「科学する野球」構えでやってはいけないこと-①最初からワキを締めて構える

後ろヒジを後ろワキ腹にくっつけて構えてはいけない

 この写真⑩のバットの構え方を見ますと,後ろ肘を後ろ横に張って,フライング・エルボーにしていますが,このように後ろワキを空けてもよいものかと思われる人がいるのではないでしょうか.
 そのように思われる人は,多分,ワキは締めて打たなければならないのだから,構えのときからワキは締めておかなければいけないと思われているのに違いないと思います.
 とくに,ダウンスイング論者の教えを受けて,少年のころからワキを締めて上から叩いてこられた人は,ワキを締めた窮屈な打ち方でもかまうことなく,ワキを締めることこそが大切であると思い込んでいられるから,フライング・エルボーには抵抗を感ぜられるようです.
 このワキの締め方については,『科学する野球』の打撃篇や実践編でも述べておいた通り,ワキは締めるのではなく,空手打ちを行うことにより締まるのでなければならないのですが,トップハンド側の手と腕の空手打ちは,写真⑨のように,手より後ろヒジを先行させなければなりません.それには,後ろヒジを構えのときからフライング・エルボーにしておかなければなりません.フライング・エルボーにしないで,後ろヒジを後ろワキ腹にくっつけて構えると,後ろヒジを自由に使うことができないので,後ろヒジより手を先行させて手振りすることになり,空手打ちができなくなります.

引用元:科学する野球・実技篇 pp.31-32

引用元:科学する野球・実技篇
引用元:科学する野球・実技篇

 現在の日本の野球界ではフライング・エルボーで構えることが主流となっているので,ワキを締めて構える打者は少数派であると思われますが,なかには最初からワキを締めて構えないといけないと思い込んでいる人もいるかもしれません.
 写真⑩のようにフライング・エルボーで構えるのは,写真⑨のように肘を先行させてスイングするためですが,最初からワキを締めると肘が自由に使えず,手から始動することになります.手から始動すると,肘よりも手を先行させてスイングすることになるため,バットをタメることができず,手振りになります.

手からテークバックすると手からバットを振り出すことになり,後ろ肘を先行させることができない

 さて,日本の打者は,前にも述べておいたように,バットを体の前に構えて,ヘッピリ腰で構えるか,自然体で構えています.
 この構え方からバックスイングに移るには,もちろん前足はあげるのですが,バットを手からテークバックし,体重の移動は,後ろ脚を膝を折り曲げて行うから,捻りに伴う体重の移動はできず,前足から後ろ足への横移動を行うことになります.
 このような動作で,バックスイングを行いますと,その反動を利用してフォワードスイングを行うようになります.
 とくに,手から後ろに引くと,図12のように,その反動として手からバットを振り出し,手が後ろヒジより先行し,後ろ肘をうしろにとり残してしまい,後ろヒジからの空手打ちができなくなり,手だけでバットを振るようになります.
 よく,高めの球の吊り球に引っかかって空振りをしている打者を見かけますが,そのときの動作は典型的な手振りを行っています.このように手振りをする打者は,バックスイングを,前足をあげるとともに,手でバットをテークバックすることであると思っているようです.また,フォワードスイングでは,その反動で手から振り出すものだから,バットを振り出す前に手でタイミングをとろうとしてヒッチを犯すことになり勝ちです.
 とくに,相手の投手の球が速いとこれに打ち勝つには,自分のバットの振りのスピードが速ければよいと思っている打者に,この手振りの強振がみられます.また,逆に緩い球ですと強振しようとして,俗にいう大振り,むちゃ振りをし勝ちですが,ここでもやはり手振りがみられます.このような手振りでは,前述しておいた通り,パワフルなバッティングができないばかりでなく,スイングにともなう体の力みから,ミートが正確に行えなくなります.

引用元:科学する野球・実技篇 pp.32-34

フライング・エルボーにせず最初から脇を締めて構えると,手から始動するため後ろ肘を先行させることができず,空手で打つこともバットをタメることもできなくなる.
引用元:科学する野球・実技篇

 フライング・エルボーで構えることによって後ろ肘が自由に使えます.後ろ肘が自由になると,後ろ肘を先行してバットをタメることができ,空手打ちを行うことができます.最初から脇を締めて手で構えている人はパフォーマンスの発揮が不十分になるため,フライング・エルボーにして,肘で構えるようにしてください.