大谷選手は本塁打王のタイトルを獲得できるか?-問題はバレル率が本物かどうか

インパクトのときに後ろ腕でボールを押し込むことができないため,手首を返して打つ大谷選手

 右投げ左打ちから見えてくる大谷選手のバッティングの真実-その2-その3-その4 で述べたように,大谷選手は,「インパクトのときに後ろ腕(利き腕)でボールを押し込むことができない」という右投げ左打ちの欠点を持っており,その欠点をカバーするために,故意に肩を回さないで手元にバットのタメをつくり,バットを遅らせて手首を返してインパクトする打ち方を行っています.インパクトのときに,肩(両肩を結ぶ線)とバットが打球線(弾道)と90°で交わらないこと自体が,ミートを不正確にしており,さらにインパクト後,両腕を伸ばさずに手首を返してボールに力を伝えるとなれば,率を残せないことは明らかです.このような特殊な打ち方では,打てるボールはホームランにできるけれど,攻略されれば途端に打てなくなることが予想されます.

バレル率の2つの指標(Brls/BBE %,Brls/PA %)でMLB1位の大谷選手

 MLBの新しい打撃指標であるバレルとは,打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせを備えた打球のことで,この指標により,長打,特にホームランを打てる打撃動作になっているかを判断することが可能になります.詳しくは,MLBの新しい打撃指標「バレル」とは?-スタットキャストの定義 をご覧ください.
 スタットキャストのリーダーボードには,バレルの指標であるBrls/BBE %,Brls/PA %のランキングが載っており,この2つの指標で大谷選手は1位(Brls/BBE %=25.3,Brls/PA %=14.5)となっています.(2020.8.2現在)

ランク1位 大谷翔平 Brls/BBE %=25.3
2020.8.2現在
引用元:ベースボール・サバント
ランク1位 大谷翔平 Brls/PA %=14.5
2020.8.2現在
引用元:ベースボール・サバント

 Brls/BBE %(BBE=batted ball event=打球の結果)は,打席が終わったときの打球のうちバレルゾーンで打った打球の割合を示し,四死球は除かれますが,ファウルフライは含まれます.Brls/PA %(PA=Plate Appearance=打席)は,打席数のうちバレルゾーンで打った打球の割合を示し,四死球を含みます.Brls/BBE %,Brls/PA %ともに,分母にはファウルフライが含まれるので,分母はフェアゾーンに飛んだ打球ではありません.Brls/BBE %の分母には四死球は含まれませんが,Brls/PA %の分母には四死球が含まれます.分母に四死球が含まれない分,Brls/BBE %のほうが,Brls/PA %よりも割合の数値は大きくなります.

バレル率が本物なら本塁打王を獲れるが,本物でなければ研究されると打てなくなる

大谷選手のバレル率が本物である場合
 大谷選手の特殊な打ち方で,打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせを備えた打球を打てるということであれば,今シーズンだけでなく,毎シーズン本塁打王争いに顔を出すことになるでしょう.特に今シーズンはオールスター前までに前半戦だけで33本塁打の貯金があるので,後半戦で不調に陥った場合でも,本塁打王のタイトルを獲得できる可能性があります.今後,長距離砲としてMLBで本塁打を量産し続けていくことができると考えられます.

大谷選手のバレル率が本物でない場合
 大谷選手の特殊な打ち方で,打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせを備えた打球を打てているのは,一時的な現象で,相手チームに研究され攻略されると打てなくなります.特殊な打ち方には欠点があり,大谷選手が打てないボールが存在するはずですが,投手の攻略が不十分なこともあり,打てるボールだけを拾っているということが考えられます.
 71試合で22発,シーズン50発ペースでホームランを量産する大谷選手 で,インターリーグから通常のリーグに戻っても好調を維持できるのかということに触れましたが,相手投手の打者に対する攻略法は,対戦回数が多いほど効果を発揮します.同一リーグ・同地区のチームに比べ,インターリーグでは対戦数が極めて少ないため,大谷選手を抑えるには時間を要すると考えられます.インターリーグも含めると,大谷選手の攻略法が確立するまでおそらく3年くらいかかるので,来シーズンくらいまでは本塁打王のタイトルを獲れる可能性があります.
 攻略法が全チームに行き渡ると,大谷選手は今シーズンのような活躍はできなくなりますが,失投を逃さなければ本塁打王のタイトル争いに顔を出すことはできなくても,20本くらいは本塁打を打てるのではないかと思います.

大谷選手は来シーズン以降,徐々に打てなくなる

 結論からいうと,大谷選手のバレル率が本物であるとは考えにくいため,研究されて相手投手の攻め方が確立すれば打てなくなると考えるのが適当です.大谷選手の特殊な打ち方(肩とバットを遅らせて手首を返して打つ)では,ミートが不正確になりますが,そのようなミートの不正確な打法で打球初速度と打球角度の完璧な(理想的な)組み合わせであるバレルゾーンの打球を打つ割合(バレル率)がMLBで1位になることは,まずあり得ないことです.
 【MLB】大谷翔平は休養モードへ DH制なしのド軍3連戦は代打待機 自己ワースト8戦連続ノーアーチでマドン監督が決断 によると,本日8/7からのドジャース3連戦は,DH制がないため、大谷選手は代打待機となる予定です.8試合連続ノーアーチ(8試合の内訳は,対アスレチックス4連戦+対レンジャーズ4連戦.すべて同一リーグ同地区であるアメリカンリーグ西地区内の対戦)と苦しんでいる大谷選手ですが,インターリーグは対戦が少ないことから大谷選手に対する攻略法が定まっておらず,投手が不用意なボールを投げる機会も多くなるので,ドジャース3連戦ではホームランを打つ確率は高くなると考えられます. 

 この記事について,一部訂正します.

バレル率が本物かどうか → ゴルフ打法が本物かどうか

 タイトルの中に,「問題はバレル率が本物かどうか」という文言を入れましたが,正しくは,「問題はゴルフ打法が本物かどうか」になります.本物かどうかとは,言い換えると「正しい,合理的な打ち方といえるか」ということです.バレル率が1位になることは,その証明にはなりません.なぜなら,バレル率は重要な指標か?-「三振かホームラン」タイプの打者を確認する指標にすぎない で述べたように,バレル率は三振かホームランという確実性のない打者を確認するための指標にすぎないからです.打率,本塁打,打点の3部門のすべてで好成績を残す優秀な打者は,バレル率の上位になかなか上がってこない仕組みになっています.バレル率とはそのような指標です.

 大谷選手の肩を回さずに手首を返す打ち方は,ミートの正確性に欠ける打ち方であり,バレル率を上げるにはうってつけの打法といえます.ですから,問題はバレル率1位が本物であるかではなく,大谷選手のゴルフ打法自体が合理的な打ち方といえるかということに絞られます.

村上豊氏が正しいのか,新田恭一氏が正しいのか

 大谷選手は結局,本塁打王のタイトルを獲ることはできず,155試合,打率.257,46本塁打,100打点,96四球,20敬遠,4四球,189三振の成績で2021年のシーズンを終えています.肩を回さないゴルフ打法(新田打法)が合理的な打ち方といえるのであれば,大谷選手は今後も本塁打を量産し続け,MLBで長距離打者としての地位を確立することも可能ですが,そうでなければ,成績は下降の一途を辿ることになります.

 結論からいうと,大谷選手の打ち方は正統的な打ち方から外れているので,攻略されると打てなくなります.「新田打法の提唱者である新田恭一氏が正しいのか,新田打法を完全否定する村上豊氏が正しいのか」については,来季の大谷選手の成績(各球団が本気で攻略した場合)が確定した時点で,自ずと答えが出ることになるでしょう.