日本シリーズで活躍した栗原陵矢選手のバッティング

 日本シリーズMVPに輝いた栗原選手の今期の成績は,118試合,打率.243(21位),本塁打17本(7位),打点73(4位),出塁率0.307(25位),長打率0.420(12位)となっています.

引用元:YouTube 栗原陵矢がホームランを打った際のバッティングフォーム.2020.08.18 ZOZOマリンスタジアム vs. 美馬学(マリーンズ)
前脚を高く上げる栗原選手

 栗原選手のバッティングの最大の特徴は,ステップ足を高く上げるところです.ステップ足を高く上げると位置エネルギー(mgh)が大きくなり,着地のときに運動エネルギー(1/2mv2)を最大にすることができます.栗原選手は体格(179 cm,75 kg)がそれほど恵まれているほうではないので,前方移動のエネルギー(1/2mv2)を大きくするために,このような方法をとっていると考えられます.ただし,球速に差し込まれやすくなり,目線がブレるため,打率が下がるリスクを伴います.
 身体運動での力学的エネルギーは,運動エネルギーと位置エネルギー (mgh)を合わせたものになり,運動エネルギーは,並進運動エネルギー (1/2mv2)と回転運動エネルギー(1/2Iω2)に分けられます.

肩を回してもバットが後ろに残り,スイングのタメができている.大谷選手の場合,この肩の回り具合だと,すでにインパクトしている.
空手打法で打っている.前脚の膝がよく伸びている.
栗原選手はバッティングにムラがあり,この打席のように「人」の形に近くなるケースは少ない.今シーズンのベストスイングと思われる.
インパクト直後,すぐに前脚の膝が曲がることから,完全な「人」の形で打てていないことがわかる.

 栗原選手の長所としては,グリップの位置 が体に近いこと,脇が締まりバッタをタメて空手打法で打っていることが挙げられます.また,インパクトまでに前脚の膝がよく伸びて,下肢のエネルギーを上肢に伝達する 第二動作 が行われていますが,「人」の形では打てていません.これは伝達するエネルギーが効果的にスイングの加速に使われていないことを示唆しています.栗原選手はどの打席でも前脚の膝がよく伸びており,下肢のエネルギーを上肢に伝達するという点で強みをもっています.
 短所としては,フライング・エルボーからグリップを上下するバックスイングを行っていないこと,ステップ足を高く上げることが球を捉える際の不確実性を引き起こしていることが挙げられます.
 総合的に判断すると,バットを後ろに残してスイングのタメをつくることができるところは最大の長所ですが,現段階ではものすごい活躍をする選手としての動作の条件は満たしていないと考えられます.今後のパフォーマンスに注目したいと思います.