アデル選手と大谷選手を比較する-打撃動作の5つの指標
2020年9月13日 投稿
ジョー・アデル選手の打撃動作を確認する
2017年のMLBドラフト1巡目(全体10位) のジョー・アデル選手と大谷選手の打撃動作を比較してみます. ウィキペディア によると,体格はアデル選手 が190.5 cm,94.3 kg ,大谷選手が 193 cm,95.3 kgとほぼ変わりません.


引用元:https://www.youtube.com/watch?v=RWDEqi1v3lo
アデル選手は,構えでグリップを体に密着させ,バックスイングでケン・グリフィー・ジュニア選手のように後ろ肘を背面後方に突き出して,グリップが前に出ないようにしています.高さも打ち出しの位置にあり,肘を先行させてバットを後ろにタメてスイングすることが可能です.



5つの指標を用いた打撃動作の比較
アデル選手と大谷選手を比較する際の指標として,以下の①から⑤を用います.①グリップの位置が体に密着しているか,②グリップの高さが打ち出しの位置になっているか,③ フライング・エルボー からヒッチ動作を利用して,肘を先行させてスイングしているか,④ 空手打法 を行っているか,⑤インパクト後,両手が伸び, 「入」の形 (左打者は「人」の形)になっているか.
大谷選手が④と⑤しかクリアしていないのに対して,アデル選手は①から⑤のすべてをクリアしています.さすがにドラフト1巡目に指名される選手だけあって,素材が 違うようです. MiLB.com によると,今季のMLBの成績は,9/13現在で打率 0.165,ホームラン3本 となっています.成績は大谷選手よりも下回っていますが,打撃動作は大谷選手をはるかに上回っています.今後,MLBを代表する打者に成長するのではないでしょうか.総合力,将来性ではアデル選手がはるかに上ですが、大谷選手のほうが出場機会を与えられています.
一点気になるのは,足を上げてタイミングをとっていることです.速球に対応するには,すり足のほうがよく,足を上げると重心が上下動するため,目線がブレてボールを捉えにくくなることが考えられます.
画像の引用元:https://www.youtube.com/watch?v=RWDEqi1v3lo
今季の活躍が期待されるアデル選手-ステップの変化
2022年4月8日 投稿
足をあまり上げないステップに修正したアデル選手
「アデル選手と大谷選手を比較する-打撃動作の5つの指標」では,アデル選手が大谷選手をはるかに上回っていることを説明しました.5つの指標は,①グリップの位置が体に密着しているか,②グリップの高さが打ち出しの位置になっているか,③ フライング・エルボー からヒッチ動作を利用して,肘を先行させてスイングしているか,④ 空手打法 を行っているか,⑤インパクト後,両手が伸び, 「入」の形 (左打者は「人」の形)になっているか,を用いました.
ただし,アデル選手にも欠点があり,「一点気になるのは,足を上げてタイミングをとっていることです.速球に対応するには,すり足のほうがよく,足を上げると重心が上下動するため,目線がブレてボールを捉えにくくなる」と述べました.しかし,今季のスプリングトレーニングを見る限りでは,この欠点は修正されているようです.
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=BAWU51kgG00Jo
上のスプリングトレーニング3/18のホームランの動画を見ると,ほとんど足を上げずにステップしていることがわかります.
続いてこちらは,アデル選手のMLB初ホームランを打ったときの画像です.かなり足を上げてステップしています.

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=RWDEqi1v3lo
スプリングトレーニングの3/18のホームランの動画に戻ります.




構えの画像とステップ足が着地したときの画像を比較すると,ステップ幅は大きいといえますが,足はほとんど上がっていません.すり足に近いステップに修正することで,速球に対応でき,体の上下動が抑えられるので,ボールも捉えやすくなることが考えられます.
ステップの修正により,アデル選手の打撃動作には特にこれといった欠点がなくなります.ですから,理論上はかなりの成績が期待されるということになります.ただ,アデル選手は常にフルスイングして,ボールを当てにいかないという特徴がありますから,打率はそこまで見込めないかもしれません.
初本塁打から悪化の一途をたどる打撃動作
2020年7月31日 投稿
グリップを高くする窮屈な構え
2020年7月29日の打撃動作を見ると,アデル選手の構えが変わっていることに気付きます.

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=RWDEqi1v3lo

引用元:https://baseballsavant.mlb.com/sporty-videos?playId=50ba0b91-f3d2-4162-b4c8-53807eba53a3
初本塁打のときはバットを肩に担ぐ感じで,腰が入り楽に構えていたのが,最近ではバットを立ててグリップを高くして構えることが多くなりました.腕に力が入って腰も入らず窮屈な構えになっています.
引用元:ベースボール・サバント
この打席ではそこまでバットは立っていませんが,グリップの位置が高く窮屈そうに構えているのは同じです.

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=RWDEqi1v3lo

引用元:https://baseballsavant.mlb.com/sporty-videos?playId=11a5211c-799b-4d4c-a655-e270c96dbf4d
初本塁打のときは,グリップを下げて,後ろ肘を背面側にヒッチし,胸の前が空いていましたが,この打席では後ろ肘のヒッチ動作というよりも,グリップを上げたまま,窮屈そうに体を回しているような感じで,胸の前も空いていません.
グリップが高いとインパクトでワキが締まりにくくなる

引用元:https://baseballsavant.mlb.com/sporty-videos?playId=11a5211c-799b-4d4c-a655-e270c96dbf4d
アデル選手がレフト線へ二塁打を打ったときのインパクトを見ると,ワキが空いたままインパクしていることがわかります.
グリップをあらかじめすぐに脇を締められる位置にもってきておくと,ヒッチ動作の後,ワキが締まり,肘を先行させてバットのタメをつくることができます.
アデル選手のヒッチ動作はバリー・ボンズのような上下の動きではなく,テッド・ウイリアムズ選手と同じく後ろ肘を背面側に突き出す動きになりますが,グリップを高くしたままヒッチしようとするのでうまくいかず,結果的に脇が空いたまま打っています.
初本塁打のバッティングを見たときはすばらしい素材の選手だと感じましたが,年々打撃動作が悪くなっているようです.もしかしたら,足を上げるステップから足を上げないステップに変えたことが悪影響をもたらしているのかもしれません.
残念ながらこのままグリップを高く保った窮屈なバッティングを続けるならば,バットのタメができず強い打球を打つことが難しくなるので,マイナー降格は時間の問題だと思います.