「科学する野球」スナップの利かせ方-直球の握り方

親指の関節の内側側面にあてて球を握る

 堀本律夫氏(元巨人軍投手)が,江川投手が球威のあるボールを投げられない一因として,指が垂直な壁をさするような感じで,ボールを切るという手首の使い方をしていないと指摘しているが,このような感じではなく,スナップの利かせ方の具体的な動作を説明することにしましょう.

直球の握り方

 それには,まず直球の握り方から説明しなくてはなりません.そのポイントとしては,
①中指と親指とを結ぶ線が球の中心を通るように握ります.
②中指と人差し指はそろえて握ります.離しすぎると指先の力が分散して,ナチュラル・シュートやナチュラル・スライダーの回転になることがあります.
③親指は図80のように,変化球を投げるときに,その腹を球にあてて握ることがあるが,速い球を投 げるには,親指の腹で球を握ると,手首で手を十分に背屈できないので,スナップを利かしにくくなるから,図81のように,親指の関節の内側側面にあてて,球を握ります.
④薬指は,図82のように,横からそえてやります.
⑤球を握っている指や手首に力を入れすぎたり,深く握るとスナップが利かしにくくなります.
⑥球の縫い目に対して,人差し指と中指とをほぼ直角になるようにかけるが,そのかけ方には,図 83,図84の二通りがあります.図83は横振れがして,制球が少しむずかしいので,図84で握るほう が,制球力に利点があり,一般的に採用されている握り方です.  

引用元:科学する野球・実践篇

引用元:科学する野球・実践篇

 引用文の最初に,「江川投手が球威のあるボールを投げられない」とありますが,科学する野球〈実践篇〉 が1986年に発行されており,前年の1985年のシーズンが11勝7敗,防御率5.28という過去最低の成績に終わっていることから,このような記述になっていると思われます.
 ②については,中指と人差し指を揃えたほうがボールに力が伝わり,球速が出ますが,コントロールがつきにくくなります.中指と人差し指を離すとコントロールがつきやすくなりますが,球速は落ちます.

引用元:科学する野球・実践篇

図81のように,親指の関節の内側側面にあてて握る江川投手 
②中指と人差し指を揃えて握っている
引用元:https://www.asahi.com/articles/photo/AS20180617002568.html

人差し指を縫い目と縫い目の間が狭いほうに合わせる

 引用文の続き

  この図84の握り方で注意しなければならないことは,人差し指のほうが中指より短いので,右投
 げですと,図85のように,縫い目と縫い目の間がせまいほうを左側にして握ります.図86のように
 逆にすると,人差し指は縫い目にかけられても,中指は縫い目から飛び出して,縫い目にかけるこ
 とができません.
⑦球は親指と2本の指で軽くつまむように握ります.
 といったことが挙げられます.

引用元:科学する野球・実践篇

 ⑦については,卵を握るように軽く握ると,スナップを利かせやすくなります.

引用元:科学する野球・実践篇
右投手が図86で握ると,人差し指は縫い目にかけられても,中指は縫い目から飛び出して,縫い目にかけるこ
 とができなくなる.

図85のように,縫い目と縫い目の間が狭いほうを左側にして握るデグロム投手
②中指と人差し指を揃えて握っている
図81のように,親指の関節の内側側面にあてて握っている
引用元:https://full-count.jp/2021/05/11/post1084341/

縫い目と縫い目の間が広い方に人差し指を,狭い方に中指を合わせているチャップマン投手
親指の関節の内側側面にあてて握っているが,親指が中指側にずれて図84のようにはなっていない
②中指と人差し指を揃えて握っている
引用元:https://www.sbnation.com/mlb/2016/12/7/13838416/aroldis-chapman-contract-yankees

 江川投手とデグロム投手は,写真で見る限り,縫い目と縫い目の間が広い方に人差し指を,狭い方に中指を合わせています.本来ならば,短いほうの人差し指を縫い目と縫い目の間が狭いほうに合わせるべきなので,正しい握りとは逆の握りになっています.ただし,中指が縫い目から飛び出してはおらず,人差し指,中指が揃って縫い目にかかっているようなので,問題ないのかもしれません.