バットは柾目で打たなければならない-「空手打法」の根拠

バットは柾目で打たなければならない

 吸収エネルギーが大なるほど反撥力が強いという物理から,木製のバットでは図1のように柾目で打ち,図2のように板目で打ってはいけないという原則がありますので,その原則通りに打てるようにするには,バットをどう握ればよいかということが先決で,それから両手の指の握りの関係が決ってくるからなのです.
 よく,バットは丸い形状をしているのだから,どこで打っても同じであると思っている方がいますが,それは間違いなのです.

引用元:科学する野球・打撃篇,pp.24-25

 木製バットの木目が重なっている点に注目すると,柾目で打つほうが,板目で打つよりもボールを強打できることがわかります. 

 引用元:科学する野球・打撃篇,p.25

板目で打つと面で力を受ける

 図2の板目でボールを打ちますと,第一番目の木目や第二番目の木目はグリップ・エンドにつながっていませんから,打者のグリップからの力が直接かかっていません.打者のグリップからの力が直接働くのは,バットの真ん中のほうの木目ですから,それを取り出してみますと,図3のようになります.これは図4のトンカチの向き,図5の平手打ちと同じで,図6のように面で力を受けます.

引用元:科学する野球・打撃篇,pp.25-26

 図2の板目でボールを打つと,打者のグリップからの力が直接働くバットの真ん中の木目(図3)で打つことになるので,ボールを強打することができません.バットの真ん中の木目をトンカチに置き換えると,釘(球道)を強打できないことがわかります(図4).

 バットの真ん中の木目を手(ボトムハンド)に置き換えると,平手打ちになり,釘(球道)を強打できないことがわかります(図5)が,逆にいうと空手打ちでないと,ボールを強打できないということになり,このことが空手打法の根拠になっています.

引用元:科学する野球・打撃篇,pp.25-26

柾目で打つと線で力を受ける

 いっぽう,図1の板目でボールを打ちますと,打者のグリップからの力が直接働くバットの真ん中の木目を取り出してみると,図7のようになります.これは図8のトンカチの向き,図9の空手打ちと同じで,こちらは図10のように線で力を受けます.

引用元:科学する野球・打撃篇,p.27

 図1の柾目でボールを打つと,打者のグリップからの力が直接働くバットの真ん中の木目(図7)で打つことになるので,ボールを強打することができます.バットの真ん中の木目をトンカチに置き換えると,釘(球道)を強打できることがわかります(図8).

 バットの真ん中の木目を手(ボトムハンド)に置き換えると,空手打ちになり,釘(球道)を強打できることがわかります(図9).つまり,空手打ちでないと,ボールを強打できないということになり,このことが空手打法の根拠になっています.

引用元:科学する野球・打撃篇,p.26

長嶋選手がバットを折っていた理由

 この両者を比較して,どちらが強打できるか図11の通り,一枚の板を立てて板目㋑で打つのと,寝かして柾目㋺で打つのとを実際にやってみれば,すぐわかることだと思います.この一枚の板に不要と思われる板を重ね合わせて,丸く削ったのがバットだと思っていただくとどこで打っても同じだと思われないはずです.図12のように,板目でボールを打った瞬間に手首を返してこねると,バットが折れることは容易に理解できると思います.
 長嶋さんは現役時代,バッターボックス内で,投手の投球を待つ間バットをクルクル回していましたから,インパクト時点ではどんな木目の向きで打っていたのかと思います.思い出してみますと,王さんはそんなにバットを折っていませんでしたが,長嶋さんはかなりバットを折っていました.長嶋さんはバットの木目に無頓着であったばかりに,バットを折ったり,柾目であればホームランになったものを凡飛にしたりといった損をかなりしたはずです.
 ところが,長嶋さんは強打者であったではないか,木目なんか関係ないという方がいます.これは長嶋さんを肯定して,物理を否定する暴言です.打撃成績は相手あってのもので,相対的なものです.物理は絶対なのです.物理に反すれば力をロスするのです.ですから私は長嶋さんがいかに強打者であっても,バットをクルクル回して構えたことは間違っているといっているのです.
 バットをクルクル回すことで,グリップにムダな力を入れないようにすることに役立てていたということもおかしいのです.グリップの力を抜くのに,何もそのようなことをしなくてもできるはずです.長嶋さんのしたことは,強打者であったが故に,何でもそれを正当化し肯定しようというのはいけません.

引用元:科学する野球・打撃篇,pp.27-28

 「バットは柾目で打たなければボールを強打できない」ということが,まず初めにあり,柾目で打つということは,打者のグリップからの力が直接働くバットの真ん中の木目で打つことを意味します.バットの真ん中の木目で打つことをトンカチで釘を打つことに置き換えると,トンカチを握る手(トップハンド、ボトムハンドともに)が空手打ちになっていないと,強打できないことがわかります.したがって,バットを握るときは、真ん中の木目でボールを打てるように空手で握らなければならないということになります.これが「空手打法」の根拠です.

 長嶋選手はバットの木目に無頓着であったばかりに,かなり損をしたということです.バットの木目を意識して打っているプロ選手がどのくらいいるのかはわかりませんが,プロの強打者であった長嶋選手が木目に対してこの程度の意識しかなかったということであれば,大学,社会人野球ではさらに損をしている選手が多くいるのかもしれません.

引用元:科学する野球・打撃篇,p.26