「 2019年12月 」一覧

イエリッチ選手のバッティング

日系三世の強打者

 ナショナルリーグで2年連続で首位打者となったクリスチャン・イエリッチのバッティングを見てみます.今シーズンは本塁打も44本記録しており,長打力も兼ね備えています.ウィキペディアによると、母方の祖父が日本人でクォーターとのことです.

母方の祖父はミネオ・ダン・オダという日本人であり,その血が1/4流れる日系三世である。母方の祖母はドイツ,イギリス,オランダ,スコットランドの血を引く家系であり,フットボール選手だった曽祖父のフレッド・ジャーク(英語版)はNFLで殿堂入りを果たしている.父方はクロアチア移民の家系.弟のコリン・イエリッチは2015年にドラフト29巡目でアトランタ・ブレーブスに入団した捕手で,2016年12月24日に当時兄が所属していたマーリンズとマイナー契約をした.

引用元: ウィキペディア


「人」の形で打つことは,MLBで活躍するための最低限の打撃動作

Christian Yelich Home Run Swing Slow Motion 2018-1(#32)
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=JhfrNGT09Gc&feature=emb_title

 動画ではイエリッチ選手のホームランのスイングを横方向から見ることができます.ボールのコースによってスイングは変わりますが,ほぼ真ん中寄りのボールをホームランにしています.大谷選手とは違い,前足を上げてステップしていますが,タイミングをとることが上手く,速球,変化球どちらにも対応できる選手のようです.バックスイングでは,後ろ肘を フライング・エルボー にして,肘を上げ,反動をつけて肘を先行させていることがわかります.前足の着地後,下肢からエネルギーを上肢に伝達して,バットのヘッドスピードを大きくし,インパクトでは 空手打法 でボールを打っています.

  体幹を後方に倒す動作の中でバットのヘッドスピードを大きくしているため,インパクト後は 「人」の形 になり,軸足で体重を支えステップ脚が伸びたままかかとを地面に置く体勢になります.この動作はMLBで活躍している選手なら誰もが行っている動作であり,日本人選手がMLBである程度の成績を残そうとするならば,身に付けておくべき最低限の動作になると考えられます.

「人」の形で打つ イエリッチ選手
「人」の形で打つ イエリッチ選手 
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=JhfrNGT09Gc
打った後、ステップ脚が伸びたまま残るイエリッチ選手
打った後,ステップ脚が伸びたまま残るイエリッチ選手 
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=JhfrNGT09Gc


「人」の形で打つ大谷選手

村上豊氏の指摘

 前回の記事で,キム・ジェファン選手がボールを打った後に,体幹が後方に倒れ,前脚の膝が伸びて前足のかかとが地面と接することを紹介しました.実はこの他にも,インパクト後に両腕が伸びたときに前脚と体幹が一直線になるという打撃動作の特徴があります.左打者であれば「人」 ,右打者であれば「入」の形になります.

 この動作は,「科学する野球」の著者である村上豊氏によって,30年以上前にすでに指摘されています.ただ,村上氏は前脚に体重を乗せて軸として打つことの重要性を説いていましたが,実際は下肢から生み出したエネルギーを上肢に伝達して体幹を回旋,後傾することで,バットのヘッドスピードを速くしています.

「人」の形で打つ大谷翔平選手
「人」の形で打つ大谷翔平選手 引用元:https://www.youtube.com/watch?v=uOYjB3H2eOo

NPBでも「人」の形で打っていた大谷選手

 大谷選手が 「人」の形で打ってい ことは,能力の非凡さを証明しています.この打法では,下肢のエネルギーをスイングスピードに利用できるため,飛距離が出ることが特徴です.この打法を身に付ければ必ずMLBで40本ホームランを打てるかというと,必ずしもそうとはいえませんが,MLBで活躍するには必要不可欠な動作といえます.大谷選手は当てるのがうまいので,個人的にはアベレージヒッターのほうが成功するのではないかと思います.

NPBでも 「人」の形で打っていた大谷翔平選手
NPBでも「人」の形で打っていた大谷翔平選手 
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=o5WxFKSz0Fo

 大谷選手はNPBでは前足を上げてステップしていましたが,MLBでは投手の球速が速く,前足を上げると差し込まれてしまうため,少しだけ足を上げるステップに修正しています.動画を見ると日ハムのときからすでにこの日本人にはなかなか真似できない打法を修得していることがわかります.成績は別として,素質自体はすばらしいものを持っている選手といえます.

「人」の形で打つキム・ジェファン選手
完全な「人」の形にはなっていないキム・ジェファン選手 
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=-H1mOO7fENU

 因みにキム・ジェファン選手も「人」の形で打とうとしていますが,体幹の後傾が少し足りていません.大谷選手の方が完全な「人」の形になっています.


打った後に前脚が残るキム・ジェファン選手

NPBでは見られない打撃動作

 プレミア12の韓国とアメリカの試合で、韓国のキム・ジェファン選手がホームランを打ったニュースをたまたま見たのですが, その打撃動作に大変驚きました。日本人選手にはあまり見られないある動作に気付いた方も多いのではないでしょうか.

打った後も前脚が伸びたまま残っているキム・ジェファン選手
打った後も前脚が伸びたまま残っているキム・ジェファン選手 
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=-H1mOO7fENU

 驚いた動作とは,キム選手がボールを打った後,前足が地面から離れずずっと残っているということです.引用元の動画を見ていただければよくわかると思いますが,これはMLBで見られる打撃動作で,アジア人,特に日本人選手,韓国人選手ではめったにお目にかかれない動作です.NPBでは打った後,前脚が残らない選手がほとんどです.映像を見たときに,アジア人ではこのような動作ができるはずがないという先入観から,ハーフの選手なのかもしれないとそのときは思いました.

ケン・グリフィー・ジュニア選手を参考にしたスイング

 早速,キム選手の動画を検索したところ,サムネイルにケン・グリフィー・ジュニア選手が載っている動画が見つかりました.自動翻訳が非常にわかりづらいのですが,どうやらケン・グリフィー・ジュニア選手の打撃動作を真似てフォームを完成させたということのようです.

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=WbQlybtILJ8
引用したYouTube動画の画像
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=WbQlybtILJ8

 グリフィー選手は誰もが認める天才バッターですから,誰にも教わらずにこの打撃動作を行っていたと思われます.グリフィー選手は,前脚の膝を伸ばすことにより,下肢のエネルギーを上肢に伝達してバットのヘッドスピードを大きくしていました.このような打ち方をすると,体幹が後方に倒れるため,結果として前脚の膝が伸びて前脚のかかとを地面に置く体勢となる傾向があります.後方に倒れた体勢になるため,前脚が残る時間が長くなります.

 グリフィー選手を手本にしてフォームを完成させ,パフォーマンス向上を実現したキム選手は大した選手です.プレミア12では活躍できませんでしたが,ぜひMLBに挑戦してもらいものです.アジア人でもMLBの打撃動作が可能ということを証明したわけですから,日本人選手にも一考の価値があります.