木製バットに対する諸注意

木製バットの選び方

引用元:科学する野球・打撃篇

 バットには竹製バットなどもありましたが,いま使われているバットは金属製バットと木製バットですが,わけても木製バットについてはどれほどの関心を持たれているでしょうか.
 テッド・ウイリアムズ著の『バッティングのサイエンス』を読みますと,彼は木目がこまかいバットを注文したと述べています.このような大打者がこういえば,木製バットは木目がこまかいのがいいのだなと思われるのも無理はないと思います.
 しかし,写真8を見ていただくとわかる通り,年輪のつまっている部分(木目のこまかい部分)は,材木の中心に近い年輪の粗い部分より年を経ていますから,材質としては老齢で反撥力が弱いのです.人間と同じで木目の粗い部分は若くて粘りもありますが,木目の細かい部分は老けており折れやすいのです.
 ですから木製のバットを選ぶには,木目は粗く,まっすぐ通っており,バットの先とグリップ・エンドの間に節目がないものを選ばなければなりません.

引用元:科学する野球・打撃篇

木製バットの手入れ

 ところで,木製バットの反撥力に非常に影響を与えるのは湿気です.
 湿気を防ぐためには,乾燥した部屋にバットをいれておかねばなりません.バットケースに入れたままにしておいてはいけません.バットケースに入れて持ち運びする時は,乾燥剤を入れておくといった配慮が必要です.
 特に雨中のゲームでバットを濡らしたあとは,手入れを十分に行わなければなりません.その手入れは,バットをアルコールで拭き,バットについた泥やゴミを落としたあと,十分に乾燥させます.そのあと牛の骨でバットをこすっておきます.こういったバットの手入れは雨のあとだけでなく,毎晩行ったとテッド・ウイリアムズ 氏は述べています.
 少し前の話ですが,某大学の選手がサイクルヒットを打った時,「バットを大切にすれば,バットに血が通い,打てるようになる」との考えから,試合用の木製バット二本を抱いて寝ていると話したことが美談めいて報道されたことがありました.
 これは考えてみますと,実に非科学的な話です.バットを抱いて寝れば,バットは自分の体から蒸発する水分で湿気ますので,バットの反撥力は落ちるのですから,バットを大切にしたい気持ちはわかりますが非科学的なことはしてはなりません.

引用元:科学する野球・打撃篇

バットの重さ

 さて,バットの重さについてはどうなのでしょうか.
 投手が投げた球の力と対決するバット(運動体)の力(f)は,f=m×a の公式から,バットの質量(m)と加速度(a)の相乗積を大きくすればするほど大きくなることがわかります.
 そこで,バットは重いほうがベターではありますが,筋力がそれに伴わないと,かえって加速度を落としてしまい,結果的には(f)を小さくしてしまうことになります.
 ですから,バットマンはその時の肉体状況に応じて,振りやすいバットを使用するのがよいということになりますから,シーズンに入る前に何本もバットを買って乾燥させておき,試合にはその中から振りやすいバット二,三本を選んで持って行くのがよいと思います.

引用元:科学する野球・打撃篇

バット職人の「木製バットの手入れ」

 まず、1番の木製バットの手入れとしては、バットに付着した泥を落とすことです。
 木製のバットは木材です。試合や練習中に小石などがバットにくいこんだ状態でボールを打つと、どんどん打ち味が悪くなっていきます。損傷から折れやすくなります。使用後は必ず乾いた布(ウエス)で拭いて下さい。
 但し木製バットは水分が大敵。決して水に濡らさないようにから拭きで。水で丸洗いなどは絶対に禁物です。
 次に打ち味(反発力を高める方法)として知られているのが、ヘッド部分を研ぐことで「木目を詰める」ことです。これはご家庭にあるビールの中瓶等(昔は「牛のツノ」「牛の骨」で行うものと言われていました)を用意してバットのボールが当たる部分に 全体重をかけてキュッキュッと押しつけます。
 これは、特にホワイトアッシュ(軟式用)のバットに効果的です。そもそもアッシュ材の性質上はボールを何度も打っていると木材が凹んでボコボコになってきます。その凹んでいる部分を成らすことで打ち味を良くします。表現としては磨くと言うわけではなく押し込むというものです。

引用元:http://www.mr-takumi.jp/description/care.html

 「科学する野球」では牛の骨でバットをこするとありましたが,引用元のホームページではビールの中瓶等でよく,特に軟式用のバットに効果的ということです.

バット職人の「木製バットの保管方法」

 なるべく直射日光の当たらない場所で、風通りの良い場所で保管してください。
 木材はバットの形になり、塗装をしたとしても空気と水分が出入りしています。そうすると木材は本来の姿(木工では木の癖と呼びます)に戻ろうとします。本来の姿とは、自然の木は太陽の方に傾くもので真っ直ぐ立っている訳では ございません。必ず反っているものです。木材として使われるときに人間に真っ直ぐに加工されるものです。
 つまり、日光が当たり水分を多く含むと自然に生きていた木の癖が出て自然に反ってしまうということです。ですので、保管場所には十分気をつけて下さい。
 次に、木製のバットは保管する時に、斜めに立てかけると良くないという話がありますが、確かに木製バットは自然のものですので、クリープ現象(材料に荷重を加えたときに、時間とともに変形が増大していく現象のことをいいます。)を起こすことがあります。つまり斜めに立てることで、木製バットが反ってしまうのです。
 但し、これは斜めに3年間放置しておくと、少し反るといった程度ですので、1日でクリープ現象が起きるということは、ほとんどなく、大げさな表現になります。完全に真横にして保管することもお薦めです。イチロー選手もやっているそうです。
 1番良いのは「垂直に立てる」ことですが、私は完全に「真横」にして保管することを お薦め致します。かのイチロー選手も、ベンチに戻るとスペースを空けて真横にバットを 置いているそうです。

引用元:http://www.mr-takumi.jp/description/care.html

一流選手のバットへのこだわり

 ◆強打者とバット 長嶋茂雄は牛骨でバットを磨いた。バットの芯を牛骨でなでると、牛骨の脂が木目に染み込み、その後に布で拭いて光らせていた。ロッテ時代の落合博満は米国からルイビル社製バットを200本取り寄せた。木目をチェックし、手の甲で芯の部分をたたいてその音で見極め、試合用に10本ちょっとを選び出した。イチロー、松井秀喜はオフにミズノの工場を訪問し、バット作りの名人・久保田五十一氏に依頼。イチローは巨人篠塚モデルで、ヘッド幅60・5ミリという細いものを使用。松井は96年に本塁打量産を目指し、左手のグリップの位置からヘッド部分にかけてバットをV字に削る「V字形」に変更。前年の22本から38本に本塁打を増やした。

引用元:https://www.nikkansports.com/baseball/wbc/2017/news/1776848.html

 長嶋茂雄が自著『野球は人生そのものだ』(日本経済新聞出版社)でこう書いている。<選手の晩年でもバットの芯のところを牛骨でよくなでた。牛骨でなでると、牛骨の脂がウッズの目に染み込み、そのあとを布でサァッと乾拭きすると、ピカピカになる。見ただけで打てそうな気がする。こういうことをすればバットに対する愛情もわくし、以心伝心というのか、用具にそれだけ愛情と執着を注げば、必ず結果が出るだろうと思った。だからプロ選手になってロッカーと我が家に牛骨を欠かしたことはない>
 そう言えば息子(一茂)を球場に忘れても、ミスターがバットを忘れて帰ったという話は聞いたことがない。用具への「愛情と執着」がミスターを大打者に育て上げたのだ。
 三冠王3度の落合博満(現中日監督)もバットへのこだわりは尋常ではなかった。梅雨時、湿気を含むためバットは若干、重くなる。必然的にスイングも鈍る。落合はそれを防ぐためジュラルミンのケースの中にバットを保管していた。
 最近ではイチローが“良き手本”か。数年前、バッターボックス付近に置いてきたバットをアンパイアが足でどかし、血相を変えて怒ったことがあった。イチローにとってバットは自分の魂も同然なのだろう。

引用元:https://www.ninomiyasports.com/archives/12215

 「科学する野球」では,技術論だけでなくバットの選び方から手入れ,重さについても述べられています.引用文も含めて参考にしていただければと思います.