バットとボール(球道)とは90°で衝突させる-その4

投球線(球道)に対してバットと両肩を結ぶ線を90°にする

筆者作成(左図),引用元:科学する野球・打撃編(右図)

 復習の意味も込めて,中心衝突について再度確認します.

  • トンカチと釘を中心衝突させると,トンカチの柄は釘に対して90°になる.したがって,バットとボールを中心衝突させるためには,バットは投球線(球道)に対して90°にしなければならない.
  • インパクト後,中心衝突でボールを打ち返すためには,バットと投球線(球道)の角度を90°に保ったまま両腕を投球線(球道)の方向に伸ばさなければならない.そのためには,両肩を結ぶ線は投球線(球道)に対して90°にしておくのがよいので,インパクト時にバットと両肩を結ぶ線は平行となり,それぞれ投球線(球道)に対して90°になる.


投球線(球道)に対してバットと肩を90°にするのか,打球線(弾道)に対してバット と肩を 90°にするのか

 右打者対左投手で打球が左中間方向に飛んでいるのは,投球線(球道)に対してバットが90°で交わっていませんから,偏心衝突になります.しかし,打球線(弾道)に対しては バットは90°で交わっています.ただし,打球線は投手の球道とは異なるため,打球線に対してバットは90°で交わらせても中心衝突とはいえません.
 つまり,投球線(球道)と打球線(弾道)が一致したときに,村上氏の中心衝突の理論が成り立ちます.もし,打球線が投球線からずれる場合は,偏心衝突に逆らって打球を飛ばさなければならないため,ボールの勢いに力負けしないスイングが必要となります.MLBのホームラン分布図を見ると,4シームの球威(右打者対左投手:91.9mph≒147.9kph,左打者対右投手:93.5mph≒150.5kph )に負けることなく偏心衝突で打球を飛ばしていることがわかります.
 ですから,打者は偏心衝突に負けないだけのスイングができるのであれば,打ちたい方向に打って構わないと考えることができます.もちろん,中心衝突させることを第一にすれば,投球線(球道)と打球線(弾道)が一致するのが理想です.


中心衝突させないと,100mphのボールをホームランにすることはできないのか

MLB Home Runs on Pitches Over 100 MPH Compilation
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=SOURwX8gTXo

 打球が飛ぶ方向に注目してください.投球線(球道)の方向に打球が飛んでいれば中心衝突,飛んでいなければ偏心衝突になります.100mphの威力あるボールをホームランにするには,さすがに偏心衝突では難しく,おそらく中心衝突で打者は打ち返しているであろうと予想していましたが,動画を見ると,投球線(球道)と打球線(弾道)が一致していないケースが多く見られます.
 MLBの打者は体格が大きな上に合理的な動作を行っているので,投手がどれだけ速いボールを投げようとも,たとえ偏心衝突であっても,ボールの威力に負けないパワーを持ち合わせているようです.


打球線(弾道)に対してバットと肩を90°にすることを意識する

 投手の投げるボールは球威のある4シームばかりでなく,変化系,スロー系のボールもあります.トンカチで釘を打つときの釘はストレートの球道を表し,変化系,スロー系のボールは該当しません.まっすぐ来るボールでなければ,クギを打つことにならず,中心衝突は成り立たないため,打者はどの方向に打ってもよいことになります.
 速球系のボール(特に4シーム)は釘に該当するので,中心衝突と偏心衝突があてはまります.まっすぐ来るボールに対して中心衝突させるには,村上氏のいわれるように投球線(球道)と打球線(弾道)が一致することが理想ですが,偏心衝突をものともしないパワーがあるのならば,打球線(弾道)に対して両肩を結ぶ線とバットを90°に交わらせるという考え方でも問題ないかと思われます.MLBの打者は100mphの4シームを偏心衝突でもホームランにしているので,そこまで中心衝突にこだわらなくてもよいかもしれません.
 また,試合で速球系のボールがこのコースに来たらこの方向に打とう,変化系,スロー系のボールが来たら自分の打ちたい方向に打とう,などと考えて打席に立つのは現実的ではありません.村上氏の中心衝突の理論については,投球線(球道)と打球線(弾道)が一致することが理想であることを理解しておけばよいかと思います.ただし,自分の打ちたい方向に打つ場合,どのような球種のボールであっても,インパクトは中心衝突のインパクトが適用されるため,打球線(弾道) に対して両肩を結ぶ線とバットの角度は90°で交わらせる必要があります.