めると,大谷選手の攻略法が確立するまでおそらく3年くらいかかるので,来シーズンくらいまでは本塁打王のタイトルを獲れる可能性があります.
攻略法が全チームに行き渡ると,大谷選手は今シーズンのような活躍はできなくなりますが,失投を逃さなければ本塁打王のタイトル争いに顔を出すことはできなくても,20本くらいは本塁打を打てるのではないかと思います.
大谷選手は来シーズン以降,徐々に打てなくなる
結論からいうと,大谷選手のバレル率が本物であるとは考えにくいため,研究されて相手投手の攻め方が確立すれば打てなくなると考えるのが適当です.大谷選手の特殊な打ち方(肩とバットを遅らせて手首を返して打つ)では,ミートが不正確になりますが,そのようなミートの不正確な打法で打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせであるバレルゾーンの打球を打つ割合(バレル率)がMLBで1位になることは,まずあり得ないことです.
【MLB】大谷翔平は休養モードへ DH制なしのド軍3連戦は代打待機 自己ワースト8戦連続ノーアーチでマドン監督が決断 によると,本日8/7からのドジャース3連戦は,DH制がないため、大谷選手は代打待機となる予定です.
8試合連続ノーアーチ(8試合の内訳は,対アスレチックス4連戦+対レンジャーズ4連戦.すべて同一リーグ同地区であるアメリカンリーグ西地区内の対戦)と苦しんでいる大谷選手ですが,インターリーグは対戦が少ないことから大谷選手に対する攻略法が定まっておらず,投手が不用意なボールを投げる機会も多くなるので,ドジャース3連戦ではホームランを打つ確率は高くなると考えられます.
この記事について,一部訂正します.
バレル率が本物かどうか → ゴルフ打法が本物かどうか
タイトルの中に,「問題はバレル率が本物かどうか」という文言を入れましたが,正しくは,「問題はゴルフ打法が本物かどうか」になります.本物かどうかとは,言い換えると「正しい,合理的な打ち方といえるか」ということです.
バレル率が1位になることは,その証明にはなりません.なぜなら,バレル率は三振かホームランという確実性のない打者を確認するための指標にすぎないからです.打率,本塁打,打点の3部門のすべてで好成績を残す優秀な打者は,バレル率の上位になかなか上がってこない仕組みになっています.バレル率とはそのような指標です.
大谷選手の肩を回さずに手首を返す打ち方は,ミートの正確性に欠ける打ち方であり,バレル率を上げるにはうってつけの打法といえます.ですから,問題はバレル率1位が本物であるかではなく,大谷選手のゴルフ打法自体が合理的な打ち方といえるかということに絞られます.
村上豊氏が正しいのか,新田恭一氏が正しいのか
大谷選手は結局,本塁打王のタイトルを獲ることはできず,155試合,打率.257,46本塁打,100打点,96四球,20敬遠,4四球,189三振の成績で2021年のシーズンを終えています.肩を回さないゴルフ打法(新田打法)が合理的な打ち方といえるのであれば,大谷選手は今後も本塁打を量産し続け,MLBで長距離打者としての地位を確立することも可能ですが,そうでなければ,成績は下降の一途を辿ることになります.
結論からいうと,大谷選手の打ち方は正統的な打ち方から外れているので,攻略されると打てなくなります.「新田打法の提唱者である新田恭一氏が正しいのか,新田打法を完全否定する村上豊氏が正しいのか」については,来季の大谷選手の成績(各球団が本気で攻略した場合)が確定した時点で,自ずと答えが出ることになるでしょう.