右投げ左打ちから見えてくる大谷選手のバッティングの真実-肩を回さずにインパクトする

 今まで大谷選手に関する記事をいくつか載せていますが,それらは大谷選手が右投げ右打ち,左投げ左打ちの打者と同様に,インパクト後,打ち返す方向に両腕を伸ばしてボールを強打できることを前提とした内容になっています.
 しかし,右投げ左打ちの限界-作られた左打者の重大な欠点 で述べたように,もし大谷選手が右投げ左打ちの打者の例に漏れず,インパクト後,後ろ腕(非利き腕)を伸ばしてボールを押し込むことができないと仮定すると,大谷選手が現在の打撃動作に至った理由を含め,大谷選手のバッティングの真実が次から次へと明らかになってきます.

後ろ腕でボールを押し込めないのなら,肩を回すしかない

 インパクトの際に,前腕が利き腕となる右投げ左打ちの打者は,後ろ腕でボールを押し込むことができないため,肩を回してボールを押し込み,ボールに力を伝えようとします.この肩を回す動作は,特に右方向へ引っ張るときに顕著となりますが,本来,利き腕でボールを押し込むことができる右投げ右打ち(例えば 落合博満 選手),左投げ左打ちの打者にも見られます.
 ただ,この肩を回してボールを押し込む打ち方には,二つの問題が発生します.

  • 打ち返す方向に対して,肩とバットを90°で交わらせた状態(図1)から肩を回すと,横殴りのスイングとなり,ボールを引っかけてしまう.
  • 利き腕でボールを押し込む方が,よりボールを強打できるため,肩を回してボールを押し込む打ち方では,飛距離が出にくい.
図1 インパクトで肩とバットを打球線(弾道)に対して90°で交わらせ,両腕を伸ばして打ち返す方向に力を伝える
引用元:科学する野球・打撃編

  これら二つの問題に対して大谷選手がどのように対処しているかを,28号ホームランの動画から説明します.

28号ホームラン 球種:4シーム 球速:94.7mph 打球初速度:112.4mph 飛距離:356フィート(約108.5m)
Date: 2021-06-29大谷翔平 全打席ダイジェスト 2021/06/30
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=9G8RgglTGMo

肩を遅らせてインパクトし,そこから肩を回せばボールを引っかけることなく,打ち返す方向に力を伝えることができる

 科学する野球から引用した肩とバットが90°で交わるインパクト(図1)の状態から肩を回すと,スイングの軌道が横殴りとなり,ボールを引っかけてしまう可能性があります.そこで,大谷選手は最初からバットを故意に遅らせてインパクトし,そこから肩を回して打っています.このように肩を遅らせて回転することにより,ボールを引っかけるリスクを避け,打ち返す方向に力を伝えようとしていると考えられます.ただし,この打ち方ではインパクト後,後ろ腕でボールを押し込むことができないため,飛距離は出ません.

 ①で図1のように,両肩を結ぶ線を,打ち返す方向(この図ではセンター方向)に対して90°で交わらせ,②まで肩を回すならば,ボールを押し込む力は右方向に伝わることになる.
 スイングの軌道が横殴りとなるため,ボールを引っかけてしまう可能性がある.

 ①で故意に肩を遅らせてインパクトし,②まで肩を回すならば,打ち返す方向(この図ではセンター方向)へボールを押し込む力を伝えることができる.
 ボールを引っかけるリスクを回避することができるが,肩を回してボールを押し込む力は,両腕を伸ばしてボールを押し込む力に比べて弱いものとなるため,飛距離は期待できない.

故意に肩を遅らせて,肩を回さずにインパクトしている.
インパクト後,一塁側のダッグアウトに正対するくらいまで,かなり肩を回している.

肩を遅らせてインパクトした後,フィニッシュまで90°以上肩を回している大谷選手
黄色線は打球線(弾道),赤線はボールを押し込む力が働く方向を示す.

 インパクト時の両肩を結ぶ線と,フィニッシュ時の両肩を結ぶ線を重ねると,インパクト後,肩がどのくらい回っているかを確認することができます.大谷選手は90°以上肩を回しており,ボールを押し込む方向(赤線)を打ち返す方向(黄色線)に近づけていることがわかります.肩を回す角度が大きくなるほど,ボールを押し込む方向(赤線)に伝える力が大きくなるとかんがえられます.

 大谷選手が肩を回さないゴルフスイングに至った経緯

  • 右投げ左打ちのため,インパクト後,後ろ腕でボールを押し込むことができない.
  • 後ろ腕でボールを押し込むことができないため,肩を回してボールを押し込む打ち方を選択.
  • 肩を回してボールを押し込む打ち方では,肩が打ち返す方向に対して90°で交わるインパクトの状態から肩を回すと,スイングの軌道が横殴りとなり,ボールを引っかけてしまうという問題が生じる.
  • 故意に肩を遅らせてインパクトすることで,ボールを引っかけてしまうリスクを回避し,そこから肩を回すことによってボールを押し込む方向を打ち返す方向に近づける打ち方を選択.
  • 肩を回す角度を大きくすることによって,ボールを押し込む力を大きくしようとしているが,後ろ腕(利き腕)で押し込む力には及ばないため,飛距離は出にくいと考えられる.