他の選手が真似できない変則的な打ち方
2016年から成績は下降している
筒香嘉智 全盛期2016年から2021年までの打撃成績 | |||||
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年度 | 球団 | 打率 | 本塁打 | 打点 | OPS |
2016 | NPB | .322 | 44 | 110 | 1.110 |
2017 | NPB | .284 | 28 | 94 | .909 |
2018 | NPB | .295 | 38 | 89 | .989 |
2019 | NPB | .272 | 29 | 79 | .899 |
2020 | MLB | .197 | 8 | 24 | .708 |
2021 | MLB | .217 | 8 | 32 | .689 |
※OPS=出塁率+長打率 ※赤字はリーグ最高 引用元:ウィキペディア |
筒香選手は2016年に本塁打王,打点王の2冠に輝いています.タイトルを獲得したのはこの2016年のみで,この2016年が筒香選手の全盛期であったといえます.
MLBに移籍してから成績が低迷しているかのような印象がありますが,実際はNPBでも2016年から成績は下降しています.その理由については最後に触れたいと思います.
NPBではこの打ち方でもホームランを量産できた

この画像を見て,筒香選手の構えの特徴を一つ挙げるとすれば,何になるでしょうか?
おそらく,ほとんどの人が「スタンス」に注目するはずです.この画像は投手の真後ろからの目線にはなっていませんが,かなりの「オープンスタンス」になっています.近年,このように体を開いて構える打者は、MLBでも多く見られ,一種の流行りになっているようです.NPBでも「右に倣え」で真似する選手も多くなっています.

次は実際にスイングしたときのスタンスに注目してみます.これも「オープンスタンス」になっています.つまり,筒香選手は「オープンスタンス」で構え,スタンスと平行に左足を踏み込んで「オープンスタンス」のまま打っているということです.
MLBでもNPBでも「オープンスタンス」で構える選手は多く見られますが,ステップするときは,打ち返す方向に合わせて,センター方向に真っ直ぐ踏み込んだり,少しオープン気味,あるいはクローズド気味にステップするというのが一般的です。
しかし,筒香選手は,球種,コース,打ち返す方向に関係なく,「オープンスタンス」で構え,「オープンスタンス」で打つということをずっと続けています.この打席だけでなく、全打席がこの打ち方です.
このような特殊な打ち方をする打者はまずいません.変則的な打ち方には欠点がついて回るので,攻略されると打てませんし,また,相手投手のレベルが上がると打てないということが起こります.
この動画は全盛期2016年のホームランを集めたものですが,「オープンスタンス」の構えからスタンスと平行にステップして,「オープンスタンス」のまま豪打を連発しています.打球が飛ぶ方向が右方向であろうと,中方向,左方向であろうとお構いなしです.
このような変則的,特殊な打ち方で打てているのが驚きです.
外角を打てない筒香選手
外角が打てないことは素人でもわかる

強い打球を打つには右方向,右中間方向に打たなければならない.
筒香選手のようにオープンスタンスで打つ場合,打ち返す方向をスタンスと平行になるようにすれば,インパクトで投球線(球道)とバットを90°で交わらせ,両腕を伸ばしてボールに力を伝えることが可能になります.
ただし,スクエアスタンスでセンター返しをするときの投球線(球道)と打球線(弾道)が一致する打ち方(「科学する野球」の中心衝突)とは異なり,投球線(球道)に逆らって右方向,右中間方向に打つ偏心衝突の打ち方となるので,パワーが必要となります.
あまりおすすめすることができない特殊,変則的な無理のある打ち方といえます.

アウトコースのストレートや外側からアウトコースに入ってくる変化球は手打ちになるため,打てないことは容易に想像がつく.
筒香選手のオープンスタンス打法では,体がスタンスと平行になるため,右方向,右中間方向にしか強い打球を打つことができません.筒香選手は構えでグリップの位置を体から離しますが,これは外側のボールを右方向,右中間方向に打つために,バットでボールを拾おうとしていると考えられます.
オープンスタンスで打つ筒香選手は,外側のボールを打てないということが弱点になります.投手は当然,アウトコースで攻めることになり,ストレートや右投手のボールゾーンから入ってくるスライダーが有効になると考えられます.
MLBの投手は外角を攻めているのか?
筒香選手に対するコース別投球数は次のとおりです.

引用元:ベースボール・サバント
筒香選手に対するコース別の投球数は,ストライクゾーンでは内角が少なく,真ん中,外角へと外側になるほど球数が多くなっています.ボールゾーンでも同様に内角より外角の方が投球数が多くなっています.
投球割合で見ると次のようになります.

引用元:ベースボール・サバント
2020-2021年のMLBの全左打者のコース別投球割合と比較すると,次のようになります.

引用元:ベースボール・サバント

引用元:ベースボール・サバント
コース別投球割合を見ると,ストライクゾーンでは,MLB左打者は,真ん中,内角,外角の順で投球割合が大きいのに対して,筒香選手は内角,真ん中,外角の順で投球割合が大きくなっています.
ボールゾーンでは,MLB左打者,筒香選手ともに内角よりも外角の投球割合が大きくなっていますが,%で比較すると筒香選手の方が内角で低く,外角で高くなっています.
コース別投球割合(%) 対右左投手 2020-2021年 筒香選手とMLB左打者との比較 | ||||
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ゾーン | コース | 筒香嘉智 | MLB | |
ストライクゾーン | 内角 | 高 | 2.8 | 3.2 |
中 | 4.6 | 4.9 | ||
低 | 4.3 | 4.2 | ||
真ん中 | 高 | 5.1 | 5.2 | |
中 | 7.2 | 7.3 | ||
低 | 5.9 | 6.4 | ||
外角 | 高 | 5.6 | 4.8 | |
中 | 7.3 | 7.0 | ||
低 | 6.1 | 5.8 | ||
ボールゾーン | 内角 | 高 | 6.3 | 6.8 |
低 | 11.6 | 13.9 | ||
外角 | 高 | 16.4 | 14.5 | |
低 | 16.9 | 16.0 | ||
引用元:ベースボール・サバント ※赤字=割合が大きい,青字=割合が小さい |
ストライクゾーンでは,筒香選手の方がMLB左打者よりも,内角,真ん中のコースで投球割合が小さく,外角のコースで投球割合が大きくなっています.
ボールゾーンでは,筒香選手の方がMLB左打者よりも,内角のコースで投球割合が小さく,外角のコースで投球割合が大きくなっています.
このことから,MLBの投手が筒香選手に対して内角よりも外角のコースで勝負していることがわかります.筒香選手のオープンスタンス打法を見れば,外角は手打ちになりますから打てないのは一目瞭然です.
外角を攻めている球種の内訳
筒香選手に対する外角の球種の内訳は次のとおりです.

※引用元:ベースボール・サバント
筒香嘉智 球種別打率 外角(ストライクゾーン) 2020-2021年 | |||||
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球種 | 投球割合 % | 外角 (高) | 外角 (中) | 外角 (低) | 打率 |
4シーム | 40.4 | .000 | .235 | .222 | .167 |
シンカー | 15.6 | .333 | .000 | .000 | .067 |
スライダー | 15.0 | .000 | .000 | .250 | .154 |
チェンジアップ | 10.7 | .000 | .111 | .333 | .188 |
カッター | 6.3 | .000 | .500 | .000 | .200 |
カーブ | 5.7 | * | .500 | .500 | .500 |
SFF | 4.1 | .000 | .500 | .250 | .286 |
ナックルカーブ | 2.2 | .000 | * | .500 | .333 |
.053 | .182 | .263 | .188 | ||
※投球割合は各コースを合わせた% ※*は打数なし ※SFF=スプリットフィンガー・ファストボール ※球種によっては打数が少ないため,高打率になっている場合があります. ※引用元:ベースボール・サバント |
外角に投げられている球種は,速球系のボールが多く,4シーム(40.4%),シンカー(15.6%),カッター(6.3%)合わせて62.3%となっています.オープンスタンスでは外角の速いボールに対応できないので,有効な攻め方といえます.
コースが高めから低めになるにつれて,打率が高くなっており,ローボールヒッターであることを伺わせます.高めはシンカー以外全く打てていません.
速球系以外では,縦に変化するボール(カーブ,SFF,ナックルカーブ)については対応できているようですが,横の変化(4シーム,スライダー)には対応できていません.スライダーは外側から入ってくるので,オープンスタンスで打つ筒香選手には有効な球種となります.
オープンスタンス打法は右方向に強打するための打法
速球系のボール

※コースはストライクゾーンの内角,真ん中に設定
※引用元:ベースボール・サバント
投手の投げるコースを内角,真ん中に限定して打球分布図を調べたところ,広角に打っていることがわかります.内角,真ん中のコースであれば,右方向に打ちやすいという予想を裏切って左方向にもかなり打球が飛んでいることがわかります.
オープンスタンス打法は右方向に強打するための打法ですから,これではオープンスタンスで打っている意味がないということになります.
これは全球種のデータなので,速球系とそれ以外のスロー系,変化系に分けて調べてみます.
まず,速球系のデータからです.

※コースはストライクゾーンの内角,真ん中に設定
※速球系=Fastballs:4シーム,2シーム,カッター,シンカー
※引用元:ベースボール・サバント
球種を速球系(4シーム,2シーム,カッター,シンカー)に限定すると,右方向よりも左方向の打球が多いことがわかります.理由として,MLBの投手の球威に押されて右方向に打ち返せていないことが考えられます.
さらに,球速を93マイル(149.7キロ・小数点第二位四捨五入)以上に限定すると,次のようになります.

※コースはストライクゾーンの内角,真ん中に設定
※速球系=Fastballs:4シーム,2シーム,カッター,シンカー
※球速を93マイル以上で設定
※引用元:ベースボール・サバント
速球系に加えて球速を93マイル以上に設定すると,ほとんど右方向に打ち返せていないことがわかります.内野には右方向の打球が確認できますが,おそらく球威に押されて外野まで飛んでいないことが考えられます.
さらに球速を95マイル(152.9キロ・小数点第二位四捨五入)以上に限定すると,次のようになります.

※コースはストライクゾーンの内角,真ん中に設定
※速球系=Fastballs:4シーム,2シーム,カッター,シンカー
※球速を95マイル以上で設定
※引用元:ベースボール・サバント
速球系に加えて球速を95マイル以上に設定すると,内野の右方向の打球も少なくなり,ヒット自体が非常に少なくなっていることが確認できます.
スロー系,変化系のボール

※コースはストライクゾーンの内角,真ん中に設定
※速球系以外
スロー系=Offspeed:SFF,チェンジアップ,フォークボール,スクリューボール
変化系=Breaking:スライダー,カーブ,ナックルカーブ,スローカーブ,ナックル,スローボール
※引用元:ベースボール・サバント
球種を速球系以外(スロー系,変化系)に設定すると,さすがに右方向の打球が多くなっていることを確認できます.理由としては,
①中心衝突,偏心衝突の影響がなくなるので,投球線(球道)に逆らって右方向に打つパワーを要求されない.「科学する野球」の中心衝突と偏心衝突は,トンカチとクギの加撃理論から説明されているが,クギは投球線(球道)を表すので,直線系の速球系の球種が該当し,曲線系のスロー系,変化系の球種は該当しない.
②スロー系,変化系の球種は球速が落ちるので,速球系のように球威に押されることがなく,右方向に打ち返すことが容易になる.
が考えられます.
筒香選手が右方向に引っ張ることができる球種,コースは?

※打球が飛んだコースを右方向に設定
※引用元:ベースボール・サバント
ベースボール・サバントで,Batted Ball Direction(打球が飛んだコース)をpull(引っ張り)に設定すると,このような打球分布図となります.
どのコースのボールを右方向に打ち返しているかというと,次のようになります.

※打球が飛んだコースを右方向に設定
引用元:ベースボール・サバント
10球以上右方向に打ち返しているコースは,真ん中低め(20球),真ん中(15球),内角真ん中(11球),外角低め(10球)の順に多くなっています.高めのボールは内角,真ん中,外角にかかわらず,あまり引っ張ることができていません.
内角,真ん中に比べると外角は引っ張りにくくなりますが,真ん中低め,外角低めを引っ張っていることから,ローボールヒッターの傾向が認められます.

※打球が飛んだコースを右方向に設定
引用元:ベースボール・サバント
筒香選手はローボールヒッターの傾向があり,低めのボールを右方向に引っ張ることができますが,発射角度を確認すると,低めのコースはすべてマイナスでゴロになっており,長打にはなっていないようです.
右方向へ打ったときの球種別投球数とコースの内訳
筒香嘉智 右方向へ打ったときの球種別投球数とコースの内訳 内角(ストライクゾーン) 2020-2021年 | ||||
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球種 | 投球数 | 内角 (高) | 内角 (中) | 内角 (低) |
4シーム | 10 | 5 | 3 | 2 |
シンカー | 6 | 5 | 1 | |
カッター | 2 | 1 | 1 | |
スライダー | 2 | 1 | 1 | |
カーブ | 1 | 1 | ||
21 | 5 | 11 | 5 | |
※引用元:ベースボール・サバント |
内角については,速球系のボール(4シーム,シンカー,カッター)を引っ張っている傾向が認められます.真ん中のコースが最も球種,球数が多く,高めと低めはあまり引っ張れていません.高めは速球系(4シーム)のみでスロー系,変化系には対応できていないようですが,低めはスロー系,変化系にも対応できているようです.
筒香嘉智 右方向へ打ったときの球種別投球数とコースの内訳 真ん中(ストライクゾーン) 2020-2021年 | ||||
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球種 | 投球数 | 真ん中 (高) | 真ん中 (中) | 真ん中 (低) |
スライダー | 11 | 6 | 5 | |
チェンジアップ | 8 | 1 | 3 | 4 |
カッター | 6 | 3 | 1 | 2 |
カーブ | 5 | 1 | 4 | |
4シーム | 4 | 1 | 2 | 1 |
シンカー | 3 | 1 | 2 | |
SFF | 2 | 1 | 1 | |
ナックルカーブ | 1 | 1 | ||
ファストボール | 1 | 1 | ||
41 | 6 | 15 | 20 | |
※SFF=スプリットフィンガー・ファストボール ※引用元:ベースボール・サバント |
真ん中については,速球系,スロー系,変化系にかかわらず,多くの球種を引っ張っています.ローボールヒッターのためか,高めのボールは少なく(速球系が多い),真ん中,低めになるにつれて球種が多くなっています.
筒香嘉智 右方向へ打ったときの球種別投球数とコースの内訳 外角(ストライクゾーン) 2020-2021年 | ||||
---|---|---|---|---|
球種 | 投球数 | 外角 (高) | 外角 (中) | 外角 (低) |
チェンジアップ | 5 | 2 | 3 | |
スライダー | 4 | 4 | ||
カッター | 2 | 1 | 1 | |
SFF | 2 | 1 | 1 | |
シンカー | 2 | 2 | ||
カーブ | 1 | 1 | ||
16 | 1 | 5 | 10 | |
※SFF=スプリットフィンガー・ファストボール ※引用元:ベースボール・サバント |
外角についても,内角、真ん中と同様に,高めは引っ張ることができず,速球系のボールにしか対応できていません.真ん中,低めへとコースが低くなるにつれて,引っ張れる球種,球数が多くなっているところは,真ん中と同じです.
- コースにかかわらず,高めを引っ張ることができない.引っ張ることができるのは速球系のボールで,高めのスロー系,変化系のボールには対応できない.
- コースが低くなるほど,引っ張ることができる球数,球種が多くなるが,内角に関しては真ん中が最も対応できる球種,球数が多くなる.
- 内角は思ったよりも引っ張ることができていない.球種も速球系がほとんどで,スロー系,変化系には対応できていない.
- ローボールヒッターの傾向があり,低めのボールを引っ張っているが,打球角度がマイナスのため,長打は期待できない.
オープンスタンス打法では外角のボールを右方向に引っ張れない
速球系のボール

※コースはストライクゾーンの外角に設定
※引用元:ベースボール・サバント
投手の投げるコースを外角に限定すると,外野にはほぼ右方向に打球が飛んでいないことがわかります.内野には右方向の打球が確認できますが,おそらく外角のボールを引っかけてゴロになった打球であると思われます.
こちらも速球系とそれ以外のスロー系,変化系に分けて調べてみます.
まず,速球系のデータからです.

※コースはストライクゾーンの外角に設定
※速球系=Fastballs:4シーム,2シーム,カッター,シンカー
※引用元:ベースボール・サバント
球種を速球系(4シーム,2シーム,カッター,シンカー)に限定すると,ほぼ右方向には打ち返せていないことがわかります.筒香選手のオープンスタンス打法では,外角のボールは手打ちになるので,予想通りの結果といえます.球速が上がればさらに右方向に打てず,打率も低下すると考えられます.
スロー系,変化系のボール
次に球種を速球系以外(スロー系,変化系)に設定すると,次のようになります.

※コースはストライクゾーンの外角に設定
※速球系以外
スロー系=Offspeed:SFF,チェンジアップ,フォークボール,スクリューボール
変化系=Breaking:スライダー,カーブ,ナックルカーブ,スローカーブ,ナックル,スローボール
※引用元:ベースボール・サバント
球種を速球系以外(スロー系,変化系)に設定すると,速球系に比べて右方向に打球が少し増えていることが確認できる程度です.外角は手打ちとなるため,引っかけて一,二塁間に打球が集まっていると思われます.
筒香選手はローボールヒッター
MLB左打者とコース別打率を比較する

引用元:ベースボール・サバント
筒香選手のコース別打率を見ると,予想したとおり,ストライクゾーン,ボールゾーンにかかわらず,外角のボールが打てていないことがわかります.

※引用元:ベースボール・サバント
球種の内訳は,4シーム(39.0%),シンカー(16.6%),カッター(7.1%)の速球系の球種の割合が大きく,全球種の62.7%を占めています.スライダーも変化系のなかでは球速があるので,スライダーも含めれば,70%近くが速球系または速球系に近いボールとなります.オープンスタンスで打つ筒香選手を抑えるには,球威のあるボールで右方向に打たせないことが重要となるので,速球系の球種で攻めることは攻略法として理にかなっているといえます.

引用元:ベースボール・サバント
上図は2020-2021年のmlbの全左打者のコース別打率ですが,筒香選手のコース別打率と比較すると,次のようになります.

2020-2021年
引用元:ベースボール・サバント

引用元:ベースボール・サバント
コース別打率 対右左投手 2020-2021年 筒香選手とMLB左打者との比較 | ||||
---|---|---|---|---|
ゾーン | コース | 筒香嘉智 | MLB | |
ストライクゾーン | 高 | 内角 | .333 | .262 |
真ん中 | .088 | .281 | ||
外角 | .053 | .217 | ||
中 | 内角 | .214 | .287 | |
真ん中 | .188 | .314 | ||
外角 | .182 | .275 | ||
低 | 内角 | .261 | .243 | |
真ん中 | .320 | .270 | ||
外角 | .263 | .237 | ||
ボールゾーン | 高 | 内角 | .188 | .123 |
外角 | .188 | .228 | ||
低 | 内角 | .219 | .094 | |
外角 | .160 | .175 | ||
引用元:ベースボール・サバント ※赤字=打率が高い,青字=打率が低い |
ボールゾーンは元々打つべきコースではないので,触れなくてもよいかとは思いますが,筒香選手はMLB左打者に対して外角の打率は低く,内角の打率が高くなっています.
ストライクゾーンについては,内角高めの打率が高く,また,内角,真ん中,外角ともに低めの打率がMLB左打者よりも少し高くなっており,ローボールヒッターといえるかもしれません.
低めを除くとその他のコースの打率は総じて低く,特に真ん中(高,中),外角(高,中)の打率が低いことが目立ちます.
内角の打率が高い点については,オープンスタンス打法のため,内角のボールを右方向に引っ張りやすいということが関係していると思われます.真ん中のコースはスロー系,変化系のボールを右方向に打てている割には,打率が低く,外角のコースは手打ちになることからほとんど打てていないと考えられます.
低めの球種別打率とコースの内訳
筒香嘉智 球種別打率とコースの内訳 低め(ストライクゾーン) 2020-2021年 | |||||
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球種 | 投球割合 % | 低め (内角) | 低め (真ん中) | 低め (外角) | |
4シーム | 31.3 | .444 | .286 | .222 | .320 |
シンカー | 17.6 | .250 | .300 | .000 | .235 |
スライダー | 15.3 | .000 | .111 | .250 | .136 |
チェンジアップ | 10.9 | .333 | .667 | .333 | .467 |
カーブ | 9.6 | * | .600 | .500 | .556 |
カッター | 7.3 | .000 | .286 | .000 | .200 |
SFF | 4.8 | * | .200 | .250 | .222 |
ナックルカーブ | 3.2 | .000 | .000 | .500 | .250 |
.261 | .320 | .263 | .288 | ||
※投球割合は各コースを合わせた% ※*は打数なし ※SFF=スプリットフィンガー・ファストボール ※球種によっては打数が少ないため,高打率になっ ている場合があります. ※引用元:ベースボール・サバント |
筒香選手は,速球系に弱く,スロー系,変化系に強い,また,横の変化には弱いが,縦の変化に強いという特徴がありますが,低めに関しては,スライダーを苦手としているものの,他の球種には対応できており,ローボールヒッターの傾向が認められます.
オープンスタンス打法を変えない限り,成績向上は望めない
筒香選手のオープンスタンス打法をまとめると,次のようになります.
打法について
- 右方向に最も強い打球が打てる.
- 投球線(球道)と打球線(弾道)が一致しないので,パワーが必要となる.
- 外角のボールは手打ちになるため,強打できない.
筒香選手の現状
- 右方向に打球を飛ばせていない.
- 右方向に飛ばせる球種はスロー系,変化系のボールに限られる.
- 速球系のボールは引っ張ることができていない.
- 内角,真ん中のコースでも,速球系のボールは右方向に打つことができていない.
- NPBでは打てたかもしれないが,投手のレベルが高いMLBでは通用しない.
筒香選手のオープンスタンス打法は,大谷選手のゴルフ打法と同じく,変則的,特殊な打ち方となります.変則的,特殊な打ち方の場合,選手個人の身体能力で欠点をカバーしている側面があります.しかし,動体視力や筋力など身体能力は年齢とともに衰えていくので,徐々に打てなくなっていくと考えられます.
冒頭で筒香選手の成績が2016年の全盛期から下降気味であることについて言及しましたが,すでに身体能力が衰えてきている可能性があります.NPBのレベルでも打てなくなっていたということです.
オーソドックスな打法ほど強いものはないので,スクエアスタンスで真っ直ぐ踏み込み,センター返しで打つことが最良の策といえます.もっともスクエアスタンス打法(センター返し)を売りにした鈴木誠也選手が苦戦しているので,すべてが解決するというわけではありませんが.

球種:4シーム,球速:96mph,コース:真ん中高め
引用元:https://baseballsavant.mlb.com/sporty-videos?playId
=23829e82-9031-4feb-ae3c-2c85a7962134
96mphの速球をセンター前(やや左中間方向)へ打ち返していますが,アウトステップしており,真ん中高めのコースにもかかわらず手打ち感は否めません.
筒香選手本人が,オープンスタンスのままステップして外角のボールを強打できると思っているのか,デメリットがわかった上でこの打ち方を続けているのか,気になるところです.
今までこのオープンスタンス打法を指摘したコーチはいなかったのか,コーチが指摘しても本人が直そうとする気がないのか,謎は深まるばかりです.