「 2020年11月 」一覧

大谷選手のコース別打率(2018,2019年)

対右投手 コース別打率 全球種

 新田打法で打つ大谷選手 で,大谷選手がゴルフスイングでバッティングを行っていることを説明しました.実際に大谷選手は,ゴルファーのように肩を回さずにボールを打っています.
 ゴルフでは地面に置いたボールを打つため,両肩を結ぶ線がスイングの軌道と水平に保つのがよいのですが,野球では動いてくるボールの力に負けないように肩を回してボールを打ちます.

ゴルフと野球とではインパクト時の肩の回り具合が異なる. 引用元:科学する野球・打撃篇

 大谷選手がゴルフスイングでボールを打つ場合, ゴルフでは地面に置いたボールを打つため,まず,低めのボールが打ちやすくなると推測することができます.低めのボールでも体に近いほうが打ちやすくなるため,内角低め,真ん中低め,外角低めの順に打率がよくなっていることが考えられます.

大谷翔平選手 コース別打率(捕手側から) 2018,2019年 対右投手
引用元:ベースボール・サバント

 2018,2019年の対右投手のコース別打率は,予想したとおり,真ん中より下のコースで打率が高くなっていることを確認できます.ゴルフスイングで打っているため,内角低めのボールの打率が高く得意のコースになっています.同じ低めでもミートポイントが体から離れる外角低めは少し打率が下がります.それでも3割以上打っています.
 ゴルフスイングでは地面に置いたボールを打ちますから,高めのボールを打つ想定にはなっていません.したがって,野球で高めのボールをゴルフスイングで打つこと自体に無理があります.実際,高めのコースは低打率となっています.

対左投手 コース別打率 全球種

大谷翔平選手 コース別打率 (捕手側から)  2018,2019年 対左投手
引用元:ベースボール・サバント

 対左投手のコース別打率については,2018,2019年で共通する傾向を見いだすことができません.たとえば,2018年は低めのコースが打てていませんが,2019年は内角低め,外角低めは高打率になっています.
 理由の一つとして考えられるのが,サンプル数の不足です.2018年に大谷選手に投げられた球数は1455で,そのうち右投手が1019(70%),左投手が436 (30%),2019年は球数が1683,右投手が1206(71.7%),左投手が477 (28.3%) となっています.左投手の投球数が非常に少なくなくなっています.
 コース別打率の分母は実際にコースに投げられたボールの数ではなく,打者が打って結果( ヒットかアウト )が出たボールの数になります.打ってもファールになったボールや,見逃したボール(三振,四球,カウント)は含まれません.つまり,打者が対戦した投球数が少ないと,極端にいえば,コースによっては1打数1安打で1.000,2打数1安打で.500ということが起こりえます.苦手なコースでも高打率になったり,本当は得意なコースなのにたまたま打てなかった,苦手な球種だったなどの理由から1打数0安打で.000になってしまう可能性も否定できません.投球数自体が少ないとデータの信頼性が失われます.
 


ワキは締めるのではなく,空手打ちで締まる

フック・グリップで構えるとワキが締まる

 このように,脇が空いてはいけないといって,バッティングのはじめから終わりまで脇を締めさせると,手や腕は自由に使えないし,肩にも力が入ってしまい,バッティングになりません.
 ところが,図127,128のように,インパクトで両脇が締まるのは,トップハンド側の手と腕は外捻し,ボトムハンド側の手と腕は内捻しているからなのです.このようにインパクトで両脇が締まると,手や腕はボディとワン・ピース(一体化)となり,インパクトでの衝撃をはねかえして強打することができます.意識して両脇をことさらに締めてみると,肩に力が入り,手や腕の力が分散して強打することができません. 

引用元:科学する野球・実践篇
引用元:科学する野球・実践篇

 そこで,脇は締めるのではなく,締まるのでなければならないのだが,それには構えのときのバットの握り方が重要で,この点からも,バットを雨傘をさすような感じで握ってはならないのです.インパクトで両脇が締まるのは, 図127,128のように 空手で打っているからで,そのためにはバットをフック・グリップ(写真80)で握らなければならないのです.

引用元:科学する野球・実践篇

フック・グリップの握り方

引用元:科学する野球・実践篇

 そして,グリップの位置は,できるだけバットの発射位置に近く構えることの他に,図129のように前方とピッチャーとを結んだ線上になければなりません.この線より前の位置で構えていると,フォワードスイングで肩を回すときにグリップが投球線の方に出て,アウトサイド・インに振るようになります.

引用元:科学する野球・実践篇
引用元:科学する野球・実践篇

 村上氏は「脇は締めるのではなく,締まるものである」と述べられています.脇を締めるには,フック・グリップ[トップハンドを手の平の方に曲げ(掌屈),ボトムハンドを手の甲の方に曲げる(背屈) ] にしておく必要があり, フック・グリップ で構えると後ろ肘が横に張り出してフライング・エルボーになります.構えの最初から脇を締めるのではなく,フライング・エルボーから脇が締まるということです.ただし,グリップの位置が体から離れると,脇が空くため脇を締めることが不十分となり,グリップの位置が前方になるためアウトサイド・インのスイングになります.


脇が空くとバットを後ろにタメることができない

ワキが締まると,グリップが前に出るのを防ぐことができる

ワキは締めるのではなく,空手打ちで締まる で,フック・グリップで空手打ちを行うことによって,脇が締まることを紹介しました.脇が締まると,肩を回してもバットを後ろに残してスイングのタメをつくることができます.

肩を回してもバットを後ろにタメているジョー・ディマジオ選手
引用元:科学する野球・打撃篇

 脇が締まるとなぜディマジオ選手のようにバットを後ろに残せるかというと,脇が締まることで後ろ腕の上腕(肩から肘までの部分)が体に密着し,グリップの前方移動にブレーキをかけることができるからです.そのため,肩を回してもグリップの位置を固定することができます.もちろん脇が締まるためには,構えでグリップの位置を体に近づけておくことが前提となります.

バットを後ろにタメるための条件

 さらに,写真( ディマジオ選手 )のようにグリップを体に密着した(ワキが締まった)状態でフック・グリップにすると,バットを体に巻きつけるように後ろに残すことができます.

①フック・グリップで構える
※フック・グリップで構えると,後ろ肘が捕手側に張り出し,フライング・
  エルボーになる.

②構えでグリップの位置を体に近づけておく

の二つがバットを後ろにタメるための条件になります.

肩を回さずにボールを打つ大谷翔平選手 スイングのタメがつくられていない.
引用元:YouTube

 同じフック・グリップで構えても,大谷選手のようにグリップの位置が体から大きく離れると,脇が空くため上腕が体に密着せず,肩を回すことに伴うグリップの前方移動にブレーキをかけることができなくなります.
 実際にやってみるとわかりますが,脇が空いたまま肩を回してバットを後ろに残そうとしても,肩が回るのと一緒にグリップも前方に出てしまいます.そして肩を回したつもりでも実際にはあまり回っておらず,手元が思ったよりも前に出て,手で打ちに行っていることに気づきます.これは写真の大谷選手の打ち方(ゴルフ・スイング)と同じです.ゴルフ・スイングについては,詳しくは,新田打法で打つ大谷選手 をご覧ください.
 大谷選手の打撃動作にみられる重大な欠点 でも説明していますが,グリップの位置を体から大きく離すことが大谷選手の打撃不振の元凶になっています.


門田博光選手のグリップの位置を確認する

門田選手とグリフィー選手の構えの共通点

 身長170㎝でNPB歴代3位の567本の本塁打を記録した門田博光選手.40歳にして打率.311、44本塁打、125打点で本塁打王、打点王の二冠を達成.ホームランバッターのグリップの位置を確認します.

大谷選手とは対照的に構えでグリップを体に密着させる門田博光選手
ケン・グリフィー・ジュニア選手と同様に肩を回して,グリップを体に密着させ,肩越しに投手を見る門田博光選手

 インサイド・アウトにスイングするためには(アウトサイド・インのスイングを防ぐためには),グリップの位置を体に近づけておかねばなりません.ホームランバッターの門田選手にもこのことを確認することができます.
 また,門田選手はグリフィー選手と同様に,あらかじめ構えで体幹を捕手側に捻って,グリップの位置が体から離れないようにしています.大谷選手は,逆にグリップの位置を体から離して構え,バックスイングで体を捻りますが,グリップと体は離れたままです.
 グリップの位置を体に密着させフック・グリップで構えると,ワキが締まり,肩を回してもバットを後ろに残すことができるため,右方向,センター方向,左方向すべてにスイングのタメをつくって打つことが可能になります.


新田打法で打つ大谷選手

肩が回ってもバットが後ろにタメられているか

 野球とゴルフの違い で述べたように,『 新田打法 』ではバットのタメができないため,ボールを強く打つことは難しくなります.つまり,ゴルフのスイングで野球のバッティングをすること自体が間違っているということです.「科学する野球」の著者である村上豊氏は 『 新田打法 』 を完全否定し,「バッティングもゴルフもレート・ヒッティングすることにおいては,本質的には同じであっても,特に球の条件が違いますので,その打撃動作には両者に違いがあることを認識され,野球もゴルフも同じであるとか,ゴルフも野球も同じであるとかといった妄言は慎んで欲しいものです」と述べられています.

大谷翔平 グリフィー選手と比べると,バットのタメがないまま打っていることがわかる. 
引用元:YouTube

 画像は2018年7月23日に8号ホームラン(2シーム 93.5mph,センター方向 )を打ったときのインパクトです.バットのタメを判断しやすくするため,センター方向に飛んだホームランを選んでいます.
 画像を見てもわかるように,大谷選手は肩が回っていないままボールを打っています.この打席だけではなく,2018~2020年のホームランでもほぼ全打席が肩を回さないゴルフ・スイングになっています.本来ならば,この肩の開き具合では,まだバットは後ろにタメられていなければなりません.
 このようなゴルフ・スイングでは打てないはずですが,2018,2019年にある程度打てた理由については,体格の大きさから運動エネルギーが大きくなることの他に,空手打法で打っていること,「人の形」で打って下肢のエネルギーをうまくスイングの加速に取り込んでいることにより,バットのタメがないマイナス面をカバーしていることが考えられます.
 ただし,『 新田打法 』のゴルフ・スイングで野球のスイングをすることが間違っているという前提に立てば,2018,2019年はたまたま打てたけれども,今後もこのスイングを続けて行けば,多少の変動はあるとしても2020年の成績あたりで推移すると考えることもできます.

ケン・グリフィー・ジュニア選手 肩がここまで回ってもバットは後ろにタメられている.一流選手は皆バットを後ろに残し,スイングのタメをつくっている.大谷選手のゴルフ・スイングで一流選手の仲間入りをすることはまず考えられない.
引用元:https://thedigestweb.com/baseball/detail/id=23893