右投げ左打ちから見えてくる大谷選手のバッティングの真実-その4-飛距離の秘密②

 右投げ左打ちから見えてくる大谷選手のバッティングの真実-その3-飛距離の秘密① で,大谷選手が手元でバットのタメを作り,手首を返して打っていることを述べました.手首を返して打つだけでは,オールスター前日に行われたホームランダービーで,500フィート(152.4m)以上の打球を6本打ったことの説明にはならないので,さらに詳しく打撃動作を解説します.

運動連鎖を利用して,手首を返す速度を増大している

インパクト前

インパクトの瞬間

インパクト後

手首が返り,利き腕が伸びたところ
画像4枚の引用元:https://www.youtube.com/watch?v=9G8RgglTGMo

 運動連鎖の考え方-その2-二重振子モデルにおける運動エネルギーの伝達 で述べたように,運動連鎖では質量の大きな部位から小さな部位に運動エネルギーを伝えていくことが必要になります.肩を回さない大谷選手はインパクトまでに質量の大きい体幹をあまり移動しないため,運動連鎖の効率が悪いのですが、利き腕を伸ばしてブレーキをかけることによって,末端の手首の返しの速度を増大させています.上から見た画像では,利き腕を伸ばす動作が確認しづらいため,33号ホームランの動画から再度確認します.

肩を回さない運動エネルギーの損失を「人」の形で打つことによってカバーする

インパクト前
インパクトの瞬間

インパクト後
手首が返り,利き腕が伸びたところ
「人」の形で打っていることを確認できる
画像4枚の引用元:大谷翔平 全打席ダイジェスト 2021/07/10https://www.youtube.com/watch?v=SRjCNnH5FXQ

 横からの画像を見ると、インパクト直前までは利き腕の肘が曲がっていますが、インパクトではかなり腕が伸び、フォロースルーでは完全に腕が伸びた状態になっています。ソフトボールのブラッシング と同様に、腕を伸ばすことで、腕自体の動きにブレーキをかけ、末端の質量の小さい手首に運動エネルギーを伝達していることがわかります。
 また、腕が伸びた画像を見ると、「人」の形で打っていることを確認できますが、これは、肩を回さないことによる運動エネルギーの損失を、「人」の形で打つことによって下肢から運動エネルギーを股関節を介して体幹、上肢に取り込み、末端の手首の返しの速度を増大させていると考えられます。
 尚,大谷選手の腕を伸ばす動作は,インパクトでの打球線(弾道)に対するバット,肩(両肩を結ぶ線)が90°で交わっていないので,ボールを押し込む動作には当たりません.インパクト前からフィニッシュまで右腕は肘が曲がったままですが,これはバットの振りが横殴りならないように,また,手首を返しやすくするために,右腕を張って,左腕を伸ばす方向が右寄りになりすぎないように歯止めをかけていると考えられます.