「 2020年12月 」一覧

左対左のコース別投球割合-大谷,筒香,秋山選手-

大谷選手-対左投手,全球種

2020 対左投手 コース別投球数(左), 2020  対左投手  コース別投球割合%(右)
引用元:ベースボールサバント

 2020年は 新型コロナウイルスの影響により、試合数は60試合に短縮されました. 投球数を見てもわかるように左投手と対戦する機会も激減しています.しかし,左打者に対する左投手の攻め方ははっきりしており,外角低めのボール球に集中しています.


筒香選手-対左投手,全球種

2020 対左投手 コース別投球数(左),2020  対左投手  コース別投球割合% (右)
引用元:ベースボールサバント

 大谷選手と同様に,外角低めのボール球に集中しています.


秋山選手-対左投手,全球種

2020 対左投手 コース別投球数(右),2020  対左投手  コース別投球割合%(左)
引用元:ベースボールサバント

 投球数が少ないにもかかわらず,外角低めのボール球に集中することに変わりはありません.想像はつくことですが,左打者に対する左投手の攻め方がパターン化されていると考えられます.サンプル数が少ないため,打率のデータは載せていません.


バットとボール(球道)とは90°で衝突させる

トンカチの柄とクギとの角度は90°になる

引用元:科学する野球・打撃篇

 図66を見てください.トンカチの頭の打撃面とクギの頭とがどういう角度で衝突するかによって,㋺のように中心衝突を起こす場合もあれば,㋑や㋩のように偏心衝突を起こす場合もあります.
 そこで,トンカチとクギとを中心衝突させるには,㋺で見られる通り,トンカチの柄とクギとの角度を九〇度にしなければならないことがわかります.㋑の偏心衝突では,トンカチの柄はクギに対して九〇度より鈍角であり,㋩の偏心衝突では,九〇度より鋭角になっています.いうまでもなく㋑㋩の偏心衝突では効果的な打撃は求められません.
 これは,バットとボールとの衝突においても同じような現象がみられます.そこで,図66の㋑㋺㋩の衝突角度にならって,バットとボールとの衝突を描いてみますと,図67の㋑㋺㋩ となり,㋑と㋩は偏心衝突,㋺は中心衝突です.㋺は中心衝突では,バットとボールとが九〇度の角度で衝突していることはいうまでもありませんが,インパクトの時点でバットがボールと九〇度で中心衝突したときの衝撃(球の力)に耐えるには,図68の通り,トップ・ハンド側の前腕部がバットと九〇度の角度を保てませんと力の均衡がはかれません.

引用元:科学する野球・打撃篇


引用元:科学する野球・打撃篇 ※写真はテッド・ウイリアムズ選手  


ミート・ポイントの論争に決着をつける

 また,その前腕部も腕の力だけではなく,肩の力(注・肩の力はテークバックのトップの位置からミート・ポイントまで肩を回すことによって生まれる.)をも合力しなければ,球の力に打ち勝つことができないから,写真22のように,両肩を球道に対して九〇度になるまで回すことが必要となります.
 ということは,インパクトの時点で,バットが九〇度の角度でボールを捉えるには,バットと両肩の線が並行でなければならないということになります.
 ですから,両肩の線が球道と九〇度以上の鈍角で交われば,バットは図67の㋑となり,九〇度以下の鋭角で交われば,バットは図67の㋩となり, その結果はいずれも偏心衝突を起こすことになります.図69はトップ・ハンド側の前腕部とバットとが鋭角でインパクトし,ボールに食い込まれているのがよくわかります.
 日本の野球界では,ミート・ポイントについて,「前で打て」とか,「呼び込んで打て」とか,「引きつけて打て」とか,あるいは「ホームベースの一〇センチ前で打て」とか,また「前足のカカトの前でミートせよ」とか,指導上いろいろのことがいわれていますが,これらの表現は,いずれも指導者の個人個人が経験的に感覚的に捉えたものであり,物理的に解明されたものではありません.
 中心衝突を求めるために,バットとトップ・ハンド側の前腕部と両肩の線を,それぞれ九〇度の角度に保ち,バットが球道に九〇度で交わる点がミート・ポイントであると物理的に定義づけると,いままでミート・ポイントについていろいろ論争されてきましたが,これで決着するはずです.

引用元:科学する野球・打撃篇


 トンカチでクギを強く打ち込む(中心衝突させる)には,トンカチの柄とクギとの角度を90°にしなければならないので,図68のように両肩を結ぶ線とバットが並行になり,それぞれ球道に対して90°になります.球道に対して打ち返すことになるため,投球線(球道)と打球線(ミート・ポイントからボールが打ち返され得る球筋)が一致します.


インパクト後,手首をすぐに返してはいけない

中心衝突させても,手をこねると偏心衝突になる

 トンカチとクギとを中心衝突させても,そのあとすぐにトンカチを握っている手をこねると,トンカチの頭はクギからはずれてしまい,十分なエネルギーをクギに与えることができません.ですから中心衝突で打ち終わったあとも,手をこねないでトンカチの頭に「残心」を保たなければなりません.これと同じことがバッティングでもいえます.
 また,手首を返しますと,後ろ腕の力に前腕が負けて,前腕が伸ばされることなく折りたたまれ両腕を伸ばすことができません.インパクト後,両手を伸ばすことなく振られたバットの遠心力は,両腕を伸ばして振られたバットの遠心力より小さいのですから,打球も遠くに飛ばなくて当然といえます.
 ですから,インパクト後すぐに手首を返してはならないのです.インパクト後は手首の返しではなく,両腕をまっすぐに伸ばすことだけを考えればよいのです.両腕をまっすぐに伸ばし切った時点で,バットに働いた遠心力で,写真14のように手首は返らざるを得なくなります.手首は返すのではなく返るものなのです.

引用元:科学する野球・打撃篇

手首は返すのではなく返るもの

引用元:科学する野球・打撃篇

 日本の野球界には,インパクト後すぐに手首を返せという指導がいまだに根強く残っています.これは,インパクト後 すぐに手首を返して,後ろ腕の力をバットに加えて,ボールの力をはね返そうとする考えから行われたものですが,とくに戦前の中学(現高校)野球,大学野球では,

(イ)バットは水平に振れ.
(ロ)上体をかぶせて前で打て.
(ハ)インパクト後すぐに手首を返せ.

 を水平打法の基本として指導していましたから,こういう指導を受けた方たちから,戦後の青少年でこれを受け継いでいる方たちまでを含めると,その数はいまもなお相当数に上るはずですから,インパクト後すぐに手首を返してはいけないといっても,この方たち全部に洗脳してもらうには時間のかかることだと思われます.現にマスコミ評でインパクト直後のすばらしい手首の返しといった表現がいまだに見聞される有様です.とにかく,日本の野球界から, インパクト直後の手首の返しという誤った常識を早く追放しなければなりません.

引用元:科学する野球・打撃篇

 インパクト後すぐに手首を返すと,偏心衝突を起こしてボールに力を加えることができなくなります.実際には手首を返して強い打球を打つことができる場合があり,そのように打っている選手もいます.しかし,手首を返してトンカチで釘を打つ難しさ,確率の低さを考えると,合理的な打ち方とはいえません.


ソフトバンクが強い理由

フィジカルの強さと技術の向上は別物

 日本シリーズ4連覇を達成したソフトバンクについて,なぜ強いのかということが話題になっています.

・ダルビッシュ投手のYouTube動画「ソフトバンクの強さやセ・パの大きな違い」https://www.youtube.com/watch?v=XM3cIMsHkZ0
・高木豊氏の YouTube動画 「【多村仁志さん登場】本当にソフトバンクが強いの!?多村さんが感じたセリーグとの差について語ります!!」https://www.youtube.com/watch?v=a8FHjrqF7mM

 両方の動画で共通した理由が述べられている部分があります.

 ダルビッシュ投手と多村氏ともに,フィジカルの部分を挙げています.多村氏がすごかったというくらい,選手はウエイトトレーニングをおこなっていたようです.ウエイトトレーニング 室にはあらゆる種類のサプリメントが並び,2005年当時からみんなパーソナルトレーナーを自腹で雇って専門的なトレーニングをしていたとのこと.また,キャンプ中の食事も外食に行かなくてもよいくらい豪華で,体づくりをするための環境が整っていたことがソフトバンクの強さの一因として挙げられています.

 この動画を観た方は,野球が上手くなるためにはウエイトトレーニングが必要だから,ボディービルダーのような体をつくらなければならないと思われた方も多いと思います.しかし,体作りと技術の向上は別物です.
 野球選手にボディビルダーの筋力は必要か で述べたように,特異性の原則に則ったウエイトトレーニングであれば,投手の腕の振りのスピード,打者のスイングスピードの増大が期待できますが,ダルビッシュ投手に「体を大きくする」ということばが出ていることから,ボディービルダーよりのトレーニングであったことが推測できます.
 もちろん,ボディービルダーのトレーニングでも効果は出ますが,特異性の原則に則ったウエイトトレーニングに比べるとその効果は小さいものになります.ですから,体をつくることは大事なことですが,ソフトバンクの選手がウエイトトレーニングに力を入れていたことが強さの根本的な理由になることは考えにくいということです.副次的なプラス面として位置づけするのが適当です.
 練習量がものすごかったという話も出ているので,むしろ特異性の原則に則った投げ込みや打ち込みをおこなうことで,投手のスピード,スイングスピードが増大したと考えることもできます.

合理的な動作ができている選手がどれだけいるか

 たとえば,成績が低迷している打者がいるとします.この選手がソフトバンクを見習ってウエイトトレーニングに励み,栄養も十分に摂って大きな体を作ることに成功したら,パフォーマンスは向上するでしょうか.答えはNoです.なぜなら成績が低迷している原因は打撃動作にあるので,いくら体づくりをしたところで打撃動作を改善しない限り,パフォーマンスは向上しないからです.ソフトバンクは育成出身で活躍している選手が多くいますが,ウエイトトレーニングをしたから活躍しているわけではなく,動作なかに技術向上の裏付けがあるはずです.
 つまり,チームの強さは投手,野手に合理的な動作ができている選手がどれだけいるかということにかかわってきます.ソフトバンクには柳田選手のようにパフォーマンスが高い選手もいますが,「科学する野球」でも指摘されているように,残念ながら日本人選手よりも 外国人選手のほうが動作では上を行っています.日本シリーズも含めソフトバンクほど投打ともに外国人選手が成績を残しているチームは他にないのではないかと思います.

 


大谷選手に2シームが投げられなくなった謎

大谷選手の球種別打率-対右投手, 速球系

大谷翔平 球種別打率 2018-2020 対右投手 速球系
対右投手球種全投球に占める割合 %打率
201820192020201820192020
速球系4シーム32.637.533.5.293.293.147
2シーム9.67.2.391.563—–
カッター9.65.410.0.273.133.200
シンカー7.95.210.4.316.400.533
全球種59.755.353.9.309.317.254
引用元:ベースボール・サバント
※投球なし

 上図は大谷選手の対右投手の速球系の打率の推移をまとめたものです.大谷選手は元々速球系のボールに強く, 2018,2019年 ともに3割以上の打率を残していました.特に2シームとシンカーを得意にしており,2019年は2シームが0.563,シンカーが0.400の高打率となっています.
 そてでは,2020年の得意球の打率はどうだったかというと,2シームは一球も投げられていません.シンカーは0.533の高打率で得意球であることを証明しています.まず疑問に思うところは,シーズンを通して2シームがインターリーグも含めて,一人の打者に対して一球も投げられないことがあるかということです.あるとすれば,大谷選手が2シームに強いという情報がMLB30球団すべてに行き渡っており,大谷投手に一球も投げなかったということが考えられます.


大谷選手の球種別打率-対左投手, 速球系

大谷翔平 球種別打率 2018-2020 対左投手 速球系
対左投手球種 全投球に占める割合 % 打率
201820192020201820192020
速球系 4シーム 22.529.628.5.421.280.083
2シーム 12.48.6.143.111—–
カッター 4.811.94.8.100.417.000
シンカー 14.98.027.2.353.333.273
全球種 54.658.160.5.283.291.148
引用元:ベースボール・サバント
※投球なし

 次に対左投手の打率の推移をみると,左投手が打てないといわれる中,速球系については,.283(2018),.291(2019)と比較的高い打率を残しています.対右投手と同様にシンカーには強いようですが,2シームについては,2018年が0.143,2019年が0.111と対右投手とは逆に全く打てていません.苦手球になっています.
 それでは,2020年の苦手球の打率はどうだったかというと,2シームは一球も投げられていません. 対右投手の場合は,大谷選手が高打率を残していたため,他球団が警戒して投げなかったと思いきや,対左投手では苦手球となっている2シームを一球も投げていないという訳のわからないことになっています.
 単にMLBが2シームを誤って全球4シームと判定したのか,対左投手の打率など調べず,対右投手が打たれているから,2シームを投げないようにという大雑把な指示を出したのかよくわかりません.