好調の上林選手が意識している3つのポイント-その2

ボールの内側を捉えることを意識している

 好調の上林選手が意識している3つのポイント のうち,今回は2つめのポイントである「バットが外から回らないようにボールの内側を捉えることを意識している」について解説します.

 ボールの内側を捉えるためには,

  • インサイド・アウトにスイングしなければならないので,グリップの位置を体に近づけてインサイド側にもってくる必要がある.
  • 肩を回してバットが後ろにタメられている体勢をつくらなければならない.


 「ボールの内側を捉える」ということを意識することで,グリップを体に近づけた状態からバットをタメてインサイド・アウトにスイングする動作に矯正する効果が期待できます.

上林選手が復活するためには何が必要か-その5 で述べたポイント

  • グリップを体に近づけ,背面後方側に保ったままスイングする.
  • インパクトのポイントは考えず,「肘を先行させバットを後ろに残してスイングする 」ということのみ意識する.

 上林選手の不振は,肩を回さずに打つゴルフスイングによって引き起こされていますが,「ボールの内側を捉える」という意識をもってスイングすることができれば,同時に上に挙げた上林選手が復活するための条件も満たすことが可能になると考えられます.


フライング・エルボーから小さなバックスイングをとる打者は,グリップの位置が捕手側に離れすぎないように気をつける

 バックスイングは,バリー・ボンズ選手のようにフライング・エルボーから後ろ肘の上下動を利用して大きくバックスイングする打者と,ケン・グリフィー・ジュニア選手や上林選手のように後ろ肘の上下動を最小限にとどめ小さなバックスイングをとる打者の二つに大別されます.前者は後ろ肘が横に張り出し,ワキが大きく空きますが,後ろ肘を下ろす際に肘を先行させてスイングするので特に問題はありません.しかし,後者は大きなバックスイングをとらないので,グリップはすぐにスイングに入ることができる打ち出しの位置にもってくる必要があり,また,捕手側に離れすぎないように気をつけなければなりません.
 上林選手や大谷選手のようにグリップを体から離して構える打者は,グリップの位置がアウトサイド側になるので,インサイド・アウトに打とうとしても打ちようがありません.ですからグリップを背面後方側(インサイド側)にもってこなければならないのですが,インサイド側にもってきたとしても,グリップの位置が捕手側に離れすぎていれば,スイングに入るのに時間がかかり,また,ワキが空いたままスイングすることになるため,グリップを背面後方側に近づけた意味がなくなります.
 上林選手のグリップの位置を確認すると,グリップをアウトサイド側に構えたまま単に肩を回しているだけのようにもみえます.これではグリップが背面後方側に近づいても,体とグリップの位置は離れたままで縮まっていないので,捕手側に大きく離れてしまいます.よい打者はすぐにスイングできる打ち出しの位置に構えるので,グリップが捕手側に大きく離れることなく,ワキも締まり肩を回してバットをタメることが可能になります.


グリップの位置が最も捕手側に離れたときのバックスイングの位相-上林選手とグリフィー選手との比較-
ケン・グリフィー・ジュニア選手(左)引用元:Ken Griffey Jr. Home Run Swing – Hall of Fame https://www.youtube.com/watch?v=p0t1KQpDA6w
上林誠知選手(右)引用元:【バットが止まらない】上林誠知が打撃“超”絶好調!! https://www.youtube.com/watch?v=t04MJCheg18&t=39s

 グリフィー選手のトップハンド側の上腕が下向きになっているのに対して,上林選手は上腕が捕手側にまっすぐ伸びてワキが大きく空いています.これではワキが空いたままスイングすることになるので,肩を回そうとしても回すことができません.グリップは背面後方側には近づいているようですが,捕手側に大きく離れているため背面後方側に近づけたメリットは帳消しとなり,結局,グリップの位置は改善されていないことになります.MLBではみることのない上林,大谷両選手のグリップを体から大きく離す日本人選手特有の構えは弊害が多く,あまりお勧めできません.最初からグリップを体に近づけておけばよいのですが,長年続けてきた構えを変えることは簡単にはできないでしょうから,修正が難しく非常にややこしいことになります.


肩を回してバットをタメないと,ボールの内側を捉えることはできない 

 上林選手は「ボールの内側を捉えること」と「肩を回さないこと」の二つの相反することを同時に実行しようとしています.矛盾したことをしようとしているので,うまく噛み合うはずがありません.もし,上林選手が肩を回さずにボールの内側を捉えようとすれば,バットのタメをつくることができないため,弱々しいスイングになってしまうでしょう.小手先だけのインサイド・アウトのスイングといえますが,インパクト後,肩を回さないことと手首を返さないことを気をつけているようなので,その部分でヒットが出ているところがあるようです.
 しかし,上林選手が復活するためには何が必要か-その2 で述べたように,上林選手の不振の原因はゴルフスイング(肩を回さずバットのタメがないまま打つこと)で打っていることなので,ゴルフスイングを解消しないことには根本的な解決にはなりえません.今後も上林選手が肩を回さないことに固執すれば,復活の可能性がほぼなくなってしまうでしょうし,もし,肩を回して打つことにモデルチェンジする場合でも,グリップの問題(背面後方側に近づけても,捕手側に離れすぎる)を修正したほうがより肩を回しやすくなると考えられます.現在は,インサイド・アウトのスイングを意識し,インパクト後,肩を回さないことと手首を返さないように気をつけることによって,大崩れすることは免れていますが,これは応急処置でしかありません.肩を回すという根本的な解決がなされなければ,昨年と同じく厳しい状況が続くことが予想されます.