「 2020年12月 」一覧

木製バットに対する諸注意

木製バットの選び方

引用元:科学する野球・打撃篇

 バットには竹製バットなどもありましたが,いま使われているバットは金属製バットと木製バットですが,わけても木製バットについてはどれほどの関心を持たれているでしょうか.
 テッド・ウイリアムズ著の『バッティングのサイエンス』を読みますと,彼は木目がこまかいバットを注文したと述べています.このような大打者がこういえば,木製バットは木目がこまかいのがいいのだなと思われるのも無理はないと思います.
 しかし,写真8を見ていただくとわかる通り,年輪のつまっている部分(木目のこまかい部分)は,材木の中心に近い年輪の粗い部分より年を経ていますから,材質としては老齢で反撥力が弱いのです.人間と同じで木目の粗い部分は若くて粘りもありますが,木目の細かい部分は老けており折れやすいのです.
 ですから木製のバットを選ぶには,木目は粗く,まっすぐ通っており,バットの先とグリップ・エンドの間に節目がないものを選ばなければなりません.

引用元:科学する野球・打撃篇

木製バットの手入れ

 ところで,木製バットの反撥力に非常に影響を与えるのは湿気です.
 湿気を防ぐためには,乾燥した部屋にバットをいれておかねばなりません.バットケースに入れたままにしておいてはいけません.バットケースに入れて持ち運びする時は,乾燥剤を入れておくといった配慮が必要です.
 特に雨中のゲームでバットを濡らしたあとは,手入れを十分に行わなければなりません.その手入れは,バットをアルコールで拭き,バットについた泥やゴミを落としたあと,十分に乾燥させます.そのあと牛の骨でバットをこすっておきます.こういったバットの手入れは雨のあとだけでなく,毎晩行ったとテッド・ウイリアムズ 氏は述べています.
 少し前の話ですが,某大学の選手がサイクルヒットを打った時,「バットを大切にすれば,バットに血が通い,打てるようになる」との考えから,試合用の木製バット二本を抱いて寝ていると話したことが美談めいて報道されたことがありました.
 これは考えてみますと,実に非科学的な話です.バットを抱いて寝れば,バットは自分の体から蒸発する水分で湿気ますので,バットの反撥力は落ちるのですから,バットを大切にしたい気持ちはわかりますが非科学的なことはしてはなりません.

引用元:科学する野球・打撃篇

バットの重さ

 さて,バットの重さについてはどうなのでしょうか.
 投手が投げた球の力と対決するバット(運動体)の力(f)は,f=m×a の公式から,バットの質量(m)と加速度(a)の相乗積を大きくすればするほど大きくなることがわかります.
 そこで,バットは重いほうがベターではありますが,筋力がそれに伴わないと,かえって加速度を落としてしまい,結果的には(f)を小さくしてしまうことになります.
 ですから,バットマンはその時の肉体状況に応じて,振りやすいバットを使用するのがよいということになりますから,シーズンに入る前に何本もバットを買って乾燥させておき,試合にはその中から振りやすいバット二,三本を選んで持って行くのがよいと思います.

引用元:科学する野球・打撃篇

バット職人の「木製バットの手入れ」

 まず、1番の木製バットの手入れとしては、バットに付着した泥を落とすことです。
 木製のバットは木材です。試合や練習中に小石などがバットにくいこんだ状態でボールを打つと、どんどん打ち味が悪くなっていきます。損傷から折れやすくなります。使用後は必ず乾いた布(ウエス)で拭いて下さい。
 但し木製バットは水分が大敵。決して水に濡らさないようにから拭きで。水で丸洗いなどは絶対に禁物です。
 次に打ち味(反発力を高める方法)として知られているのが、ヘッド部分を研ぐことで「木目を詰める」ことです。これはご家庭にあるビールの中瓶等(昔は「牛のツノ」「牛の骨」で行うものと言われていました)を用意してバットのボールが当たる部分に 全体重をかけてキュッキュッと押しつけます。
 これは、特にホワイトアッシュ(軟式用)のバットに効果的です。そもそもアッシュ材の性質上はボールを何度も打っていると木材が凹んでボコボコになってきます。その凹んでいる部分を成らすことで打ち味を良くします。表現としては磨くと言うわけではなく押し込むというものです。

引用元:http://www.mr-takumi.jp/description/care.html

 「科学する野球」では牛の骨でバットをこするとありましたが,引用元のホームページではビールの中瓶等でよく,特に軟式用のバットに効果的ということです.

バット職人の「木製バットの保管方法」

 なるべく直射日光の当たらない場所で、風通りの良い場所で保管してください。
 木材はバットの形になり、塗装をしたとしても空気と水分が出入りしています。そうすると木材は本来の姿(木工では木の癖と呼びます)に戻ろうとします。本来の姿とは、自然の木は太陽の方に傾くもので真っ直ぐ立っている訳では ございません。必ず反っているものです。木材として使われるときに人間に真っ直ぐに加工されるものです。
 つまり、日光が当たり水分を多く含むと自然に生きていた木の癖が出て自然に反ってしまうということです。ですので、保管場所には十分気をつけて下さい。
 次に、木製のバットは保管する時に、斜めに立てかけると良くないという話がありますが、確かに木製バットは自然のものですので、クリープ現象(材料に荷重を加えたときに、時間とともに変形が増大していく現象のことをいいます。)を起こすことがあります。つまり斜めに立てることで、木製バットが反ってしまうのです。
 但し、これは斜めに3年間放置しておくと、少し反るといった程度ですので、1日でクリープ現象が起きるということは、ほとんどなく、大げさな表現になります。完全に真横にして保管することもお薦めです。イチロー選手もやっているそうです。
 1番良いのは「垂直に立てる」ことですが、私は完全に「真横」にして保管することを お薦め致します。かのイチロー選手も、ベンチに戻るとスペースを空けて真横にバットを 置いているそうです。

引用元:http://www.mr-takumi.jp/description/care.html

一流選手のバットへのこだわり

 ◆強打者とバット 長嶋茂雄は牛骨でバットを磨いた。バットの芯を牛骨でなでると、牛骨の脂が木目に染み込み、その後に布で拭いて光らせていた。ロッテ時代の落合博満は米国からルイビル社製バットを200本取り寄せた。木目をチェックし、手の甲で芯の部分をたたいてその音で見極め、試合用に10本ちょっとを選び出した。イチロー、松井秀喜はオフにミズノの工場を訪問し、バット作りの名人・久保田五十一氏に依頼。イチローは巨人篠塚モデルで、ヘッド幅60・5ミリという細いものを使用。松井は96年に本塁打量産を目指し、左手のグリップの位置からヘッド部分にかけてバットをV字に削る「V字形」に変更。前年の22本から38本に本塁打を増やした。

引用元:https://www.nikkansports.com/baseball/wbc/2017/news/1776848.html

 長嶋茂雄が自著『野球は人生そのものだ』(日本経済新聞出版社)でこう書いている。<選手の晩年でもバットの芯のところを牛骨でよくなでた。牛骨でなでると、牛骨の脂がウッズの目に染み込み、そのあとを布でサァッと乾拭きすると、ピカピカになる。見ただけで打てそうな気がする。こういうことをすればバットに対する愛情もわくし、以心伝心というのか、用具にそれだけ愛情と執着を注げば、必ず結果が出るだろうと思った。だからプロ選手になってロッカーと我が家に牛骨を欠かしたことはない>
 そう言えば息子(一茂)を球場に忘れても、ミスターがバットを忘れて帰ったという話は聞いたことがない。用具への「愛情と執着」がミスターを大打者に育て上げたのだ。
 三冠王3度の落合博満(現中日監督)もバットへのこだわりは尋常ではなかった。梅雨時、湿気を含むためバットは若干、重くなる。必然的にスイングも鈍る。落合はそれを防ぐためジュラルミンのケースの中にバットを保管していた。
 最近ではイチローが“良き手本”か。数年前、バッターボックス付近に置いてきたバットをアンパイアが足でどかし、血相を変えて怒ったことがあった。イチローにとってバットは自分の魂も同然なのだろう。

引用元:https://www.ninomiyasports.com/archives/12215

 「科学する野球」では,技術論だけでなくバットの選び方から手入れ,重さについても述べられています.引用文も含めて参考にしていただければと思います.


渡部健人選手(西武ドラフト1位)のバッティング

前方移動に急激なブレーキをかけて,大きな一次エネルギーを生み出す

 インターネットの情報によると,渡部選手は日本人の父親とフィリピン人の母親を持つハーフとのことです.甲子園出場経験はなく,高校通算本塁打が25本,大学通算60試合の成績は, 打率.293、60安打、10本塁打、37打点( 桐蔭横浜大学・神奈川大学野球連盟) で,大学日本代表候補となっています.

前足が着地したときに,後ろ足がフリーフット(地面から離れる)になっている.

 渡部選手の最大の特徴は,前足が着地したときに後ろ足がフリーフット(地面から離れる)になることです.「人」の形で打つ で述べたように,ステップによる前方移動にブレーキをかけて, 前方移動の運動エネルギー(一次エネルギー )をスイングに利用する必要があります.
 運動エネルギーは,並進運動エネルギーと回転運動エネルギーに分けられ, 前方移動の並進運動エネルギー は1/2mv2 で表されるので,112kg(m)という体重が有利に働き,大元の一次エネルギーを大きくすることができます.後ろ足がフリーフット になるということは,前方移動に急激なブレーキがかけられている証拠で,大きなエネルギーをスイング(体幹の回転運動エネルギー)に利用できるため,飛距離につながっていると考えられます.

NPBでは,体重のある選手は「人」の形で打たなくてもボールに力負けしない

完全な「入」の形 にはなっていない.

 ただし,「入」の形(右打者の場合)で打つことができているかというと,きれいな「入」の形とは言い難く,前脚の膝関節を伸展して下肢のエネルギー(二次エネルギー)を上肢に伝達するという動作は不十分といえます.NPBでは,体重のある打者は一次エネルギーを利用するケースがほとんどです.

 打った直後に前足がすぐに離れているので, 「入」の形で打てていないことがわかる. 「入」の形で打てていれば,後ろに体重がかかるため,前脚がイエリッチ選手のように残る 傾向がある.
空手打法は確認できるが,インパクト時に肩が今ひとつ回っていないため,バットのタメは小さい.

 フライング・エルボー については,グリップを上げた反動を利用してスイングを加速していますが,バットを立てて手元を下げる動作は行われていません.構えのグリップの位置はやや高めで,体からの距離は離れすぎてはいませんが,密着もしていません.
 渡部選手は 「科学する野球」のチェックポイントをすべて満たしていません.その満たしていない部分を,重量級の体格を活かした前方移動の運動エネルギー(一次エネルギー ) と空手打法でカバーする打撃動作となっています.
 NPBではMLBに比べ投手の球速が劣るため,「入」の形で打てていなくて力負けすることが少なくなります.中村剛也,山川穂高両選手のように活躍できる可能性があると考えられます.


大谷選手のコース別打率(2020年)

大谷翔平選手 コース別打率(捕手側から) 2020年 対右投手
引用元:ベースボール・サバント

 大谷選手のコース別打率(2018,2019年) で,大谷選手がゴルフスイングを行っているため,低めのコースの打率が高く,高めのコースは低打率になる傾向(対左投手では確認できず)があることを述べました.
 2020年のコース別打率を調べたところ,対右投手,対左投手ともに前述の傾向を確認することはできませんでした.対右投手では内角低めと外角の真ん中は.333,.462と打率は高いのですが,苦手であるはずの高めのボールのうち内角高めのボール球が.333となっています.対左投手ではど真ん中が.500,内角高め(ボール球も含めて)が打率が高くなっています.
  2020年のMLBは試合数が60試合に短縮されたため,大谷選手に投げられた球数は739(2019年の43.9%)と少なく,そのうち右投手が511( 2019年の42.4% ),左投手が228 ( 2019年の47.8% ) となっています.このような少ない球数ではデータの信頼性が低くなると考えられるため,2020年のコース別打率についてはっきりしたことはいえません.


上茶谷大河投手-内側側副靱帯を損傷する典型的な投球動作-

肩関節最大外旋角度が大きくなるのは,腕のしなりが不足している証拠

引用元:YouTube  【横浜DeNAベイスターズ・ドラフト1位!】上茶谷 大河(東洋大学・京都学園出身)を紹介!【最速151キロ】

 上茶谷大河投手は,2018年ドラフト1位で入団し,球団史上初の新人投手6連勝を達成(2019年の成績は7勝6敗).2020年は右肘炎症のため,2勝3敗に終わっています.東都大学野球リーグでは,リーグ新記録となる1試合20奪三振を達成しています.

捕手に正対したときに,前腕が地面と平行になり,肩関節最大外旋角度が大きくなる.肩関節最大外旋角度が大きくなるのは,腕のしなりが不足していることを示す.
肩関節最大外旋角度の内訳 引用元:https://www.baseballgeeks.jp/pitching/shoulder_flexibility/
リリース時に上腕が前方に倒れ,肘の突き出しが行われている.

肩を固定して肘を突き出すときに,内側側副靭帯に負荷がかかる

捕手正対時からリリース時にかけて,上腕がかなり倒され,肘が突き出されていることがわかる.

  肘関節は蝶番関節という一方向にしか動かせない関節で,本来腕の曲げ伸ばししかできません.横方向の動き(外反、内反)には対応できず,内側側副靭帯は外反を防ぐ役割を担っています.
 もし,投手が腕を地面に対して垂直にした状態でボールを投げた場合(オーバースロー),腕の動きは単なる腕の曲げ伸ばしになります.横方向の動きは生じないため,内側側副靭帯を損傷することはありません.
 しかし,スリークォーター,サイドスローへと上腕が外側に傾くにつれて, 横方向の動き(外反)が生じてきます.上腕が外側に傾いた状態で肘を突き出すと,前腕が後方に振られる(肩関節外旋)力が生じ,その際に過度の外反ストレスがかかります.その結果,外反を防ぐ役割を担う内側側副靱帯が損傷します.

捕手正対時からリリース時にかけて,上腕が90°近く倒されている.

 この肘を突き出す動作は,上方からみると肩を中心とする半径(上腕:肩関節から肘関節まで)の円運動になります.捕手正対時から肘を突き出すときに上腕を半径とする円運動が行われ,前腕が後方に振られる(肩関節外旋)力が生じますが,円運動の中心である肩関節が固定された状態でないと,この力は生じません.つまり,捕手正対時からリリースするまで肩を固定する(上体を倒さない)ことが前提となります.
 動画でもわかるとおり,上茶谷投手は上体を倒さず,ほぼ肩を固定したままリリースしています.肩を固定したまま,これだけ大きな肘の突き出しが行われるならば,上茶谷投手はスリークォーターで上腕も外側に傾いていて,腕を振る力も大きい(球速も大きい)ことから,過度の外反ストレスがかかっていることは間違いありません. 
 今後もこの投げ方を続けていくならば,内側側副靱帯を損傷する可能性は極めて大きいといわざるを得ません.


山川穂高選手のバックスイング

バットを立てたほうが,グリップを下げやすい

 山川穂高 バッティングフォーム&バッティング(スローモーション)【201951 ホームラン】
引用元:YouTube

 山川選手のバックスイングを見て,バットを立ててそのまま下に引く動作に気づいた方もおられると思いますが,この動作は,フライング・エルボー からスイングに入る動作の第一段階の動作にあたります.
  フライング・エルボーからスイングに入る動作は,後ろ肘(グリップ)をいったん下げ,下げた反動を利用して後ろ肘(グリップ)を上げるバックスイング動作(第一動作)と,第一動作で後ろ肘を上げた反動を利用して,肘を先行させてスイングする動作(第二動作)からなります.この二つの動作は連動した動作になります.第一動作のバックスイングでいったん手元を下げるため,その際にバットが立ちやすくなります.

バックスイング(第一動作)の始動:いったん手元を下げる.胸が空いて,このときにバットが立ちやすくなる.
グリップを下げた反動を利用して,後ろ肘を高く上げた時点で,バックスイング(第一動作)が終了する .
肘を先行させてスイングする動作(第二動作) : バックスイング(第一動作)で後ろ肘(グリップ)を上げた反動を利用して,肘を先行させてスイングする.
インパクトがフック・グリップとなっており,空手打法を行っていることが確認できる.

 このバックスイング動作を行うには,フライング・エルボーになっていることが前提になります.構えがフック・グリップになっていないと,後ろ肘が横に張り出すフライング・エルボーにはならず,空手打法もできません.