「空手打法」ではバットの真ん中の木目と手は平行になる
「空手打法」は柾目で打つための打法です.バットは柾目で打たないと強打できないので,打者のグリップからの力が直接働くバットの真ん中の木目でトンカチで釘を打つようにボールを打たなければなりません.
そのためには,バットの真ん中の木目(板目)が手(指を除く)と平行になるようにバットを握る必要があります.どのような握り方になるかというと,下図のようになります.
板目でボールを打つことをトンカチで釘を打つことに置き換えると,トンカチと手を平行に合わせなければ,釘を強く打つことはできません.

したがって,バットを柾目で強打するためには,真ん中の木目(板目)と手が平行になるようにバットを握らなければならないということになります.つまり,バットのマークを上にして真ん中の木目(板目)に手(指を除く)を合わせるので,構えたときにトップハンド(構えで上にくる手)は掌屈(手の平側に曲げる),ボトムハンド(構えで下にくる手)は背屈(手の甲側に曲げる)することになります.

トップハンド(構えで上にくる手)が,フォア・ハンドの空手打ち,ボトムハンド(構えで下にくる手)がバック・ハンドの空手打ちとなるので,空手打法と命名されています.

トップハンドの手の角度が上向きになる理由
下図は「科学する野球」実践篇のp. 194に載っているイラストです.

このイラストは,空手打法おそらく実際の選手の写真をイラストにしたものであると思われますが,今まで空手打法の根拠について当サイトの記事を読んでいただいた方は,少し違和感を覚えたのではないかと思います.
それは,トップハンド(構えたときに上にくる手)の手の角度が,トンカチで釘を打つイラストの手の角度よりも上向きになっている点です.
しかし,この手の角度が上向きになる理由も説明しようと思えば可能です.なぜなら,トンカチで釘を打つイラストではボールが真横から来るように釘が設定されていたので,手が釘と平行になっていましたが,実際のボールは上から下に落ちてくるので,アップスイング(アッパースイングではない) に合わせてバットを握れば,トップハンド(構えたときに上にくる手)の手の角度は少し上向きになるからです.
ですから,球道の角度にバットの木目(板目)を合せて,木目と手が平行になるようにバットを握って打つのであれば,空手打法で間違っていないということになります.
では次の写真のバットの握りはどのように説明できるでしょうか.

引用元:https://theundefeated.com/features/ken-griffey-jr-tied-mlb-record-for-consecutive-home-run-games/

史上3人目となる3000本安打・500本塁打を達成した史上最高のスイッチヒッター
引用元:https://www.yardbarker.com/mlb/articles/greatest_postseason_moments_for_every_2018_mlb_playoff_team/s1__27417464#slide_19
ケン・グリフィー・ジュニア選手のトップハンドの手の角度が,スイングの軌道の角度に合せて,バットの木目と平行に握った角度であれば,空手打法で打つためには,かなり上向きの角度でスイングしなければならないことになります.
エディ・マレー選手についても,グリフィー選手ほどではありませんが,空手打法で打っているのであれば,かなり上向きにスイングしなければなりません.
しかし,実際のスイングの軌道は,球を確実にミートすれば,打ち返す弾道の角度に近くなると考えられるので,この二選手のトップハンドの握りでは,空手打法を説明できなくなります.
「空手打法」ではバットの柾目で打つことになっていて,実際の球道が上から下に落ちてくることを考慮すると,アップスイングで打つのが適当であるので,バットの真ん中の木目(板目)をアップスイングの軌道に合せて,木目と手(指を除く)が平行になるようにバットを握らなければなりません.
ですから,ケン・グリフィー・ジュニア選手のトップハンドの手の角度は,空手打法には当てはまらない別の打法ということになります.「科学する野球」では,この別の打法が「空手打法」と混同されている点が問題といえます.
別の打法については,こちら で詳しく説明しています.

引用元:https://theundefeated.com/features/ken-griffey-jr-tied-mlb-record-for-consecutive-home-run-games/