大谷選手の攻略法をもう一度おさらい
大谷選手の攻略法をまとめると次のようになります.詳しい内容については,大谷選手を攻略する方法-ゴルフスイングできないボールを投げるだけ をご覧ください.
大谷選手の攻略法
- 肩とバットが打ち返す方向に対して交わる角度が,90°に近くなるボールを投げる.
- 肩とバットが打ち返す方向に対して交わる角度が,0°に近くなるボールを投げる.
攻略する際の球種
外側から内側に食い込む球種
- 右投手のスライダー
- 左投手のシンカー
※シンカー:投手の利き腕方向に曲がりながら落ちる球種
内側から外側に逃げる球種
- 右投手のシンカー
- 左投手のスライダー
※シンカー:投手の利き腕方向に曲がりながら落ちる球種

両肩を結ぶ線,バットともに,打球線(弾道)と交わる角度が90°になる.ここから両腕でボールを押し込んでいくので,インパクト後,両腕が伸びる.
科学する野球・ドリル編,p.160

打ち返す方向に体が向いていない.打球線(弾道)と両肩を結ぶ線が交わる角度が0°近くになっている.バットが交わる角度も90°近くにはなっていない.
大谷翔平 全打席ダイジェスト 2021/06/30
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=9G8RgglTGMo
大谷選手は右投げ左打ちのため,左(上)図のように,インパクト後,利き腕(後ろ腕)でボールを押し込むことができないという右投げ左打ちの打者特有の弱点をもっています.この弱点を回避するために,大谷選手は故意に肩を回さずにバットを遅らせてインパクトし,手首を返して打つスイングを選択しました.ですから,大谷選手を攻略するには,肩を回さずにバットを遅らせてインパクトすることができないボールを投げればよいということになります.
「科学する野球」ではゴルフ打法は完全否定されています.ゴルフでは体を正面に向けたままボールを打つので,野球のように打ち返す方向に体を向けて打つようなことにはなりません.大谷選手のような肩を回さない打ち方は,ゴルフのように体を正面に向けたまま打つ打ち方に近くなるため,村上豊氏が命名したゴルフ打法に該当することになります.
つまり,大谷選手の打ち方というのは,かなり特殊,変則的な打ち方といえるわけで,打撃向上を望む選手に勧めることなどとてもできない代物です.特殊,変則的な打ち方はオーソドックスな打ち方には勝つことはできないので,今後,大谷選手が打撃で頂点を極めることはないということになります.攻略法が確立されていなかった昨年2021年度が,本塁打王のタイトルを獲れる唯一無二のチャンスであったといえます.
速球系に強い大谷選手
大谷選手が速球系(4シーム,2シーム,カッター,シンカー)のボールに強いことは,大谷選手の球種別打率 2018-2020 対右投手-速球系に強く,スロー系・変化系に弱い,大谷選手の球種別打率 2018-2020 対左投手-対右投手と同じくシンカーに強い でデータを載せていますが,これは特に4シームのように直線で向かってくるボールは,肩とバットを鋭角で捉えることがイメージしやすいからであると考えられます.


ただし,4シームに強いといっても,コースによって打ちやすさ,打ちにくさは変わってきます.ワキを締めて打つ場合,左(上)図のように,グリップの位置が固定されると仮定すると,バットと投球線(球道)が交わる角度は外角寄りになるほど大きく(90°に近づく)なり,バットを遅らせて打つことが難しくなります.これは肩についても同じで,肩を回さずに打とうとしても,両肩を結ぶ線と投球線(球道)が交わる角度は外角寄りになるほど大きく(90°に近づく)なり,肩を遅らせて打つことが難しくなります.
次にワキを空けて打つ場合,右(下)図のように,グリップの位置は外角寄りになるほど前方に移動するので,左(上)図と同じくバットと投球線(球道)が交わる角度は外角寄りになるほど大きく(90°に近づく)なり,バットを遅らせて打つことが難しくなります.両肩を結ぶ線と投球線(球道)が交わる角度についても同じことがいえます.
つまり,4シームで攻める場合,大谷選手にゴルフ打法(肩を回さないで肩とバットを遅らせて打つ)をさせないためには,外角寄りのコースが有効ということになります.
4シームは高低どちらで攻略するのがよいのか

引用元:ベースボール・サバント
2018-2021年に大谷選手に投げられた4シームのコース別投球割合を見ると,高めのボールが多いことがわかります.特に外角高めのボール球の%が大きくなっています.

引用元:ベースボール・サバント
4シームのコース別打率を見ると,大谷選手は対角線(内角低め~外角高め)のコースに強いことがわかります.逆にいうと,内角高めと外角低めのコースには弱いということです.特に外角低めはストライクゾーン,ボールゾーンにかかわらず.000,.182とほぼ完全に抑えられています.また,投球割合の最も大きい外角高めのボール球は.185に抑えられていますが,外角高めのストライクゾーンは.384の高打率となっています.
肩を回さない状態では高めのボールは手打ちになるため,外角高めは打てないことを予測していましたが,手打ちになると手首を返しやすくなるのかはっきりした理由はわかりませんが,外角高めの4シームには対応できているようです.
以上から4シームで攻める場合,外角高めのボール球か,外角低めのボール(ボールゾーンも含む)が有効ということになります.
大谷選手の攻略法のまとめ
大谷選手を攻略する際に有効な球種は次のとおりです.
外側から内側に食い込む球種
- 右投手のスライダー
- 左投手のシンカー
※シンカー:投手の利き腕方向に曲がりながら落ちる球種
内側から外側に逃げる球種
- 右投手のシンカー
- 左投手のスライダー
※シンカー:投手の利き腕方向に曲がりながら落ちる球種
4シーム(アウトコース)
- 外角高めのボールゾーン
- 外角低めのストライクゾーン
- 外角低めのボールゾーン
いずれの球種も大谷選手のゴルフ打法をさせない,つまり,肩とバットを投球線(球道)に対して平行,または直角になるようなボールを投げればよいということになります.
大谷選手の攻略法
- 肩とバットが打ち返す方向に対して交わる角度が,90°(直角)に近くなるボールを投げる.
- 肩とバットが打ち返す方向に対して交わる角度が,0°(平行)に近くなるボールを投げる.
※肩とバットが交わる角度については,バットに当てるまでは投球線(球道)との角度,インパクト後 は,打球線(弾道)との角度となり,手首を返す分,交わる角度は多少小さくなります.
大谷選手の攻略法を実践した場合,打率は下がると考えられますが,失投はなくなることがないので,ホームランが激減することはないと考えられます.失投を見逃さなければおそらく20本近くは打つのではないでしょうか.