トンカチの柄とクギとの角度は90°になる
2020年12月29日 投稿
トンカチの柄とクギとの角度は90°になる

図66を見てください.トンカチの頭の打撃面とクギの頭とがどういう角度で衝突するかによって,㋺のように中心衝突を起こす場合もあれば,㋑や㋩のように偏心衝突を起こす場合もあります.
そこで,トンカチとクギとを中心衝突させるには,㋺で見られる通り,トンカチの柄とクギとの角度を九〇度にしなければならないことがわかります.㋑の偏心衝突では,トンカチの柄はクギに対して九〇度より鈍角であり,㋩の偏心衝突では,九〇度より鋭角になっています.いうまでもなく㋑㋩の偏心衝突では効果的な打撃は求められません.
これは,バットとボールとの衝突においても同じような現象がみられます.そこで,図66の㋑㋺㋩の衝突角度にならって,バットとボールとの衝突を描いてみますと,図67の㋑㋺㋩ となり,㋑と㋩は偏心衝突,㋺は中心衝突です.㋺は中心衝突では,バットとボールとが九〇度の角度で衝突していることはいうまでもありませんが,インパクトの時点でバットがボールと九〇度で中心衝突したときの衝撃(球の力)に耐えるには,図68の通り,トップ・ハンド側の前腕部がバットと九〇度の角度を保てませんと力の均衡がはかれません.
引用元:科学する野球・打撃篇

※写真はテッド・ウイリアムズ選手
ミート・ポイントの論争に決着をつける
また,その前腕部も腕の力だけではなく,肩の力(注・肩の力はテークバックのトップの位置からミート・ポイントまで肩を回すことによって生まれる.)をも合力しなければ,球の力に打ち勝つことができないから,写真22のように,両肩を球道に対して九〇度になるまで回すことが必要となります.
ということは,インパクトの時点で,バットが九〇度の角度でボールを捉えるには,バットと両肩の線が並行でなければならないということになります.ですから,両肩の線が球道と九〇度以上の鈍角で交われば,バットは図67の㋑となり,九〇度以下の鋭角で交われば,バットは図67の㋩となり, その結果はいずれも偏心衝突を起こすことになります.図69はトップ・ハンド側の前腕部とバットとが鋭角でインパクトし,ボールに食い込まれているのがよくわかります.
日本の野球界では,ミート・ポイントについて,「前で打て」とか,「呼び込んで打て」とか,「引きつけて打て」とか,あるいは「ホームベースの一〇センチ前で打て」とか,また「前足のカカトの前でミートせよ」とか,指導上いろいろのことがいわれていますが,これらの表現は,いずれも指導者の個人個人が経験的に感覚的に捉えたものであり,物理的に解明されたものではありません.
中心衝突を求めるために,バットとトップ・ハンド側の前腕部と両肩の線を,それぞれ九〇度の角度に保ち,バットが球道に九〇度で交わる点がミート・ポイントであると物理的に定義づけると,いままでミート・ポイントについていろいろ論争されてきましたが,これで決着するはずです.
引用元:科学する野球・打撃篇


トンカチでクギを強く打ち込む(中心衝突させる)には,トンカチの柄とクギとの角度を90°にしなければならないので,図68のように両肩を結ぶ線とバットが並行になり,それぞれ球道に対して90°になります.球道に対して打ち返すことになるため,投球線(球道)と打球線(ミート・ポイントからボールが打ち返され得る球筋)が一致します.
ダウンスイングは偏心衝突
2020年12月18日 投稿
ダウンスイングは物理に反する

バッティングはバットでボールを打つことですから,バットとボールとは衝突という現象を起こします.この衝突には中心(向心)衝突と偏心衝突とがありますが,バットとボールとは中心衝突を起こさなければ,効果的な打撃を得られないので,偏心衝突ではボールはすばらしいスピードで遠くに飛んでくれません.ですからバットとボールとを中心衝突させるにはどうすればよいか,ということを物理に則って突きつめていかなければなりません.
そこでまず,トンカチを握り,クギを打ってみましょう.図43はトンカチとクギとは中心衝突していますから,クギはスイスイと打ち込まれていきます.ところが図44はトンカチをクギに向けてダウンに打ち込んで,偏心衝突していますから,釘は下向きに曲がって中へは打ち込まれません.図45はトンカチをクギに向けてアッパーに打ち込んで偏心衝突していますから,クギは上向きに曲がって 中へは打ち込まれません.
このことからわかることは,トンカチで釘を打つ時,ただひとつの打ち方しか中心衝突を求めることはできないということです.打ち方は二つも三つもない,ただひとつということです.
バッチングについても,バットでボールを打つ打ち方は,中心衝突を求める限り,ただひとつしかないのです.ですからダウン,レベル(地面に水平),アッパーと三通りもあるスイングは打ち方ではなく,ただバットの振られる軌道が地面に対してどう振られるかというに過ぎません.
引用元:科学する野球・打撃篇
クギが投球の軌道を表すとすれば,中心衝突を起こしてクギを打ち込むためには,ダウンスイングやアッパースイングはしてはいけないということが述べられています.
投球の軌道は,リリースポイントから捕手のミットまで落ちてくる軌道になるので,実際の軌道に合わせるとクギは水平ではなく,多少下向きになります.クギが下向きであれば,中心衝突を起こすためには多少『アップスイング 』をしたほうがよいことになります.
『アップスイング 』で中心衝突を起こせば,打球の速度,打球の角度が大きくなるため,「フライボール革命」にもつながってきます.
『アップスイングとアッパースイングとの違い』については,こちら をご覧ください.
ダウンスイングが日本に持ち込まれた経緯
このダウンスイングは,昭和三十六年に川上監督(当時)が,巨人軍を率いてフロリダのドジャータウンでキャンプを張った時,渡米土産として持ち帰ってきたものですが,その後,荒川博氏(巨人軍打撃コーチ)がこのダウンスイングで王さんを育てたということで,ダウンスイングが正しいスイングとして一躍クローズアップされました.
しかし,王さんのスイングは決してダウンスイングではなかったと思われるのは,私一人ではないと思います.
王さんの日記がテレビで一部公開された時,今日はダウンスイングで打ってみようと書かれていたのは,スランプに悩んだ挙げ句のことでしたから,いつもはダウンスイングで打っていなかったことがこの一文からはっきりとわかります.
引用元:科学する野球・打撃篇
ダウンスイング論者がダウンスイングを是とする理由

ところで,ダウンスイング論者がダウンスイングを是とする理由として,バットは地面に対してレベル(水平)に振っているつもりでもバットの先は下がり,アッパーになっているのでダウンに振って初めてレベル(水平)になると説いているので,ダウンスイング論者はもともとレベルスイング論者ということがわかります.
ところが,従来のレベルスイングは,ミート・ポイントでバットを地面に水平にするのに,バットは構えられた位置から図46のように半円を描いて水平にされるので,図47のように高く構えた位置から斜め下(四十五度)に直線的に振り下ろしてバットを水平にするのに比べて,遠回りしているから,バットをボールに向けて最短距離を通って当たるようにするために,ダウンスイングしなさいと説いているわけです.
引用元:科学する野球・打撃篇
従来のレベルスイングが,図46のように半円を描いて水平にされ,バットが遠回りするので,図47のように 四十五度に振り下ろしてダウンスイングし,バットが最短距離を通ってレベル(水平)になるようにするということが述べられています.
ダウンスイングが日本に持ち帰られた当時は,図47のように 斜め下にバットを振り下ろすものと理解されていましたが,後日,来日したドジャースのバッティングコーチ(当時)ケニー・マイヤーズ氏が「バットを振り下ろしたあと,両手首を返して打つからバットはレベル(水平)な振りになる」と川上監督にいわれてから,バットを水平に振るためのダウンスイングになったとのことです.
ダウンスイングではインパクト後,両腕を伸ばすことができない

ダウンスイングの素振りを見てみると,写真13のように,スイングの始めから終わりまで,前腕が伸びていません.このような腕の使い方では,インパクト後に大事な両腕を伸ばすことができません.
インパクト後に両腕を伸ばすことは,わかりやすくいうと,両腕が伸びきるまで球の芯を打ち抜かなければならないということですが,バットの撃力のほうが投球された球の力より大きくないと,インパクト後両腕を伸ばすことができません.
しかし,打者が投球された球の力を上回る撃力をバットに与えても,バットの撃芯とボールの芯とを中心衝突させないで,ダウンスイングのように偏心衝突させると,バットの撃力がボールに十分加えられませんから,バットがボールに与えるエネルギーが小さいので,かりにダウンスイングでインパクト後両腕を伸ばすことができたとしても,打球はそれほど遠くには飛んでくれません.
引用元:科学する野球・打撃篇
現在,ダウンスイングの指導が行われているのか,ダウンスイングということばが死語となっているのか定かではありません.実際に指導が行われる場合は,おそらくレベルスイング(このことばも使われていないのかもしれませんが )論者としての指導になると思われますが,ダウンスイング自体は偏心衝突を起こすもので正しいとはいえないということです.
近めの球は右中間方向に,遠めの球は左中間方向 に打ち返す
2021年1月2日 投稿
近めの球は右中間方向(右打者)に,遠めの球は左中間方向 (右打者) に打ち返す


というわけで,中心衝突を求めるために,ミート・ポイントでバットを球道に九〇度で交わらせなければならないのだから,真ん中に投げられた球は,図68のようにセンター方向に打ち返され,遠めの球は図70のように左中間方向(右打者)に近めの球は図71のように右中間方向(右打者)に打ち返されます.このように球道に逆らわないで打つのが打撃の本質なのです.
たとえば,図72のように,近めの球を引っ張ったり,巻きこんで打つと,図67の㋑の偏心衝突を起こしファールを打つことが多くなります.元巨人軍の千葉茂さんは近めの球を右中間方向に打つ名人で,この打ち方は千葉さん独特の特異な打ち方と思われていましたが,これが球道に逆らわない物理にかなった打ち方だったのです.
遠めの球に対して,図73のように肩を回さないで流し打ちするのは,ミート・ポイントで肩の線とバットが球道に九〇度で交わっていないから,図67の㋩の偏心衝突を起こし,ファールを打つことが多くなります.
また,逆に遠めの球でも引っ張ろうとする打者がいますが,遠めの球が左中間方向(右打者)に打ち返されるのは,引っ張って左中間方向にも持っていくのではなく,センター返しをするときの動作と同じ動作を行いますと,球道と九〇度で交わるバットの向きで左中間方向に打ち返されるのだから,ここを間違わないようにしてください.
引用元:科学する野球・打撃篇
テッド・ウイリアムズ選手のアップスイング

テッド・ウイリアムズ著の『バッティングのサイエンス』でも,「バッティングは手首の返しによるスイングでプルヒッティングするのではなく,投球に対して九〇度に当てるプッシュ・スイングを行わなければならない」と説いています.
また,ダウンスイングについても,インパクトでトップ・ハンドがボールより上になる傾向があり,その結果は巻き込んで打つスイングになるので,望ましいものではないと述べています.
そして,彼がアップスイング(アッパースイングではない)を行ったのは,投球されたボールは約五度下向きで打者に向かって飛来するから,これを打つには手首を返さないで,少しアップスイングにしたほうが,投球の軌道とバットの軌道が一致している区域が長くなるという考えからで,これはトンカチでクギを打った時,トンカチの頭に「残心」を保つことと一致しています.
王さんも振り出しからバットを水平にもどし,インパクト後はアップスイングで両腕を伸ばしきるまで,球の芯を打ち抜いていました.
このアップスイングをするには,前腰の捻りを先行させて,インサイド・アウトにスイングしなければなりません.それには,写真23のようにトップ・ハンドと後ろ腕を外捻し,後ろヒジの内側の凹みを空のほうに向けて,後ろヒジを後ろ脇腹にかい込こむことからスイングのスタートを起こすことです.
図74のダウンスイングのように,トップ・ハンドや後ろヒジを起こすと,アウトサイド・インのスイングになり,プッシュ・スイングができません.
テッド・ウイリアムズ氏が,最高の右打者の一人として推奨するハリー・ヘイルマン氏から“インサイド・アウトのスイングを身につけたので,インコースに来たボールをライト方面に打てるようになった”と聞かされたとのことですが,近めの球をライト方向に打ったのは千葉さんだけではなかったのです.
引用元:科学する野球・打撃篇
アップスイングとアッパースイングとの違い

なお,アッパースイングは,図75のように水面下に手を沈めて水をすくうように,グリップをクギの力線(球道)より下に沈めてから,クギ(球)に向かって振り上げますのですくい打ちをすることになります.
ですから,アッパースイングというのは,インパクト前のバットの振り方であり,インパクト後にアップに振るアップスイングとは違うことをはっきりと認識してください.
また,図76のように,同一の加撃面(ガラス)の中に,ボールとバットがあれば,グリップよりバットの先が下がっていても,これはアッパースイング,すくい打ちではありません.
以上の説明から,打撃の本質は中心衝突を求めることであり,中心衝突を求めるには,
引用元:科学する野球・打撃篇
一,仮想の加撃面に沿ってレベルに打つ.
一,バットとボール(球道)とは九〇度で衝突させる.
ことが必須条件であることを理解されたことと思います.
村上氏の説明によると,中心衝突を求めるためにミート・ポイントでバットを球道に九〇度で交わらせると,右対右の場合,遠めの球は左中間方向に,真ん中の球はセンター方向に,近めの球はライト方向に打つことになるということです.投球に対して90°に当たるのであれば,中心衝突させるために手首を返さず90°の角度を保ったまま両腕を押し出して打つことが必要になります.これがテッド・ウイリアムズ選手がいうところのプッシュ・スイングです.
このプッシュ・スイング は上方から見たときの中心衝突になります.しかし,側面から見ると投球されたボールは約五度下向きで打者に向かって飛来するので,側面の球道に中心衝突させるためには約五度下向きの球道に合わせてアップスイングしなければならないことになります.
アップスイングは図76のように仮想の加撃面に沿って中心衝突させるので,図75のような偏心衝突を起こすアッパースイングとは異なります.
村上氏の中心衝突の考え方に対する注意点
2021年1月10日 投稿
村上氏の中心衝突の考え方に対する注意点
中心衝突を求めるために,ミート・ポイントでバットを球道に九〇度で交わらせなければならないのだから,真ん中に投げられた球は,図68のようにセンター方向に打ち返され,遠めの球は図70のように左中間方向(右打者)に近めの球は図71のように右中間方向(右打者)に打ち返されます.このように球道に逆らわないで打つのが打撃の本質なのです.
引用元:科学する野球・打撃篇
村上氏は,「真ん中に投げられた球は,センター方向に,遠めの球は左中間方向(右打者)に,近めの球は右中間方向(右打者)に打ち返す」としていますが,右対右の場合,投手のリリースポイントは打者から見て左側になるため,遠めの球の球道が最も角度がつき,近めの球の球道は真っ直ぐに近くなります.角度もそこまで大きくならないので,中心衝突を求めるには,「真ん中,遠め,近めの球にかかわらず,センター方向から左中間方向に打ち返す」とするのが適当です.
左投手対右打者でボールは右中間方向に打ち返されているか
村上氏の理論に従うと,左投手対右打者の場合,遠め,近めにかかわらず球道に角度がつくので, 中心衝突を求めるために,ミート・ポイントでバットを球道に九〇度で衝突させれば,打球は右中間方向に飛ぶことになります.
中心衝突をわかりやすくするために,MLB2019年のデータから左投手の球種を4シームに絞り,打者がホームランを打ったケースだけを考えます.

引用元:ベースボール・サバント
右投手対左打者でボールは左中間方向に打ち返されているか

引用元:ベースボール・サバント
投球線(球道)に対してバットを90°にするのか,打球線(弾道)に対してバットを90°にするのか
右打者対左投手で打球が左中間方向に飛んでいるのは,投球線(球道)に対してバットが90°で交わっていませんから,偏心衝突になります.しかし,打球線(弾道)に対しては バットは90°で交わっています.ただし,打球線は投手の球道とは異なるため,打球線に対してバットは90°で交わらせても中心衝突とはいえません.
つまり,投球線(球道)と打球線(弾道)が一致したときに,村上氏の中心衝突の理論が成り立つということです.もし,打球線が投球線からずれる場合は,偏心衝突に逆らって打球を飛ばさなければならないため,ボールの勢いに力負けしないスイングが必要となります.MLBのホームラン分布図を見ると,4シームの球威(右打者対左投手:91.9mph≒147.9kph,左打者対右投手:93.5mph≒150.5kph )に負けることなく偏心衝突で打球を飛ばしていることがわかります.
ですから,打者は偏心衝突に負けないだけのスイングができるのであれば,打ちたい方向に打って構わないと考えることができます.もちろん,中心衝突させるには,投球線(球道)と打球線(弾道)が一致するのが理想です.
投球線(球道)に対してバットと両肩を結ぶ線を90°にする
2021年1月23日 投稿
投球線(球道)に対してバットと両肩を結ぶ線を90°にする

復習の意味も込めて,中心衝突について再度確認します.
- トンカチと釘を中心衝突させると,トンカチの柄は釘に対して90°になる.したがって,バットとボールを中心衝突させるためには,バットは投球線(球道)に対して90°にしなければならない.
- インパクト後,中心衝突でボールを打ち返すためには,バットと投球線(球道)の角度を90°に保ったまま両腕を投球線(球道)の方向に伸ばさなければならない.そのためには,両肩を結ぶ線は投球線(球道)に対して90°にしておくのがよいので,インパクト時にバットと両肩を結ぶ線は平行となり,それぞれ投球線(球道)に対して90°になる.
「投球線(球道)に対してバットと肩を90°にするのか,打球線(弾道)に対してバット と肩を 90°にするのか」で述べたように, 投球線(球道)と打球線(弾道)が一致する中心衝突が理想打ち方になりますが,実際は偏心衝突でも球威に負けることなく自分の打ちたい方向へ強打しているパワーヒッターもいます.
中心衝突させないと,100mphのボールをホームランにすることはできないのか
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=SOURwX8gTXo
打球が飛ぶ方向に注目してください.投球線(球道)の方向に打球が飛んでいれば中心衝突,飛んでいなければ偏心衝突になります.100mphの威力あるボールをホームランにするには,さすがに偏心衝突では難しく,おそらく中心衝突で打者は打ち返しているであろうと予想していましたが,動画を見ると,投球線(球道)と打球線(弾道)が一致していないケースが多く見られます.
MLBの打者は体格が大きな上に合理的な動作を行っているので,投手がどれだけ速いボールを投げようとも,たとえ偏心衝突であっても,ボールの威力に負けないパワーを持ち合わせているようです.
速球系以外のボールはどの方向に打っても構わない
投手の投げるボールは球威のある4シームばかりでなく,変化系,スロー系のボールもあります.トンカチで釘を打つときの釘はストレートの球道を表し,変化系,スロー系のボールは該当しません.まっすぐ来るボールでなければ,クギを打つことにならず,中心衝突,偏心衝突は成り立たないため,打者はどの方向に打ってもよいことになります.
速球系のボール(特に4シーム)は釘に該当するので,中心衝突と偏心衝突があてはまります.まっすぐ来るボールに対して中心衝突させるには,村上氏のいわれるように投球線(球道)と打球線(弾道)が一致することが理想ですが,偏心衝突をものともしないパワーがあるのならば,打球線(弾道)に対して両肩を結ぶ線とバットを90°に交わらせるという考え方でも問題ないかと思われます.MLBの打者は100mphの4シームを偏心衝突でもホームランにしているので,そこまで中心衝突にこだわらなくてもよいかもしれません.
また,試合で速球系のボールがこのコースに来たらこの方向に打とう,変化系,スロー系のボールが来たら自分の打ちたい方向に打とう,などと考えて打席に立つのは現実的ではありません.村上氏の中心衝突の理論については,投球線(球道)と打球線(弾道)が一致することが理想であることを理解しておけばよいかと思います.
ただし,自分の打ちたい方向に打つ場合,どのような球種のボールであっても,インパクト強打するためには,打球線(弾道) に対して両肩を結ぶ線とバットの角度は90°で交わらせる必要があります.
中心衝突に決着をつける
2021年2月22日 投稿
遠めの球は左中間,近めの球は右中間,真ん中の球はセンター方向へ打つ(右打者)
「科学する野球」の中心衝突の理論は,バットでボールを打つ動作をトンカチでクギを打つ動作に置き換えて説明されています.投球線(球道)はクギにあたるので,球道はクギのように真っ直ぐでなければなりません.したがって,中心衝突の対象となる球道は,広義では速球系のボール(4シーム,2シーム,シンカー,カッター),厳密にいえば4シームのみとなります.
スロー系(SFF,チェンジアップ,フォーク,スクリューボール),変化系(スライダー,カーブ,ナックルカーブ,スローカーブ,ナックル,スローボール)は,クギの球道にはならないため,中心衝突の対象外となります.

バットを肩と平行にしてボールと中心衝突させると,右打者の打球は,
(イ)遠めの球は左中間
(ロ)近めの球は右中間
(ハ)真ん中の球はセンター
の方向に飛ぶのが原則(図⑤ – ㋑,㋺,㋩)
図⑥の㋑のように,遠めの球を流し打ったり,㋺のように,近めの球を引っ張ると偏心衝突を起こす. 引用元:科学する野球・ドリル篇
遠め(外角)の球は左中間へ打つ(右打者)
右打者に遠めのボールを投げるとき,プレートとホームプレート(ホームベース)を結ぶ線と投球線(球道)との角度が最大になるのは,次の二通りです.
①右投手がプレートの右端を踏んで,外角に投げる.
②左投手がプレートの左端を踏んで,外角に投げる.
角度が最小になるのは,次の二通りです.
③右投手がプレートの左端を踏んで,外角に投げる.
④左投手がプレートの右端を踏んで,外角に投げる.
①右投手がプレートの右端を踏んで,外角に投げる
球種:4シーム コース:外角高め
引用元:ベースボール・サバント
②左投手がプレートの左端を踏んで,外角に投げる
球種:4シーム コース:外角真ん中
引用元:ベースボール・サバント
③右投手がプレートの左端を踏んで,外角に投げる
球種:4シーム コース:外角高め
引用元:ベースボール・サバント
④左投手がプレートの右端を踏んで,外角に投げる
球種:4シーム コース:外角低め
引用元:ベースボール・サバント

引用元:科学する野球・ドリル篇
右打者が遠めの球を打つときの投球線(球道)は,右投手では①と③の球道を挟む範囲,左投手では②と④の の球道を挟む範囲となるため,図⑤㋑の球道とは異なります.図⑤㋑の球道は右投手の球道の一部で,左投手の球道は描かれていません.
近め(内角)の球は右中間へ打つ(右打者)
右打者に近めのボールを投げるとき,プレートとホームプレートを結ぶ線と投球線(球道)との角度が最大になるのは,次の二通りです.
①右投手がプレートの右端を踏んで,内角に投げる.
②左投手がプレートの左端を踏んで,内角に投げる.
角度が最小になるのは,次の二通りです.
③右投手がプレートの左端を踏んで,内角に投げる.
④左投手がプレートの右端を踏んで,内角に投げる.
①右投手がプレートの右端を踏んで,内角に投げる
球種:4シーム コース:内角低め
引用元:ベースボール・サバント
②左投手がプレートの左端を踏んで,内角に投げる
球種:4シーム コース:内角低め
引用元:ベースボール・サバント
③右投手がプレートの左端を踏んで,内角に投げる
球種:4シーム コース:内角低め
引用元:ベースボール・サバント
④左投手がプレートの右端を踏んで,内角に投げる
球種:4シーム コース:内角高め
引用元:ベースボール・サバント

引用元:科学する野球・ドリル
右打者が近めの球を打つときの投球線(球道)は,右投手では①と③の球道を挟む範囲,左投手では②と④の の球道を挟む範囲となるため, 図⑤㋺の球道とは異なります.図⑤㋺の球道は左投手の球道の一部で,右投手の球道は描かれていません.
真ん中の球はセンター方向に打つ
右打者に真ん中のボールを投げるとき,プレートとホームプレートを結ぶ線と投球線(球道)との角度が最大になるのは,次の二通りです.
①右投手がプレートの右端を踏んで, 真ん中に投げる.
②左投手がプレートの左端を踏んで, 真ん中に投げる.
角度が最小になるのは,次の二通りです.
③右投手がプレートの左端を踏んで, 真ん中に投げる.
④左投手がプレートの右端を踏んで, 真ん中に投げる.
①右投手がプレートの右端を踏んで, 真ん中に投げる
球種:4シーム コース: 真ん中高め
引用元:ベースボール・サバント
②左投手がプレートの左端を踏んで, 真ん中に投げる
球種:4シーム コース: 真ん中
引用元:ベースボール・サバント
③右投手がプレートの左端を踏んで, 真ん中に投げる
球種:4シーム コース: 真ん中高め
引用元:ベースボール・サバント
④左投手がプレートの右端を踏んで, 真ん中に投げる
球種:4シーム コース: 真ん中高め
引用元:ベースボール・サバント

引用元:科学する野球・ドリル
真ん中の球を打つときの投球線(球道)は,右投手では①と③の球道を挟む範囲,左投手では②と④の の球道を挟む範囲となるため, 図⑤㋩の球道とは異なります.実際の球道は角度がつくので,図⑤㋩の球道のように真っ直ぐの球道になるとは限りません.
中心衝突に決着をつける-その2
2021年2月28日 投稿
投球線(球道)を絞り込む
「中心衝突に決着をつける」では,右打者に対する近めの球,遠めの球,真ん中の球の球道が実際にどのようになっているかを確認しました.左打者に対する球道も右打者と同様になります.
実際の球道に対して中心衝突させてボールを打ち返す場合,どの方向に打ち返すことになるのかについて確認します.
マウンドの形状
マウンドとは、野球において投手が投球する区域のことである。上から見ると円形で、土を盛って周囲のグラウンドよりも高くなっている。中央には投手板(ピッチャーズプレート、ラバーとも)と呼ばれる白色の板が埋め込まれている。なお、投手の「登板」という語はこの投手板の位置につくことに由来する。
形状
直径18フィート(5.4864m)の円形に土を盛り上げた構造で、高さは10インチ(254mm)と決められている。俗にお碗を伏せたような形と言われる。マウンド中央に埋め込まれた投手板は横24インチ(609.6mm)、縦6インチ(152.4mm)の長方形で、本塁の五角形の先端から投手板の本塁側の縁までの距離は60.5フィート(18.4404m)である。投手の投球動作の際には、足が投手板に触れなければならない。投球練習場(ブルペン)では、マウンドはスペースの節約のため円形ではなく横長(蒲鉾形)になっている。引用元:ウィキペディア
ウィキペディアによると,マウンドの直径は18フィート(5.4864m)となっています. 仮に長身の投手がアウトステップして,サイドハンドの投球をおこなった場合でも,18フィート(5.4864m)の幅があれば, リリースポイントがマウンドの端にくることはまずないと考えられます.
中心衝突を求めたい場合は,センター返しを意識する

引用元:https://baseballking.jp/ns/145718
投手のリリースポイントがマウンドの端にくると想定した場合,中心衝突させるための打球線(弾道)は上図の右投手の投球線(球道)と左投手の投球線(球道)の間の範囲内に限定されます.
動画では 投球線(球道)に角度がついているように見えたかもしれませんが,リリースポイントがマウンドの端にくることは考えにくいので,実際の中心衝突の打球線(弾道) の範囲はもっと狭まることになります.つまり,センター方向に打つことを意識することで,中心衝突させることができると考えて差し支えないと思われます.
- 中心衝突の対象となる球種は速球系のボール(4シーム,2シーム,シンカー,カッター)で,厳密にいえば4シームのみとなる.
- スロー系(SFF,チェンジアップ,フォーク,スクリューボール),変化系(スライダー,カーブ,ナックルカーブ,スローカーブ,ナックル,スローボール)のボールは中心衝突の対象から外れるため,どの方向に打ち返しても問題ない.
- 中心衝突を求めたい場合は,センター返しを意識する.
- 偏心衝突に負けないスイングができれば,どの方向に打ち返してもよい.ただし,両肩を結ぶ線と肩は打球線(弾道)に対して90°で交わらなければならない.
- 球種,コースごとに中心衝突で打ち返す方向を考えながら打席に立つのは,現実的ではない.

引用元:ベースボール・サバント
「科学する野球」の「遠めの球は左中間,近めの球は右中間,真ん中の球はセンター方向へ打つ(右打者)」という中心衝突の考え方は,投手のボールが左中間,右中間からも投げられるのであれば,正しいといえます.
しかし,マウンドから投げる投手がそのようなボールを投げることはあり得ません.マウンドから投げるボールはプレートを踏む位置を変えたとしても,捕手にまっすぐ向かってくるボールとみなされるので,センター返しをすることがバットとボールを中心衝突させることになります.
なお,中心衝突では投球線(球道)と打球線(弾道)が一致するので,直線とみなされない球道のボール(速球系以外のボール,厳密にいうと4シーム以外のボール)は,中心衝突の対象外となります.