バットとボール(球道)とは90°で衝突させる-その3

村上氏の中心衝突の考え方に対する注意点

 中心衝突を求めるために,ミート・ポイントでバットを球道に九〇度で交わらせなければならないのだから,真ん中に投げられた球は,図68のようにセンター方向に打ち返され,遠めの球は図70のように左中間方向(右打者)に近めの球は図71のように右中間方向(右打者)に打ち返されます.このように球道に逆らわないで打つのが打撃の本質なのです.

引用元:科学する野球・打撃篇

 村上氏は,「真ん中に投げられた球は,センター方向に,遠めの球は左中間方向(右打者)に,近めの球は右中間方向(右打者)に打ち返す」としていますが,右対右の場合,投手のリリースポイントは打者から見て左側になるため,遠めの球の球道が最も角度がつき,近めの球の球道は真っ直ぐに近くなります.角度もそこまで大きくならないので,中心衝突を求めるには,「真ん中,遠め,近めの球にかかわらず,センター方向から左中間方向に打ち返す」とするのが適当です.
 右対左投手の場合,投手のリリースポイントは打者から見て右側になるため,近めの球の球道が最も角度がつき,遠めの球の球道は真っ直ぐに近くなります.角度もそこまで大きくならないので,中心衝突を求めるには,「真ん中,遠め,近めの球にかかわらず,センター方向から右中間方向に打ち返す」とするのが適当です.


左投手対右打者でボールは右中間方向に打ち返されているか

 村上氏の理論に従うと,左投手対右打者の場合,遠め,近めにかかわらず球道に角度がつくので, 中心衝突を求めるために,ミート・ポイントでバットを球道に九〇度で衝突させれば,打球は右中間方向に飛ぶことになります.
 中心衝突をわかりやすくするために,MLB2019年のデータから左投手の球種を4シームに絞り,打者がホームランを打ったケースだけを考えます.

MLB 2019年  左投手対右打者 本塁打分布図 球種:4シーム 平均球速:91.9mph≒147.9kph
引用元:ベースボール・サバント

 スプレーチャートを見ると,明らかに右中間方向よりも左中間方向に打ち返されていることがわかります.左中間方向に打てば,球道に対して偏心衝突を起こすことになりますが,4シームの球に力負けすることなくホームランを打ち返しています.


右投手対左打者でボールは左中間方向に打ち返されているか

MLB 2019年  右投手対左打者 本塁打分布図 球種:4シーム  平均球速:93.5mph≒150.5kph
引用元:ベースボール・サバント

 右投手対左打者の場合も,リリースポイントは打者から見て外側になるので,中心衝突させると打球は左中間方向に飛ぶはずですが,実際は偏心衝突を起こす右中間方向に多く飛んでいます.


投球線(球道)に対してバットを90°にするのか,打球線(弾道)に対してバットを90°にするのか

 右打者対左投手で打球が左中間方向に飛んでいるのは,投球線(球道)に対してバットが90°で交わっていませんから,偏心衝突になります.しかし,打球線(弾道)に対しては バットは90°で交わっています.ただし,打球線は投手の球道とは異なるため,打球線に対してバットは90°で交わらせても中心衝突とはいえません.
 つまり,投球線(球道)と打球線(弾道)が一致したときに,村上氏の中心衝突の理論が成り立ちます.もし,打球線が投球線からずれる場合は,偏心衝突に逆らって打球を飛ばさなければならないため,ボールの勢いに力負けしないスイングが必要となります.MLBのホームラン分布図を見ると,4シームの球威(右打者対左投手:91.9mph≒147.9kph,左打者対右投手:93.5mph≒150.5kph )に負けることなく偏心衝突で打球を飛ばしていることがわかります.
 ですから,打者は偏心衝突に負けないだけのスイングができるのであれば,打ちたい方向に打って構わないと考えることができます.もちろん,中心衝突させるには,投球線(球道)と打球線(弾道)が一致するのが理想です.