「科学する野球」“助っ人”外国人選手のアドバイス-これじゃ,パワフルなバッティングはできっこない

日本の選手の構えは,みんな,こんな感じだ.これじゃ,パワフルなバッティングはできっこない.

引用元:科学する野球・実技篇

 さて,図7は,パットナム選手が日本の野球について語った記事の中に掲載された写真をイラスト化したものですが,パットナム選手はこのような格好をして見せて,
「日本の選手の構えは,みんな,こんな感じだ.これじゃ,パワフルなバッティングはできっこない.パワーの素質はあるのに,それをむざむざ殺しているのさ」と述べています.
 この彼の発言には,さすがに元大リーガーだけあって,鋭い観察力で日本の選手の動作をよく見ているなと感心させられるとともに,日本の野球界によいアドバイスをしてくれたものだとありがたく思いましたが,日本の野球界で,どれほどの人がこれをグッド・アドバイスとして受け取ってくれただろうかと思うのです.
 というのは,彼の発言の中で,「これじゃ,パワフルなバッティングはできっこない」と述べていますが,それはなぜかということが述べられていませんので,これだけでは納得できないのではないかと思われるからです.
 とくに,自然体で構えるのがよいのだと信じ込んでいる方は,何をいっているのだ,こちらが教えてやりたいぐらいだ,と思われるでしょうから,そのような考えを持っておられる人には,決してアドバイスとして受け取られるはずがないと思われるからです.
 つまり,日本の野球選手には,理論的な説明がないと受け入れられにくいのですが,もともと,自分で決めた規準内の野球以外は認めようとしない偏狭さがあって,なかなか他人様のいうことを聞きいれようとはしないようです.
 とくに,アメリカ野球の技術に対しては,あれはアメリカ人には向いているけれども,彼らとは体の大きさが違うのだから,日本の選手には不向きで,マネてはいけないといって,同じ人間がすることなのに,本当に不向きであるかどうかも検討しないで,勝手に不向きだと決めつけてしまい,彼らの動作に合理性があることに気付かないで,彼らとの差は技量差ではなく,体格の差に過ぎないと安易に割り切り,けっこう,自分たちの野球だって彼らに劣らないハイレベルだと自惚れているから,彼らのせっかくのよいアドバイスも無視してしまうことになるようです.
 事実,パットナム選手がこのようにせっかくよいアドバイスをしてくれても,チームメートでさえも,彼の言に従い,構え方を改めたという日本選手を見かけない有様です.
 ここはひとつ,彼らとても,決して理論的に追求しているとはいえないけれども,あの打球のスピードと,あの飛距離を見せつけられては,そこに何か理にかなったものがあるのではないかと,一歩下がって,彼らのいうことに耳を傾けるべきではないでしょうか.

引用元:科学する野球・実技篇


 引用文の中で,パットナム選手は図7のような構えではパワフルなバッティングはできないといっています.では,どのようにかまえ構えればよいのかというと,パットナム選手は,「後ろ腕の肘を横に張り出して,フライング・エルボー で構えなければ,強い打球は打てない」といいたいわけです.
 現在は高校野球でもフライング・エルボーで構えていますが,当時はプロ野球でもフライング・エルボーで構える選手はほぼいませんでした.なぜなら,体の回転で打つという考え方が主流になっていたからです.


背骨を回転軸にして,コマのように回転することはできない

グリップを体の前に突き出して構える掛布雅之選手 
仮想の回転軸で回転して打つことを意識しているため,フライング・エルボーの構えになっていない
引用元:科学する野球・打撃篇
通算382本塁打の原辰徳選手もフライング・エルボーで構えていない
引用元:科学する野球・打撃篇 


引用元:科学する野球・ドリル篇


引用元:科学する野球・ドリル篇
引用元:科学する野球・ドリル篇
引用元:科学する野球・ドリル篇


 図3のコマの回転から,回転は回転スピードなりに,回転軸ごと回転体とも等速で回ることを知る.
 体(とくに腰)の回転で打つと考えると,図④のようになるが,背骨を回転軸としても,股下からの軸がないから,コマの回転軸の支点となるものがないので,軸で回転するというのだが,図⑤の人体の中にコマを描き入れてみると,図⑥となり,図⑥の中のコマだけを取り出してみると,図⑦となるが,このコマが回転するとは考えられない.人体の現実の姿は,図⑧,⑨,⑩のように,二本の足(脚)で支えられているコマと同じだから,このコマが回転しないように人体も回転しないはずである.

引用元:科学する野球・ドリル篇


彼らとは体の大きさが違うのだから,日本の選手には不向きで,マネてはいけない

 村上氏は,30年以上前に「科学する野球」の中で,体の回転で打つことができないこと,フライング・エルボーで構えなければならないことを指摘していました.しかし,パットナム選手のアドバイスと同様に無視されています.
 現在ではフライング・エルボーで構えることがあたりまえになっていて,フライング・エルボーで構えることに対して特に批判が出ていることもないようです.フライング・エルボーが受け入れられた経緯はよくわかりませんが,日本の野球界は村上氏がいわれる「自分で決めた規準内の野球以外は認めようとしない偏狭さ」をもっているので,誰かが正しいことを指摘しても,聞きいれることはほぼないようです.
 本サイトでは,「科学する野球」の中から,村上氏が解明したメジャーリーガーの合理的な動作を掘り起こして,皆さんに再提示していますが,日本の野球界は村上氏の指摘するように「彼らとの差は技量差ではなく,体格の差に過ぎないと安易に割り切り,けっこう,自分たちの野球だって彼らに劣らないハイレベルだと自惚れている」という側面があるようなので,正しいことを指摘したとしても聞き入れてもらえることは至難の業に近いと考えられます.